12 / 27
12ソンド兵と遭遇
しおりを挟む
私が馬に乗ってイバラの森を探すことを心配したリカードは、警護をする者として、エフセンの他にルイズもつけてくれた。
ルイズは私たちと一緒に外に出たことが嬉しかったのか、私にいろいろと話をしてくれた。
「ナターシャ様、見えている山並みは、五剣山と言われております」
「どうして、五剣山というのですか?」
「ごらんなさい。高い所が五つある。あの高い所が、すべて山の頂上になっている。西の方から申しますと、金山、王冠、指先山、鶴山、竜山と呼ばれていますよ」
私は馬の背に揺られながら、うなずく。
「この山のふもとにはポーマル国とソンド国がある。ポーマル国とは親交を結んできております。しかし、ソンド国は魔人たちを雇い入れ、カルゾ国の領地を狙っているのですよ。理由はカルド国が金山をもって金の発掘を行っているからです。それが欲しいのでしょうな。だから、機会があるごとに魔人を使って攻めてくる。そうなると、自国を守るために相手をしないわけにはいかない。私どもが切り捨てた魔人の遺体から生まれた物の怪たちが、この辺りにいるのですよ」
私は、ルイズから説明を聞きながらも、イバラの森を見つけようと辺りを見ていた。
「この辺りだったかしら、カルゾ国に来る途中で物の怪に襲われたのは?」
「そうですな。物の怪が出るようになってから、物の怪の森と呼ばれ出している」
私が探すポイントはまず森があるかどうかであった。
占いを信じて、言われた通りイバラの森を探しているのだ。
森の中に入るとイバラばかりが生えている所をみつけなければならない。そのために、まず灌木が集まっている所を見つけると、すぐにそこに行って覗いてみた。
「敵がいるかどうかを確かめもしないで、すぐに行くのはおやめください」と、エフセンに言われてしまった。
確かに藪をのぞいていて、蛇に飛びかかられたこともあった。すぐにエフセンが剣を抜いて、蛇を切り捨ててくれた。エフセンが私を助けてくれたことは、感謝している。だが、危険なことがあったからと言って、イバラの森を探すのをやめる気はない。
この日も、物の怪の森に向かって私は馬を走らせていた。私について、エフセンやルイズも馬を走らせていた。
やはり、物の怪が現れた。そうなのだ。私がカルゾ国に来た時に、草が象のように変化した物の怪に会った場所にここは近い。私のことを覚えていて、やってきたのだ。それも切られた鼻のような部分と転がった胴体の部分が別れたままで襲ってきた。
エフセンは鼻の部分を相手にした。小技を何度も出して、剣で切り刻み動かなくしていた。ルイズは背中に背負っていた長剣をおろし、それを両手で握ると大きく振って、胴体を四つ分けていた。
これ以上、相手にしてはまずいと思ったのか、物の怪たちはナメクジのようにはって森の中に逃げていった。
「ともかく、この場から離れましょう」とルイズが言ってくれた。そこで、私たちは馬に飛び乗ると、馬を全力で走らせ出した。
物の怪の森から、遠く離れたと思う場所に来た時、剣で戦う声が聞こえてきた。
「ソンド兵ですよ。相手をしているのは、ポーマル国だ」
二つの兵たちは互角の戦いをしていた。だが、少しずつソンド兵の方が有利になっているようだった。それはゾンド兵の中に魔人がいるからだ。
「ポーマル国は親交国なんでしょう。助けてあげなくては」と、私が二人を見た。
「むろん、当然のことでござる」
「いざ、参る」
エフセンとルイズは馬に乗ったままで、剣を抜いて決戦の場に飛び込んでいった。
それまでボーマル国の兵士たちは、魔人の呪いをかけられ続けていたのだ。その呪いは、動きを遅くさせられ、体力を激しく消耗させられるものだった。だが、カルゾの騎士たちには、そんな呪いは効かない。なぜならば、カルゾの騎士たちの剣と首にさげたネックレスにクリスタルがはめ込まれていたからだ。クリスタルは弱い魔力をはじいてしまうのだ。
それに、二人の剣技は人並みを超えている。二人が参戦をしてくれたおかげで、ポーマル国の兵士たちが優位に立ちだし、やがてソンド国の兵士たちは逃げ出していった。
ソンド兵がいなくなるとポーマル国の兵士の一人が近づいてきた。その男が、兵士たちの代表だった。
「有難うございます。あなた方のおかげで、戦に勝つことができました」
「親交を結んでいれば当然のことですよ」とルイズが言っていた。
「やはり、カルゾ国の方でしたか」
「さよう、こちらがカルゾ国の王妃、ナターシャ様ですぞ」
「それでは、王妃様、みずからが私どもを助けるために参戦をしてくれたのですね」
そう言った兵士は目を涙でうるませていた。
