王子だって、一体どうなるのか?物語

矢野 零時

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2 こいつが門番か 

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 ソランに案内をされて忠司は花音とともに大山を登り頂上についた。
 頂上には、すでに幾つもテントがはられ、親衛隊の四部隊全部がここに結集をしていた。まるで花火大会を見に来た人たちのように混み出していた。
 心配なので前にも俺は見にきているが、たしかに三角形の突起物が作られ、そこの根元に人が入れるほどの大きさの丸い穴が開いている。でも、一人で奥まで入ってみようなんては思わなかった。

「先にまいります」と言って、ロウソクを入れた袋を背負った明かり隊はダンジョンの中に入って行く。火をつけたロウソクを岩壁に立てて、通路を見えるようにするためだ。ロウソクを灯す明かり隊がつねに先を歩き、次にルソーや親衛隊員たちが行き、さらに忠司と花音が続いた。  
 ダンジョンを五十メートルもくだったと思った時、少し広くなっていた。
 その広場へも明かり隊の者たちが先に入っていた。すると、すぐに「わあ~」と叫び声を上げて逃げ戻ってきた。明かり隊を追ってくるのは細長い物。空に浮かぶ毛だったのだ。
 その毛は蠢き明かり隊の者たちの顔や体に刺さり、はりついていた。

 忠司や花音の方にも向かってくる。すぐに忠司は剣をぬいて、毛に向かって光を放った。
 心の中で、燃えろと念じた。俺の火力レベルが01となったことを思い出したからだ。どうやら、そう思うことが魔法火力の発動になるようだ。光にあたった毛は燃え出し下に落ちていった。

 誰も先に歩きたがらなくなったので、しかたなく忠司が先に立ってダンジョンの中を歩き出した。黒く浮かびあがった毛を見つけるとすぐに光を当てて燃やし続けた。 

 いまの明かり隊は忠司の後についてロウソクに火をつけるだけだ。一メートルごとに、岩壁にロウソクを立て、火を灯すように並べる。その火のついたロウソクの前に明かり隊の隊員をおき、火が消えないように明かり番をさせていた。そのために、次から次へとロウソクを入れた袋をかついだ明かり隊の者がやってきていた。

 忠司が進んでいくと黒く大きな岩のような者が石できた肘掛椅子にすわっていた。空を飛んできた毛は、この者の体から抜け出てきたものだった。

 明かりに、その者の姿は明らかになった。
 その姿は、牛だった。それも毛の多い野牛、バイソン。いや、ダンジョンに住んでいるので、ミノタウロスと言った方がいいのかもしれない。


 それは、ピカソが描いた絵を俺に思い出させた。
 ともかく、俺は、ここに牛がいるのではないかと思っていた。
 どうしてかって?
 それは、俺もフロイトの部屋に行き、本を貸してもらい、少し調べてみたからだ。そんなことをするなんて、勉強ぎらいの俺がダンジョンについては、真剣になっている証拠だろう。
 ダンジョンを、漢字では、土牢(つちろう)と書くらしい。牢は見てのとおり、牛が閉じ込められた形をしている。だから、ダンジョンには牛がいるはずだと俺は思っていたのだ。



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