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6変貌
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玲香が学校にこなくなって、一週間が経っていた。
あれほど親しげに玲香と話し込んでいた女の同級生たちも、もう玲香がいないことを話題にすることもない。いや、いなかったことが当然のように、笑い声をたててさえいる。昭も気落ちしたように玲香のことを口にしない。真治の方からも昭の前で玲香の話ができなくなっている。
だが、真治の中で玲香への思いが強くなっていた。
放課後、真治は入江口総合病院に行ってみることにした。
玲香の母、秋江はまだ入院している。毎日一度は、母の顔を見るために、病院に見舞いに行っているはずだ。この時間では、玲香が来ていないかもしれない。だが、運が良ければ、顔を合わせることができるはずだ。そう思うと、学校近くの花屋により、「お見舞いにいい花はなんですか?」と店員に聞き、店員にすすめられたトルコキョウを買った。
カバンを持たない左手にそれをさげて、真治は大通りにでた。停留場にたたずみ、病院行のバスにのった。十五分ほどして、真治は白い建物を前にしていた。
すぐにエレベーターにのって五階でおり病室に行った。玲香の母、秋江は静かに寝ていた。声をかければ、すぐにでも起きてきそうなきがした。だが、前と同じに人工呼吸器と点滴用のチュウーブ管がいくつもたれさがっている。
真治は大きな深呼吸を一つした後、ナースステションに行った。そこで看護師から花を入れるための花瓶を借りた。花瓶と花を持って給湯室に行き、花をいけると、病室に持っていき、サイドテーブルの上に飾った。
玲香と会うことはできなかったが、玲香が母を見舞いに来て、花が飾られているのを見たら、真治が来てくれたと思ってもらえるはずだ。そう思うと真治はかすかに頬に笑みが浮かぶのを押さえられなかった。
病室を出た帰りに、ナースステションによった。そして、最近玲香が来ているかどうか看護師に聞いてみた。
「最近、お見えになっていないようですね」
「そうですか」
先ほどまで、胸の中に感じていた希望が壊れていくのを覚えた。
真治は看護師に頭を下げて、五階のエレベーター昇降口に向かった。 上の階からおりてきたエレベーターにのり込むと一階でおりた。
やがて、真治は病院の外に出た。
だんだんと夕食の時間が近づいて来る。それまでに、家に帰らなければ、母が心配をし出してしまう。それはまずい。
真治はできるだけ急いで家に帰った。
一時間ほど遅い帰宅に真治の母は不満げに真治をみつめてきた。でも、真治から何か言うことはない。言い訳をしたくてもうまい理由がみつからないからだ。そのうちに母がにしていた夕食の支度に専念をし出していった。やがて、父も帰ってきた。よかったことは、父も遅い帰宅をしてくれたことだ。やがて食卓にはポテトサラダが添えられたハンバーグが出された。ハンバーグは真治の大好物だ。母の気遣いが感じられ、それに応えるように真治はハンバーグをぱくつき、ご飯のおかわりもした。でも、家族みんなでテレビを見る気にはなれず、すぐに自分の部屋に戻った。
机を前にすわると、真治は数学の問題集を出して問題を解いてみた。だが、集中ができていない。それは、玲香のことが気にかかるからだ。
カーテンの隙間から、月が見えた。満月の丸い月だ。夜を照らす明るさに、玲香がいるかもしれない所を思い出した。
それはコンビニのピースランド。
それに気が付くと、もう机を前にしていたくない。
前にしたのと同じことをすればいいのだ。
真治は立ち上がり部屋を出た。下にいる父母に気づかれないように音をたてずに階段をおりた。裏口の玄関で真治はズック靴に足をいれた。ここにズック靴があるのは、前の経験から、ここに置いていたからだ。
音をたてないように裏口の戸を開けた。
月の明かりに導かれるように真治は歩き、大島公園を囲んで弧を描いている道に出た。その道を歩いていると、やがて辺りに光を広げている建物が見えてきた。
ピースランドだ。
駐車場には外灯が一本立っていて、小さな蛾が集まってきている。外灯の明かりで影をつくりながら真治が店に近づくと自動ドアが開いた。
「いらつしゃい」と、篠原が声をかけてきた。
「ひさしぶりだったわね」
「こんばんは」と、真治は頭をさげた。
「チンピラたちが来た時には世話をかけたね」
真治は笑って見せた。
「玲香ちゃんは強かったね。でも、そんな子には全然見えなかったけどね」
真治はうなずきながら、店の中を見廻した。棚の陰になっている所にも目をやった。だが、玲香はいなかった。
「玲香さん、いないけど、どうかしたんですか?」
「おや、真治くんは知らなかったの。玲香ちゃんは、ここをやめてしまったよ」
「ここをやめた!」
「そうよ。だからチラシをはって玲香ちゃんの後をしてくれる人を探していたのよ。ほら、その子よ。玲香ちゃんのかわり、真由美ちゃん」
篠原に指された女性が真治に向かって軽く頭をさげた。
「なんでも、メインのバイト。訓練所で夜間はしっかり寝て休養をとるように要請が出たんですって。でも、それをすれば、ここよりはいいお手当が出るそうよ」
玲香の顔を見るためにだけ、ここにやってきた。だから、買いたい物などない。しかたなく適当に棚から数枚の板チョコを手にするとカウンターに向かった。
「いいわよ。私がやるから」と真由美に言って、篠原がカウンター内に入る。真治が置いた品物を見ながらレジスターに入力を始める。
「買い物袋持ってきている?」
「いや」
「じゃ、ビニール袋を一枚ね」
真治が支払いを終えると、篠原から買った物を入れたビニール袋を手渡されて、店を出た。
玲香に会える場所を考えると、もう一か所残っていることに気がついた。
藤井ビルだ。
そのことに気が付くと、真治はビニール袋を振りながら藤井ビルを目指すことにした。大島公園の周りを来た 時とは反対方向に歩くと、空の丸い大きな月は真治を追って来ているようだった。
やがて、西黒天商店街が見えてきた。
藤井ビルに近づき、真治は玲香の借りている部屋の玄関ドアの前に立った。なぜか、ドアは少し空いていて隙間ができていた。
「玲香さん、いる?」
真治が声をかけるが、答える者はいない。真治は戸を開けて中に入った。
カーテンを引かれていない窓からは月の光が入ってきていた。真治は月の明かりを頼りに部屋の中を見廻した。玲香の姿はない。寝室にも行ってみるが、ベッドに寝ている者はいない。もとの部屋に戻った真治はソファの前に毛布が落ちているのに気づいた。ソファの上に手をおくと、温かさが残っている。誰かがここに寝ていた証だった。そして、それは玲香しか考えられない。
玲香は、どこにいったのだろう?
不安にかられながら、真治はゆっくりと反転をして歩き出した。開けられていた玄関ドアから外へ出る。失意の中で自分の家に戻るしかないと思い真治は道路を歩いた。
すると、白いものが道路を動いていた。それも微かに上がったり下がったりしている。真治は目をこらした。動いているものは、横たわった人。それも玲香だった。
服も下着も何も身に着けてはいない。顔を上に向けているので、玲香の鼻が思っていたよりも高いことがわかった。まだ固い乳房が並んで上を向き、長い脚はしなやかに伸びていた。
玲香の体が寝たままで動いているのだ。そんな体が動ける理由を知って、真治は息をのんだ。
玲香の背中、腰や下肢の下に無数の突起物が出ていて、それが足のように蠢いていたからだ。玲香がこちら向かってやってくる。真治は慌てて、店と店の間に体を押し込んだ。
目の前を玲香が通っていく。もともと白い肌が、月の光をうけて、さらに白く輝いて見える。真治は息を詰め続けた。
真治の視界から、玲香は消え、やがて、玲香の借りている部屋の玄関ドアが開いて閉まる音がした。
玲香が自分の部屋に入ったことは間違いがない。だが、しばらくの間、真治は動けなかった。動き出すことができたのは、雲が出始めて、少し空に暗くなり出してからだった。
ゆっくりと自分の家に向かって歩く真治は、罪を犯して街を引き廻されている罪人のようだった。
家に戻った真治は夜の眠りにつくと夢を見た。
夢の中では、青い空に入道雲が浮かんでいた。
母がいた。笑っている。だが、母は時々自分の母ではなくなる。玲香の母、秋江に変わるのだ。
夢の中での真治は子供に戻っていた。野球帽をかぶっていたので、小学三年生になっているのだろう。
波音が聞こえてきた。真治は音の方に顔を向けた。そこに青い海が広がっている。真治はすぐに海に向かって走った。足元によってくる波を感じたかったからだ。
「真治くん、いたわよ」
声のした方を見た。玲香が岩場の上に立っている。
玲香は捕まえたカニを手に持っていて、それを顔の上にかざしていた。カニは塩まねきなのだろう。カニは大きい方のはさみを振り上げて玲香の指をはさんだ。
「痛い、痛いわ」と、玲香は叫び声をあげた。
「ダメだよ。ダメだよ。早くすてないと」と言って、真治は玲香のもとに駆けよろうとした。
それが合図だったように、岩場に隠れていたカニたちが現れ、足元から玲香の体を登り出していった。
真治が玲香の元に駆けつけた時には、すっかり玲香はカニに覆われていた。真治は泣きながら、手に持っていたスコップでカニを落とし始めた。
カニをすっかり落としたのだが、玲香は白い石膏像に変わっていた。呆然と見つめる真治の前で、石膏像は顔を上に向けたまま砂地に向かって倒れて行った。
倒れた石膏像の顔が玲香に変わった。真治がそばに寄ろうとした。すると、石膏像が突然動き出したのだ。体の下に生えた柔突起がものすごい速さで蠢いている。
「待って」と、叫びながら、必死に玲香を追った。だが、追いつかない。いつの間にか、点になり、消えてしまっていた。
「どうして、逃げてしまうんだ」
真治は泣き出していた。
そして、自分の泣き声で真治は目覚め、体中から汗が吹きだしていることを知った
あれほど親しげに玲香と話し込んでいた女の同級生たちも、もう玲香がいないことを話題にすることもない。いや、いなかったことが当然のように、笑い声をたててさえいる。昭も気落ちしたように玲香のことを口にしない。真治の方からも昭の前で玲香の話ができなくなっている。
だが、真治の中で玲香への思いが強くなっていた。
放課後、真治は入江口総合病院に行ってみることにした。
玲香の母、秋江はまだ入院している。毎日一度は、母の顔を見るために、病院に見舞いに行っているはずだ。この時間では、玲香が来ていないかもしれない。だが、運が良ければ、顔を合わせることができるはずだ。そう思うと、学校近くの花屋により、「お見舞いにいい花はなんですか?」と店員に聞き、店員にすすめられたトルコキョウを買った。
カバンを持たない左手にそれをさげて、真治は大通りにでた。停留場にたたずみ、病院行のバスにのった。十五分ほどして、真治は白い建物を前にしていた。
すぐにエレベーターにのって五階でおり病室に行った。玲香の母、秋江は静かに寝ていた。声をかければ、すぐにでも起きてきそうなきがした。だが、前と同じに人工呼吸器と点滴用のチュウーブ管がいくつもたれさがっている。
真治は大きな深呼吸を一つした後、ナースステションに行った。そこで看護師から花を入れるための花瓶を借りた。花瓶と花を持って給湯室に行き、花をいけると、病室に持っていき、サイドテーブルの上に飾った。
玲香と会うことはできなかったが、玲香が母を見舞いに来て、花が飾られているのを見たら、真治が来てくれたと思ってもらえるはずだ。そう思うと真治はかすかに頬に笑みが浮かぶのを押さえられなかった。
病室を出た帰りに、ナースステションによった。そして、最近玲香が来ているかどうか看護師に聞いてみた。
「最近、お見えになっていないようですね」
「そうですか」
先ほどまで、胸の中に感じていた希望が壊れていくのを覚えた。
真治は看護師に頭を下げて、五階のエレベーター昇降口に向かった。 上の階からおりてきたエレベーターにのり込むと一階でおりた。
やがて、真治は病院の外に出た。
だんだんと夕食の時間が近づいて来る。それまでに、家に帰らなければ、母が心配をし出してしまう。それはまずい。
真治はできるだけ急いで家に帰った。
一時間ほど遅い帰宅に真治の母は不満げに真治をみつめてきた。でも、真治から何か言うことはない。言い訳をしたくてもうまい理由がみつからないからだ。そのうちに母がにしていた夕食の支度に専念をし出していった。やがて、父も帰ってきた。よかったことは、父も遅い帰宅をしてくれたことだ。やがて食卓にはポテトサラダが添えられたハンバーグが出された。ハンバーグは真治の大好物だ。母の気遣いが感じられ、それに応えるように真治はハンバーグをぱくつき、ご飯のおかわりもした。でも、家族みんなでテレビを見る気にはなれず、すぐに自分の部屋に戻った。
机を前にすわると、真治は数学の問題集を出して問題を解いてみた。だが、集中ができていない。それは、玲香のことが気にかかるからだ。
カーテンの隙間から、月が見えた。満月の丸い月だ。夜を照らす明るさに、玲香がいるかもしれない所を思い出した。
それはコンビニのピースランド。
それに気が付くと、もう机を前にしていたくない。
前にしたのと同じことをすればいいのだ。
真治は立ち上がり部屋を出た。下にいる父母に気づかれないように音をたてずに階段をおりた。裏口の玄関で真治はズック靴に足をいれた。ここにズック靴があるのは、前の経験から、ここに置いていたからだ。
音をたてないように裏口の戸を開けた。
月の明かりに導かれるように真治は歩き、大島公園を囲んで弧を描いている道に出た。その道を歩いていると、やがて辺りに光を広げている建物が見えてきた。
ピースランドだ。
駐車場には外灯が一本立っていて、小さな蛾が集まってきている。外灯の明かりで影をつくりながら真治が店に近づくと自動ドアが開いた。
「いらつしゃい」と、篠原が声をかけてきた。
「ひさしぶりだったわね」
「こんばんは」と、真治は頭をさげた。
「チンピラたちが来た時には世話をかけたね」
真治は笑って見せた。
「玲香ちゃんは強かったね。でも、そんな子には全然見えなかったけどね」
真治はうなずきながら、店の中を見廻した。棚の陰になっている所にも目をやった。だが、玲香はいなかった。
「玲香さん、いないけど、どうかしたんですか?」
「おや、真治くんは知らなかったの。玲香ちゃんは、ここをやめてしまったよ」
「ここをやめた!」
「そうよ。だからチラシをはって玲香ちゃんの後をしてくれる人を探していたのよ。ほら、その子よ。玲香ちゃんのかわり、真由美ちゃん」
篠原に指された女性が真治に向かって軽く頭をさげた。
「なんでも、メインのバイト。訓練所で夜間はしっかり寝て休養をとるように要請が出たんですって。でも、それをすれば、ここよりはいいお手当が出るそうよ」
玲香の顔を見るためにだけ、ここにやってきた。だから、買いたい物などない。しかたなく適当に棚から数枚の板チョコを手にするとカウンターに向かった。
「いいわよ。私がやるから」と真由美に言って、篠原がカウンター内に入る。真治が置いた品物を見ながらレジスターに入力を始める。
「買い物袋持ってきている?」
「いや」
「じゃ、ビニール袋を一枚ね」
真治が支払いを終えると、篠原から買った物を入れたビニール袋を手渡されて、店を出た。
玲香に会える場所を考えると、もう一か所残っていることに気がついた。
藤井ビルだ。
そのことに気が付くと、真治はビニール袋を振りながら藤井ビルを目指すことにした。大島公園の周りを来た 時とは反対方向に歩くと、空の丸い大きな月は真治を追って来ているようだった。
やがて、西黒天商店街が見えてきた。
藤井ビルに近づき、真治は玲香の借りている部屋の玄関ドアの前に立った。なぜか、ドアは少し空いていて隙間ができていた。
「玲香さん、いる?」
真治が声をかけるが、答える者はいない。真治は戸を開けて中に入った。
カーテンを引かれていない窓からは月の光が入ってきていた。真治は月の明かりを頼りに部屋の中を見廻した。玲香の姿はない。寝室にも行ってみるが、ベッドに寝ている者はいない。もとの部屋に戻った真治はソファの前に毛布が落ちているのに気づいた。ソファの上に手をおくと、温かさが残っている。誰かがここに寝ていた証だった。そして、それは玲香しか考えられない。
玲香は、どこにいったのだろう?
不安にかられながら、真治はゆっくりと反転をして歩き出した。開けられていた玄関ドアから外へ出る。失意の中で自分の家に戻るしかないと思い真治は道路を歩いた。
すると、白いものが道路を動いていた。それも微かに上がったり下がったりしている。真治は目をこらした。動いているものは、横たわった人。それも玲香だった。
服も下着も何も身に着けてはいない。顔を上に向けているので、玲香の鼻が思っていたよりも高いことがわかった。まだ固い乳房が並んで上を向き、長い脚はしなやかに伸びていた。
玲香の体が寝たままで動いているのだ。そんな体が動ける理由を知って、真治は息をのんだ。
玲香の背中、腰や下肢の下に無数の突起物が出ていて、それが足のように蠢いていたからだ。玲香がこちら向かってやってくる。真治は慌てて、店と店の間に体を押し込んだ。
目の前を玲香が通っていく。もともと白い肌が、月の光をうけて、さらに白く輝いて見える。真治は息を詰め続けた。
真治の視界から、玲香は消え、やがて、玲香の借りている部屋の玄関ドアが開いて閉まる音がした。
玲香が自分の部屋に入ったことは間違いがない。だが、しばらくの間、真治は動けなかった。動き出すことができたのは、雲が出始めて、少し空に暗くなり出してからだった。
ゆっくりと自分の家に向かって歩く真治は、罪を犯して街を引き廻されている罪人のようだった。
家に戻った真治は夜の眠りにつくと夢を見た。
夢の中では、青い空に入道雲が浮かんでいた。
母がいた。笑っている。だが、母は時々自分の母ではなくなる。玲香の母、秋江に変わるのだ。
夢の中での真治は子供に戻っていた。野球帽をかぶっていたので、小学三年生になっているのだろう。
波音が聞こえてきた。真治は音の方に顔を向けた。そこに青い海が広がっている。真治はすぐに海に向かって走った。足元によってくる波を感じたかったからだ。
「真治くん、いたわよ」
声のした方を見た。玲香が岩場の上に立っている。
玲香は捕まえたカニを手に持っていて、それを顔の上にかざしていた。カニは塩まねきなのだろう。カニは大きい方のはさみを振り上げて玲香の指をはさんだ。
「痛い、痛いわ」と、玲香は叫び声をあげた。
「ダメだよ。ダメだよ。早くすてないと」と言って、真治は玲香のもとに駆けよろうとした。
それが合図だったように、岩場に隠れていたカニたちが現れ、足元から玲香の体を登り出していった。
真治が玲香の元に駆けつけた時には、すっかり玲香はカニに覆われていた。真治は泣きながら、手に持っていたスコップでカニを落とし始めた。
カニをすっかり落としたのだが、玲香は白い石膏像に変わっていた。呆然と見つめる真治の前で、石膏像は顔を上に向けたまま砂地に向かって倒れて行った。
倒れた石膏像の顔が玲香に変わった。真治がそばに寄ろうとした。すると、石膏像が突然動き出したのだ。体の下に生えた柔突起がものすごい速さで蠢いている。
「待って」と、叫びながら、必死に玲香を追った。だが、追いつかない。いつの間にか、点になり、消えてしまっていた。
「どうして、逃げてしまうんだ」
真治は泣き出していた。
そして、自分の泣き声で真治は目覚め、体中から汗が吹きだしていることを知った
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