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3 出陣だ!
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小屋のドアがあき、忠司と花音が飛び出した。
不意を食らった獣人たちは、驚いていた。二人は獣人を追った。獣人はまるで鬼ごっこの鬼に追われた子どものように逃げまわっている。
「陣をはれ」と、鼻先に角をはやした獣人が声をあげた。どうやら、サイ顔が、獣人たちの統率者らしかった。
すると獣人たちは二手にわかれ、槍を持つ者たちは、並んで槍ぶすまを作り、剣だけを持つ者は剣を手に並んでいた。槍ぶすまを作っていた者たちは、槍を忠司たちの方に向けて突き出してきたのだ。このままでは、二人とも体をボコボコに穴を開けられてしまう。忠司はサーベルの長さになった剣を握りなおすと槍ぶすまに突っ込んでいった。
忠司の剣はやはりただ物ではなかった。ともかくオリハルコンの剣だ。忠司が剣を振るたびに光を放ち、相手は忠司の剣を見ることができなくなる。それに、剣の重さを感じさせない。まるで絵筆をふっているような感じなのだ。
その上、忠司の動きは素早かった。速さが01の能力は忠司の考えていた以上に人を早く動かさしてくれる。またたくまに、槍ぶすまの槍を切り裂いて、それを持つ獣人たちを切り倒していた。
忠司が槍ぶすまと戦っている間、花音はヌンチャクで剣士たち相手にしてくれていた。
槍ぶすまの獣人を倒した忠司が花音の方を見ると、獣人剣士たちを相手に必死に戦っている。だが、花音が倒した相手は一人もいなかった。それは無理もないことだ。獣人たちは鎧を着ていて、ヌンチャクは木製だ。
これで、相手を倒せるわけがない!
「今度は俺が相手だ!」
忠司は大声をあげて、花音のところに走った。そして、剣を光らせながら、花音に襲いかかろうとした獣人たちを切り裂いていた。重い鉄剣を振り上げてからでなければ、切りつけることができない獣人の動きはおそい。羽毛のように軽やかに剣をあやつる忠司の敵でなかった。剣を使うすべての獣人たちが丸太のように倒れていった。
一人残されたサイ顔の獣人が忠司の真正面にたった。
「さすが、サルタン王子。噂に聞いていた光る剣を操るとは、見事なものだな。しかし、このまま、ここを通らせるわけにはいかん」
サイ顔の獣人は両手にそれぞれ剣を、そう二本の剣を持っていた。剣の一本を右手で上段に、もう一本の剣を左手で中段にかまえて見せた。
これじゃ、まるで宮本武蔵じゃん!と、忠司は、胸の中でつぶやいていた。
サイ顔の獣人は眼をつむった。光の力を受けないためだ。その代わり、耳が動き、鼻もひくついている。忠司は動くのをやめて、サイ顔をみつめた。
忠司は呼吸を整えると一気にサイ顔を襲った。
しかし、兵士たちをたばねていたサイ顔は只者でなかった。すばやい忠司の剣を右手の剣でうけ、左手の剣で忠司に切りつけてくる。それを避けるために、忠司は一歩さがらせるしかなかった。
サイ顔も忠司に負けないくらい素早いのだ。ならば、右手で受けとめられないようにもっと早く動き、一撃でサイ顔を倒すしかない。
それができるようにするには、剣がもう少し長ければいいのだが、そう20センチくらい長いといい。そう忠司が思ったとたん、オリハルコンの剣が20センチ伸びたのだ。
相手は眼をつむり、剣の長さを見てはいない。気配を感じるのに耳と鼻の力に自信を持っているからだ。
一気に忠司は走り、サイ顔に突きをはなった。忠司の剣は、サイ顔の右手の鉄剣が降りてくる前にサイ顔の額をつらぬいていた。剣を引き抜くと、サイ顔は音をたてて、地面に向かって倒れていった。
「忠司、やったね」と、花音は喜んでいる。
一人ばたばたと手足を動かしているのを見ると、踊っているつもりなのか?
