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カモメが浜におりたつと、年老いたカモメは木から飛んできてくれました。年老いたカモメは、この浜そばから離れずに、ずっと待ってくれていたのです。
「何もみつけることができません。どうしたらいいのでしょう?」
と、カモメは、つかれた声をだしました。
「あきらめることはできないのかね?」
カモメは、首を左右にふりました。
「残っている方法は、一つしかないな」と、年老いたカモメは切なそう声をあげました。
「方法はあるんですか? あるんですね」
「ねがい星にねがいをかけることができれば、なんとかなるかもしれない」
「ほんとうですか?」
「生きる物、それぞれに、ねがい星がある。カモメのねがい星は、あれじゃ。だが、願い星をかない星にするには試練を受けねばならんぞ。それができないと、かない星にはならない」
年老いたカモメは、とがったくちばしで空にある一つの星をさしました。薄暗くなり始めた西の空に、すでに光りだした星たちにまじって、その星は大きくまぶしいくらいに輝いています。
「試練とは嵐の雲の上にでることじゃ。雲の上にでて、ねがいを、かけることができれば、かない星になる。ちょうど、東から嵐になる雲がきているようじゃ。試練を受ける機会は、近づいている。だが、それをして生きていることができるかどうか?」といって、年老いたカモメはするどい目で東の黒い雲をみつめました。
「いきます」
「つかれた羽で雲の上にでることは、むずかしいぞ。それでもいくのかね?」
「いきます」
もう一度いうと、カモメはふたたび東の空に向かって飛びだしていきました。
海の下に沈もうとする日に海は真っ赤にそまっていました。その赤い海の上を、カモメは東へ東へと飛び続けました。
やがて、ひろがりだした黒い雲に空はおおわれ、何もみえなくなっていました。カモメは、頭をあげて羽をきり黒い雲に飛び込んでいきました。黒い雲の中は風が吹き、大雨がふり、雷も鳴っています。カモメは羽を大きくはばたかせ、風と雨をきり、上へ上へと飛んでいきました。カモメは息をするたびに苦しくなり、このままでは気を失ってしまうとカモメが思ったときでした。
突然、明るくなりました。雲の上にでることができたのです。笑っているような半月のお月さまが、黒い雲の上を明るくてらしていました。
きらめく一番大きな星もはっきりとカモメは、みることができました。
「星よ。おねがいだ。船に乗っていた若者やみんなを北の港にかえしてください。そのためになら、ぼくはどうなってもいいんです」
ねがい星が大きくまたたきます。力つきたカモメは、黒い雲の中にクルクルと輪をえがいて落ちていきました。
「何もみつけることができません。どうしたらいいのでしょう?」
と、カモメは、つかれた声をだしました。
「あきらめることはできないのかね?」
カモメは、首を左右にふりました。
「残っている方法は、一つしかないな」と、年老いたカモメは切なそう声をあげました。
「方法はあるんですか? あるんですね」
「ねがい星にねがいをかけることができれば、なんとかなるかもしれない」
「ほんとうですか?」
「生きる物、それぞれに、ねがい星がある。カモメのねがい星は、あれじゃ。だが、願い星をかない星にするには試練を受けねばならんぞ。それができないと、かない星にはならない」
年老いたカモメは、とがったくちばしで空にある一つの星をさしました。薄暗くなり始めた西の空に、すでに光りだした星たちにまじって、その星は大きくまぶしいくらいに輝いています。
「試練とは嵐の雲の上にでることじゃ。雲の上にでて、ねがいを、かけることができれば、かない星になる。ちょうど、東から嵐になる雲がきているようじゃ。試練を受ける機会は、近づいている。だが、それをして生きていることができるかどうか?」といって、年老いたカモメはするどい目で東の黒い雲をみつめました。
「いきます」
「つかれた羽で雲の上にでることは、むずかしいぞ。それでもいくのかね?」
「いきます」
もう一度いうと、カモメはふたたび東の空に向かって飛びだしていきました。
海の下に沈もうとする日に海は真っ赤にそまっていました。その赤い海の上を、カモメは東へ東へと飛び続けました。
やがて、ひろがりだした黒い雲に空はおおわれ、何もみえなくなっていました。カモメは、頭をあげて羽をきり黒い雲に飛び込んでいきました。黒い雲の中は風が吹き、大雨がふり、雷も鳴っています。カモメは羽を大きくはばたかせ、風と雨をきり、上へ上へと飛んでいきました。カモメは息をするたびに苦しくなり、このままでは気を失ってしまうとカモメが思ったときでした。
突然、明るくなりました。雲の上にでることができたのです。笑っているような半月のお月さまが、黒い雲の上を明るくてらしていました。
きらめく一番大きな星もはっきりとカモメは、みることができました。
「星よ。おねがいだ。船に乗っていた若者やみんなを北の港にかえしてください。そのためになら、ぼくはどうなってもいいんです」
ねがい星が大きくまたたきます。力つきたカモメは、黒い雲の中にクルクルと輪をえがいて落ちていきました。
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