刑事殺し・リスト・憎悪

矢野 零時

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1相棒

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 俺は片倉洋かたくら よう、大友警察署刑事課にいる刑事だ。だが、窃盗係。はでな殺人など扱うことのない地味な仕事なんだ。
「八斗交番にむかってくれ」と言って、俺は運転席にすわる竹内豊治の方に顔をむけた。竹内はくわえタバコのままで、俺の方を見ようともしない。黙って、走る車の前方を見続けていた。
 竹内はやっと決まった俺の相棒だった。俺に相棒が決まらなかったのも無理はない。俺と相棒に成りたい者などいなかったからだ。数か月前に俺の相棒だった相内を死なせていた。それに地元のヤクザ、谷内組がいまだに俺をつけ狙い、そばにいた者たちが拳銃で撃たれたこともある。
 竹内は、すでに警察を退職して正規の警察官ではない。臨時職員として新たに採用され、俺と組まされたというわけだ。だから、組織上、明らかに補助。署(警察署)は形だけ二人体制に見せているだけだった。
 竹内も俺以外の警察官たちが組みたがらなかった。刑事として現役だった頃、独断の意見をいい、勝手な行動をし続けていたからだ。そのおかげで犯人を逮捕できたこともある。だが、それがかえって同僚たちから反感を招くことになった。
 その上、竹内はヘビースモカーだったのだ。一時もタバコを手から離すことができない。常にニコチンの多いタバコ、ゴールデンバットを胸元に入れて吸っていた。聞き込みの時にも、タバコの臭いがすると住民からの苦情が出ていた。たしかに竹内の方に顔を向けただけでニコチンの臭いがする。竹内が乗る車(覆面パトカー)をたちまち竹内の喫煙室にしてしまう。だから、現職の時から、健康嗜好の警官たちは竹内と組むのをいやがっていた。
「聞いているのか? 八斗交番だぞ」
「何か用事があるのかい?」と言って、左手だけをハンドルから離し、竹内は吸っていたタバコを灰皿に押し付けていた。
「タタキ(強盗事件)の情報をくれたから、お礼によるだけだよ」
「本当かい?」
 竹内は、俺を信用などしていない。だが、俺は竹内に俺の捜査に従うこと、つまり好きにやらしてくれることを俺と組む条件としていた。
 もう一つ、付け加えておくことがある。竹内が相棒になったことで、俺の、いや俺たちの捜査に車を使うことが許可されたのだ。つまり、街を歩き廻らなくても良くなったと言うことだ。それは竹内が車を使うことを採用の要件としていたからだ。本当の話は、彼が使う車を他の警察官たちが使いたくなかったからに違いなかった。


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