ルイズは私たちと一緒に外に出たことが嬉しかったのか、私にいろいろと話をしてくれた。
「ナターシャ様、見えている山並みは、五剣山と言われております」
「どうして、五剣山というのですか?」
「ごらんなさい。高い所が五つある。あの高い所が、すべて山の頂上になっている。西の方から申しますと、金山、王冠、指先山、鶴山、竜山と呼ばれていますよ」
私は馬の背に揺られながら、うなずく。
「この山のふもとにはポーマル国とソンド国がある。ポーマル国とは親交を結んできております。しかし、ソンド国は魔人たちを雇い入れ、カルゾ国の領地を狙っているのですよ。理由はカルド国が金山をもって金の発掘を行っているからです。それが欲しいのでしょうな。だから、機会があるごとに魔人を使って攻めてくる。そうなると、自国を守るために相手をしないわけにはいかない。私どもが切り捨てた魔人の遺体から生まれた物の怪たちが、この辺りにいるのですよ」
私は、ルイズから説明を聞きながらも、イバラの森を見つけようと辺りを見ていた。
「この辺りだったかしら、カルゾ国に来る途中で物の怪に襲われたのは?」
「そうですな。物の怪が出るようになってから、物の怪の森と呼ばれ出している」
私が探すポイントはまず森があるかどうかであった。
占いを信じて、言われた通りイバラの森を探しているのだ。
森の中に入るとイバラばかりが生えている所をみつけなければならない。そのために、まず灌木が集まっている所を見つけると、すぐにそこに行って覗いてみた。
「敵がいるかどうかを確かめもしないで、すぐに行くのはおやめください」と、エフセンに言われてしまった。
確かに藪をのぞいていて、蛇に飛びかかられたこともあった。すぐにエフセンが剣を抜いて、蛇を切り捨ててくれた。エフセンが私を助けてくれたことは、感謝している。だが、危険なことがあったからと言って、イバラの森を探すのをやめる気はない。
この日も、物の怪の森に向かって私は馬を走らせていた。私について、エフセンやルイズも馬を走らせていた。
やはり、物の怪が現れた。そうなのだ。私がカルゾ国に来た時に、草が象のように変化した物の怪に会った場所にここは近い。私のことを覚えていて、やってきたのだ。それも切られた鼻のような部分と転がった胴体の部分が別れたままで襲ってきた。
エフセンは鼻の部分を相手にした。小技を何度も出して、剣で切り刻み動かなくしていた。ルイズは背中に背負っていた長剣をおろし、それを両手で握ると大きく振って、胴体を四つ分けていた。
これ以上、相手にしてはまずいと思ったのか、物の怪たちはナメクジのようにはって森の中に逃げていった。
「ともかく、この場から離れましょう」とルイズが言ってくれた。そこで、私たちは馬に飛び乗ると、馬を全力で走らせ出した。
物の怪の森から、遠く離れたと思う場所に来た時、剣で戦う声が聞こえてきた。
「ソンド兵ですよ。相手をしているのは、ポーマル国だ」
二つの兵たちは互角の戦いをしていた。だが、少しずつソンド兵の方が有利になっているようだった。それはゾンド兵の中に魔人がいるからだ。
「ポーマル国は親交国なんでしょう。助けてあげなくては」と、私が二人を見た。
「むろん、当然のことでござる」
「いざ、参る」
エフセンとルイズは馬に乗ったままで、剣を抜いて決戦の場に飛び込んでいった。
それまでボーマル国の兵士たちは、魔人の呪いをかけられ続けていたのだ。その呪いは、動きを遅くさせられ、体力を激しく消耗させられるものだった。だが、カルゾの騎士たちには、そんな呪いは効かない。なぜならば、カルゾの騎士たちの剣と首にさげたネックレスにクリスタルがはめ込まれていたからだ。クリスタルは弱い魔力をはじいてしまうのだ。
それに、二人の剣技は人並みを超えている。二人が参戦をしてくれたおかげで、ポーマル国の兵士たちが優位に立ちだし、やがてソンド国の兵士たちは逃げ出していった。
ソンド兵がいなくなるとポーマル国の兵士の一人が近づいてきた。その男が、兵士たちの代表だった。
「有難うございます。あなた方のおかげで、戦に勝つことができました」
「親交を結んでいれば当然のことですよ」とルイズが言っていた。
「やはり、カルゾ国の方でしたか」
「さよう、こちらがカルゾ国の王妃、ナターシャ様ですぞ」
「それでは、王妃様、みずからが私どもを助けるために参戦をしてくれたのですね」
そう言った兵士は目を涙でうるませていた。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから
gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる