2 / 11
1相棒
しおりを挟む
俺は片倉洋、大友警察署刑事課にいる刑事だ。だが、窃盗係。はでな殺人など扱うことのない地味な仕事なんだ。
「八斗交番にむかってくれ」と言って、俺は運転席にすわる竹内豊治の方に顔をむけた。竹内はくわえタバコのままで、俺の方を見ようともしない。黙って、走る車の前方を見続けていた。
竹内はやっと決まった俺の相棒だった。俺に相棒が決まらなかったのも無理はない。俺と相棒に成りたい者などいなかったからだ。数か月前に俺の相棒だった相内を死なせていた。それに地元のヤクザ、谷内組がいまだに俺をつけ狙い、そばにいた者たちが拳銃で撃たれたこともある。
竹内は、すでに警察を退職して正規の警察官ではない。臨時職員として新たに採用され、俺と組まされたというわけだ。だから、組織上、明らかに補助。署(警察署)は形だけ二人体制に見せているだけだった。
竹内も俺以外の警察官たちが組みたがらなかった。刑事として現役だった頃、独断の意見をいい、勝手な行動をし続けていたからだ。そのおかげで犯人を逮捕できたこともある。だが、それがかえって同僚たちから反感を招くことになった。
その上、竹内はヘビースモカーだったのだ。一時もタバコを手から離すことができない。常にニコチンの多いタバコ、ゴールデンバットを胸元に入れて吸っていた。聞き込みの時にも、タバコの臭いがすると住民からの苦情が出ていた。たしかに竹内の方に顔を向けただけでニコチンの臭いがする。竹内が乗る車(覆面パトカー)をたちまち竹内の喫煙室にしてしまう。だから、現職の時から、健康嗜好の警官たちは竹内と組むのをいやがっていた。
「聞いているのか? 八斗交番だぞ」
「何か用事があるのかい?」と言って、左手だけをハンドルから離し、竹内は吸っていたタバコを灰皿に押し付けていた。
「タタキ(強盗事件)の情報をくれたから、お礼によるだけだよ」
「本当かい?」
竹内は、俺を信用などしていない。だが、俺は竹内に俺の捜査に従うこと、つまり好きにやらしてくれることを俺と組む条件としていた。
もう一つ、付け加えておくことがある。竹内が相棒になったことで、俺の、いや俺たちの捜査に車を使うことが許可されたのだ。つまり、街を歩き廻らなくても良くなったと言うことだ。それは竹内が車を使うことを採用の要件としていたからだ。本当の話は、彼が使う車を他の警察官たちが使いたくなかったからに違いなかった。
「八斗交番にむかってくれ」と言って、俺は運転席にすわる竹内豊治の方に顔をむけた。竹内はくわえタバコのままで、俺の方を見ようともしない。黙って、走る車の前方を見続けていた。
竹内はやっと決まった俺の相棒だった。俺に相棒が決まらなかったのも無理はない。俺と相棒に成りたい者などいなかったからだ。数か月前に俺の相棒だった相内を死なせていた。それに地元のヤクザ、谷内組がいまだに俺をつけ狙い、そばにいた者たちが拳銃で撃たれたこともある。
竹内は、すでに警察を退職して正規の警察官ではない。臨時職員として新たに採用され、俺と組まされたというわけだ。だから、組織上、明らかに補助。署(警察署)は形だけ二人体制に見せているだけだった。
竹内も俺以外の警察官たちが組みたがらなかった。刑事として現役だった頃、独断の意見をいい、勝手な行動をし続けていたからだ。そのおかげで犯人を逮捕できたこともある。だが、それがかえって同僚たちから反感を招くことになった。
その上、竹内はヘビースモカーだったのだ。一時もタバコを手から離すことができない。常にニコチンの多いタバコ、ゴールデンバットを胸元に入れて吸っていた。聞き込みの時にも、タバコの臭いがすると住民からの苦情が出ていた。たしかに竹内の方に顔を向けただけでニコチンの臭いがする。竹内が乗る車(覆面パトカー)をたちまち竹内の喫煙室にしてしまう。だから、現職の時から、健康嗜好の警官たちは竹内と組むのをいやがっていた。
「聞いているのか? 八斗交番だぞ」
「何か用事があるのかい?」と言って、左手だけをハンドルから離し、竹内は吸っていたタバコを灰皿に押し付けていた。
「タタキ(強盗事件)の情報をくれたから、お礼によるだけだよ」
「本当かい?」
竹内は、俺を信用などしていない。だが、俺は竹内に俺の捜査に従うこと、つまり好きにやらしてくれることを俺と組む条件としていた。
もう一つ、付け加えておくことがある。竹内が相棒になったことで、俺の、いや俺たちの捜査に車を使うことが許可されたのだ。つまり、街を歩き廻らなくても良くなったと言うことだ。それは竹内が車を使うことを採用の要件としていたからだ。本当の話は、彼が使う車を他の警察官たちが使いたくなかったからに違いなかった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

