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8 日曜日
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やくそくの日曜日です。
待ち合わせのバスセンターに行くと、アヤちゃんは手をふってむかえてくれました。アヤちゃんは、むぎわら帽子をかぶり、リュックをせおい、水とうも持ってきていました。でも、山のぼりをする話をしていなかったカナは、何も持ってこれません。
「だいじょうぶ。カナちゃんのおにぎりも持ってきているし、水とうは大きくて二人分の水が入っているから」
「ありがとう。アヤちゃん」
アヤちゃんとカナは、バス停にならんでいる人たちの後につきました。やがて、みはらし台へ行くバスがきました。二人はバスにのり、のぼり口でバスをおりました。学校の遠足の時のように、のぼり口からみはらし台へ行く山道をのぼりだしました。
二人があせをかきだしたころ、アヤちゃんがとまりました。
「このあたりだったよね。カナちゃんにミラクルを返したのは」
うなずきながら、カナは坂道の上を指さしました。そのあたりから坂道は急になりだし、カナがころんだ場所でした。
「じゃ、ミラクルを落としたのは、この草やぶだね」
そう言ったアヤちゃんは、坂道からはずれて草やぶの中におりだしたのです。
「アヤちゃん、だいじょうぶ?」
「だいじょうぶよ」
アヤちゃんは、ならんでいる木に手をかけて、背の高い草をおしわけながら、ミラクルをさがしています。カナもアヤちゃんのまねをして、ミラクルをさがしてみました。でも、二人で、いくらさがしても、がけ下に落ちてしまったミラクルを見つけることはできません。
「おかしいわね」と言いながら、アヤちゃんは、むぎわら帽子をぬいで、それで顔をあおいでいます。
「ミラクル、ミラクル。どこなの?」
カナは、木の間の草やぶをかきわけながら、今度は大声をあげました。そのカナの声は、がけ下にいるミラクルに聞こえました。カナの声に答えて、ミラクルは「ここだよ。カナちゃん!」、「ここだよ。カナちゃん!」とさけびました。でも、カナには、おもちゃであるミラクルの声は聞こえなかったのです。カナの声はだんだんとはなれて小さくなり、やがてミラクルにも聞こえなくなりました。
山の間から見える西の空が赤くそまりだしています。
「カナちゃん。もう帰ろう。あまりおそいと、夕ごはんまでに家に帰られなくなってしまうよ」
カナは力なくうなずき、二人はトボトボと山道をおりて行きました。
待ち合わせのバスセンターに行くと、アヤちゃんは手をふってむかえてくれました。アヤちゃんは、むぎわら帽子をかぶり、リュックをせおい、水とうも持ってきていました。でも、山のぼりをする話をしていなかったカナは、何も持ってこれません。
「だいじょうぶ。カナちゃんのおにぎりも持ってきているし、水とうは大きくて二人分の水が入っているから」
「ありがとう。アヤちゃん」
アヤちゃんとカナは、バス停にならんでいる人たちの後につきました。やがて、みはらし台へ行くバスがきました。二人はバスにのり、のぼり口でバスをおりました。学校の遠足の時のように、のぼり口からみはらし台へ行く山道をのぼりだしました。
二人があせをかきだしたころ、アヤちゃんがとまりました。
「このあたりだったよね。カナちゃんにミラクルを返したのは」
うなずきながら、カナは坂道の上を指さしました。そのあたりから坂道は急になりだし、カナがころんだ場所でした。
「じゃ、ミラクルを落としたのは、この草やぶだね」
そう言ったアヤちゃんは、坂道からはずれて草やぶの中におりだしたのです。
「アヤちゃん、だいじょうぶ?」
「だいじょうぶよ」
アヤちゃんは、ならんでいる木に手をかけて、背の高い草をおしわけながら、ミラクルをさがしています。カナもアヤちゃんのまねをして、ミラクルをさがしてみました。でも、二人で、いくらさがしても、がけ下に落ちてしまったミラクルを見つけることはできません。
「おかしいわね」と言いながら、アヤちゃんは、むぎわら帽子をぬいで、それで顔をあおいでいます。
「ミラクル、ミラクル。どこなの?」
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山の間から見える西の空が赤くそまりだしています。
「カナちゃん。もう帰ろう。あまりおそいと、夕ごはんまでに家に帰られなくなってしまうよ」
カナは力なくうなずき、二人はトボトボと山道をおりて行きました。
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