それに今は忠司の名前を言うときに様をつけることなど、すっかりと忘れているようだった。
不意を食らった獣人たちは、驚いていた。二人は獣人を追った。獣人はまるで鬼ごっこの鬼に追われた子どものように逃げまわっている。
「陣をはれ」と、鼻先に角をはやした獣人が声をあげた。どうやら、サイ顔が、獣人たちの統率者らしかった。
すると獣人たちは二手にわかれ、槍を持つ者たちは、並んで槍ぶすまを作り、剣だけを持つ者は剣を手に並んでいた。槍ぶすまを作っていた者たちは、槍を忠司たちの方に向けて突き出してきたのだ。このままでは、二人とも体をボコボコに穴を開けられてしまう。忠司はサーベルの長さになった剣を握りなおすと槍ぶすまに突っ込んでいった。
忠司の剣はやはりただ物ではなかった。ともかくオリハルコンの剣だ。忠司が剣を振るたびに光を放ち、相手は忠司の剣を見ることができなくなる。それに、剣の重さを感じさせない。まるで絵筆をふっているような感じなのだ。
その上、忠司の動きは素早かった。速さが01の能力は忠司の考えていた以上に人を早く動かさしてくれる。またたくまに、槍ぶすまの槍を切り裂いて、それを持つ獣人たちを切り倒していた。
忠司が槍ぶすまと戦っている間、花音はヌンチャクで剣士たち相手にしてくれていた。
槍ぶすまの獣人を倒した忠司が花音の方を見ると、獣人剣士たちを相手に必死に戦っている。だが、花音が倒した相手は一人もいなかった。それは無理もないことだ。獣人たちは鎧を着ていて、ヌンチャクは木製だ。
これで、相手を倒せるわけがない!
「今度は俺が相手だ!」
忠司は大声をあげて、花音のところに走った。そして、剣を光らせながら、花音に襲いかかろうとした獣人たちを切り裂いていた。重い鉄剣を振り上げてからでなければ、切りつけることができない獣人の動きはおそい。羽毛のように軽やかに剣をあやつる忠司の敵でなかった。剣を使うすべての獣人たちが丸太のように倒れていった。
一人残されたサイ顔の獣人が忠司の真正面にたった。
「さすが、サルタン王子。噂に聞いていた光る剣を操るとは、見事なものだな。しかし、このまま、ここを通らせるわけにはいかん」
サイ顔の獣人は両手にそれぞれ剣を、そう二本の剣を持っていた。剣の一本を右手で上段に、もう一本の剣を左手で中段にかまえて見せた。
これじゃ、まるで宮本武蔵じゃん!と、忠司は、胸の中でつぶやいていた。
サイ顔の獣人は眼をつむった。光の力を受けないためだ。その代わり、耳が動き、鼻もひくついている。忠司は動くのをやめて、サイ顔をみつめた。
忠司は呼吸を整えると一気にサイ顔を襲った。
しかし、兵士たちをたばねていたサイ顔は只者でなかった。すばやい忠司の剣を右手の剣でうけ、左手の剣で忠司に切りつけてくる。それを避けるために、忠司は一歩さがらせるしかなかった。
サイ顔も忠司に負けないくらい素早いのだ。ならば、右手で受けとめられないようにもっと早く動き、一撃でサイ顔を倒すしかない。
それができるようにするには、剣がもう少し長ければいいのだが、そう20センチくらい長いといい。そう忠司が思ったとたん、オリハルコンの剣が20センチ伸びたのだ。
相手は眼をつむり、剣の長さを見てはいない。気配を感じるのに耳と鼻の力に自信を持っているからだ。
一気に忠司は走り、サイ顔に突きをはなった。忠司の剣は、サイ顔の右手の鉄剣が降りてくる前にサイ顔の額をつらぬいていた。剣を引き抜くと、サイ顔は音をたてて、地面に向かって倒れていった。
「忠司、やったね」と、花音は喜んでいる。
一人ばたばたと手足を動かしているのを見ると、踊っているつもりなのか?
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