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6 対 決
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丸山は証拠を残している。それはリュックで背負った肉の中にめり込んだライフルの銃弾だ。だが、そんなことは、もう重要でなくなっていた。目撃者である俺が生きているからだ。それに、もうリュックの中にあった肉は大半が侵入者が食べてしまっていた。もちろん、俺を死なせないために使ったからだ。今は空袋を背負っているような感じだった。
俺は携帯で暴対課に丸山が戻っているかどうかを確かめた。
「ほう、もう戻っていますか? どこか、でかける予定はないですよね」
丸山がいることを確認できたが、それは俺が生きていることを知らせることにもなった。俺は署に向かって歩き出し、二十分もすると七階建ての古くなった灰色のビル、大友署が見えてきた。
署に入るとすぐに四階にまで、エレベーターにのらずに、階段を駆け上がっていった。そこに暴対課があるからだ。
暴対課のドアを俺は音を立てて開けた。
いつもなら、十名近くの課員がいるのに、丸山以外には一人しかいなかった。いたのは暴対課主任の川村次郎だった。俺がここに来たことを、知られたくない奴らを全員追っ払ったことは明らかだ。
丸山は、自分の席から立ってきた。
「おや、盗犯の洋さんじゃないか。何か用かい?」
「親父ギャグを飛ばしている余裕はないはずだが?」
「そうだね。二回も撃たれたはずなのに生きている。あんた、化け物かい?」
「どうして、俺を殺そうとするんだ!」
「決まっているじゃないか。前に押収したハジキを谷口組に返しているところを見られてしまったからな。それも携帯で写真にとれてしまってはな」
「そうかい。そんなことをケルンでやっていたのか。まあ、朝のうちに手筈を付けて置かなければ、手入れをしても何も見つからないからな」
あえて、丸山に言うことをしなかったが、俺がしていたことは、携帯で写真をとっていたのではない。前にとった写真を消していたのだ。
「今度は間違いなく殺してやるよ」
そう言って、丸山は胸元のポケットから拳銃をとりだしていた。
「それは警察拳銃だろう。それで殺せば、警察官が人を殺したことになってしまうぞ!」
「あんたが、心配することはないよ」
「ほう、どうしてかな?」
「拳銃には、暴発ということが起こりうるからさ」
「暴発した弾が、俺に当たって死んだという事にするのかい?」
「分かりがいいな」
丸山は銃を俺の頭に狙いを定めてきた。侵入者がいても、頭を狙われてはたまらない。俺がそう思っただけではなく、侵入者が声をあげてきた。
(脳は守れよ。脳は復元をすることができない)
危険に陥ったせいか、侵入者は俺に新たな能力をつけてよこした。それは後頭部のまん中に眼ができたことだ。そのおかげで、真後ろが見えるようになった。そう、後ろにいる者の顔を見ることができたのだ。
真後ろに渡辺課長がいた。それも手には拳銃を持っていた。どうやら、それは俺が所持している拳銃に見える。保管場所から、持ち出してきたのだろう。
後ろから、俺は俺の銃で撃たれる。そして、俺の銃が暴発して死んだことにでも、するつもりなのだろう。それとも、もっといやらしい作戦を考えているのだろうか?悩みがあって、俺が自殺をしたとすることもできる。俺は額に汗を浮かべていた。
俺は飛んだ。
それも顔を前に向けたまま、真後ろに飛んだのだ。それは渡辺の持っている拳銃を彼の手から落とすためだ。俺は右手で渡辺の手をたたき、拳銃を弾き飛ばした。
丸山は慌てた。そして、俺に向かって銃を撃ってきた。頭を間違いなく狙っていた。そうされると思っていたから、俺は顔をすばやく左に曲げた。その結果、丸山にとって想定外の出来事が起こった。銃弾は俺の肩の上を傷つけることはできたが、俺の後にいた渡辺の胸をつらぬいてしまったのだ。
渡辺は、丸太にでも化したように、音を立てて倒れて行った。
「渡辺課長をやっちまったよ。どうするつもりなのさ?」
「案Bでいく。拳銃が暴発をしてしまったことにするのさ」
そう言って、丸山は笑みを見せた。だが、俺には顔を歪めているとしか思えなかった。この場には俺以外に三人いる。渡辺はもし死ぬことがあっても、死ぬまで暴発だと言い張るに決まっている。他の二人は当然のように口裏を合わす。つまり、俺が何を言っても、暴発で話がまとまってしまうに違いなかった。
俺は携帯で暴対課に丸山が戻っているかどうかを確かめた。
「ほう、もう戻っていますか? どこか、でかける予定はないですよね」
丸山がいることを確認できたが、それは俺が生きていることを知らせることにもなった。俺は署に向かって歩き出し、二十分もすると七階建ての古くなった灰色のビル、大友署が見えてきた。
署に入るとすぐに四階にまで、エレベーターにのらずに、階段を駆け上がっていった。そこに暴対課があるからだ。
暴対課のドアを俺は音を立てて開けた。
いつもなら、十名近くの課員がいるのに、丸山以外には一人しかいなかった。いたのは暴対課主任の川村次郎だった。俺がここに来たことを、知られたくない奴らを全員追っ払ったことは明らかだ。
丸山は、自分の席から立ってきた。
「おや、盗犯の洋さんじゃないか。何か用かい?」
「親父ギャグを飛ばしている余裕はないはずだが?」
「そうだね。二回も撃たれたはずなのに生きている。あんた、化け物かい?」
「どうして、俺を殺そうとするんだ!」
「決まっているじゃないか。前に押収したハジキを谷口組に返しているところを見られてしまったからな。それも携帯で写真にとれてしまってはな」
「そうかい。そんなことをケルンでやっていたのか。まあ、朝のうちに手筈を付けて置かなければ、手入れをしても何も見つからないからな」
あえて、丸山に言うことをしなかったが、俺がしていたことは、携帯で写真をとっていたのではない。前にとった写真を消していたのだ。
「今度は間違いなく殺してやるよ」
そう言って、丸山は胸元のポケットから拳銃をとりだしていた。
「それは警察拳銃だろう。それで殺せば、警察官が人を殺したことになってしまうぞ!」
「あんたが、心配することはないよ」
「ほう、どうしてかな?」
「拳銃には、暴発ということが起こりうるからさ」
「暴発した弾が、俺に当たって死んだという事にするのかい?」
「分かりがいいな」
丸山は銃を俺の頭に狙いを定めてきた。侵入者がいても、頭を狙われてはたまらない。俺がそう思っただけではなく、侵入者が声をあげてきた。
(脳は守れよ。脳は復元をすることができない)
危険に陥ったせいか、侵入者は俺に新たな能力をつけてよこした。それは後頭部のまん中に眼ができたことだ。そのおかげで、真後ろが見えるようになった。そう、後ろにいる者の顔を見ることができたのだ。
真後ろに渡辺課長がいた。それも手には拳銃を持っていた。どうやら、それは俺が所持している拳銃に見える。保管場所から、持ち出してきたのだろう。
後ろから、俺は俺の銃で撃たれる。そして、俺の銃が暴発して死んだことにでも、するつもりなのだろう。それとも、もっといやらしい作戦を考えているのだろうか?悩みがあって、俺が自殺をしたとすることもできる。俺は額に汗を浮かべていた。
俺は飛んだ。
それも顔を前に向けたまま、真後ろに飛んだのだ。それは渡辺の持っている拳銃を彼の手から落とすためだ。俺は右手で渡辺の手をたたき、拳銃を弾き飛ばした。
丸山は慌てた。そして、俺に向かって銃を撃ってきた。頭を間違いなく狙っていた。そうされると思っていたから、俺は顔をすばやく左に曲げた。その結果、丸山にとって想定外の出来事が起こった。銃弾は俺の肩の上を傷つけることはできたが、俺の後にいた渡辺の胸をつらぬいてしまったのだ。
渡辺は、丸太にでも化したように、音を立てて倒れて行った。
「渡辺課長をやっちまったよ。どうするつもりなのさ?」
「案Bでいく。拳銃が暴発をしてしまったことにするのさ」
そう言って、丸山は笑みを見せた。だが、俺には顔を歪めているとしか思えなかった。この場には俺以外に三人いる。渡辺はもし死ぬことがあっても、死ぬまで暴発だと言い張るに決まっている。他の二人は当然のように口裏を合わす。つまり、俺が何を言っても、暴発で話がまとまってしまうに違いなかった。
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