九竜家の秘密
しまおか
ミステリー
【第6回ホラー・ミステリー小説大賞・奨励賞受賞作品】資産家の九竜久宗六十歳が何者かに滅多刺しで殺された。現場はある会社の旧事務所。入室する為に必要なカードキーを持つ三人が容疑者として浮上。その内アリバイが曖昧な女性も三郷を、障害者で特殊能力を持つ強面な県警刑事課の松ヶ根とチャラキャラを演じる所轄刑事の吉良が事情聴取を行う。三郷は五十一歳だがアラサーに見紛う異形の主。さらに訳ありの才女で言葉巧みに何かを隠す彼女に吉良達は翻弄される。密室とも呼ぶべき場所で殺されたこと等から捜査は難航。多額の遺産を相続する人物達やカードキーを持つ人物による共犯が疑われる。やがて次期社長に就任した五十八歳の敏子夫人が海外から戻らないまま、久宗の葬儀が行われた。そうして徐々に九竜家における秘密が明らかになり、松ヶ根達は真実に辿り着く。だがその結末は意外なものだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


この満ち足りた匣庭の中で 三章―Ghost of miniature garden―
至堂文斗
ミステリー
幾度繰り返そうとも、匣庭は――。
『満ち足りた暮らし』をコンセプトとして発展を遂げてきたニュータウン、満生台。
その裏では、医療センターによる謎めいた計画『WAWプログラム』が粛々と進行し、そして避け得ぬ惨劇が街を襲った。
舞台は繰り返す。
三度、二週間の物語は幕を開け、定められた終焉へと砂時計の砂は落ちていく。
変わらない世界の中で、真実を知悉する者は誰か。この世界の意図とは何か。
科学研究所、GHOST、ゴーレム計画。
人工地震、マイクロチップ、レッドアウト。
信号領域、残留思念、ブレイン・マシン・インターフェース……。
鬼の祟りに隠れ、暗躍する機関の影。
手遅れの中にある私たちの日々がほら――また、始まった。
出題篇PV:https://www.youtube.com/watch?v=1mjjf9TY6Io

魔法使いが死んだ夜
ねこしゃけ日和
ミステリー
一時は科学に押されて存在感が低下した魔法だが、昨今の技術革新により再び脚光を浴びることになった。
そんな中、ネルコ王国の王が六人の優秀な魔法使いを招待する。彼らは国に貢献されるアイテムを所持していた。
晩餐会の前日。招かれた古城で六人の内最も有名な魔法使い、シモンが部屋の外で死体として発見される。
死んだシモンの部屋はドアも窓も鍵が閉められており、その鍵は室内にあった。
この謎を解くため、国は不老不死と呼ばれる魔法使い、シャロンが呼ばれた。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
カフェ・シュガーパインの事件簿
山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。
個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。
だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる