26 / 30
13カサム帝国に到着
しおりを挟む
13 カサム帝国へ入場
山を越えて、平野に出たときでした。
全身を鎧でまとい、手にヤリを持ち、馬にのった一団がやってきたのでした。
すぐに警備兵は王さまたちの馬車の周りを囲みました。守るためです。
馬にのり先頭いた者は団の動きを手をあげてとめると、馬からおりてきました。
「私はデル帝国の騎士団の団長オズワルドと申す者。皇帝の命によりデル王国のご家族とセシール姫を迎えにまいりました。ご同行いたしますぞ」
「それは、ありがたい。山の中で、大盗賊に襲われて、かなりの負傷謝を出して、もう一度襲われることがあったら、どうしようかと不安に思っていたところでした」と、警備隊長は安堵の声をあげていました。
「ともかく、われらの王にご挨拶をしていだきたい」
「さようでござるな。まずは遭遇をさせていただこう」と言って、オズワルトは馬車の中にいる国王に声をかけ、口上を述べて、頭をさげていました。
「それでは、ご一緒にまいりましょう。先導をいたしますぞ」
オズワルドは騎士団を引き連れて先に立って歩き出しました。
しばらくして木々に囲まれた中から灰色の高いにへいが見え出しました。
へいの高さは二十メートル、広さは幾つもの町を飲み込むくらいの大きさがあったのです。
「帝国はどうなっているんですか?」とアーサーはジョージに聞きました。
「これは城郭都市だね。話には聞いていたが、こんな大きいとは思っていなかったよ。ここは城の中に町や村を持っているのさ。これなら、敵が攻めてきたとしても、わざわざ城門をあけて市民を中にいれる必要もない。市民と協力をして長期の戦いができるからね」
しばらくデル王国一行と騎士団は草原を歩き、目の前にへいの門に近づくことができました。
へいの上にいる門番の兵士に向かって、騎士団長が手をあげ、「開門!」と叫ぶと、それが合図になり、大きな鉄柵の門が左右に開けられました。
デル王国の一行がへいの中に入ると、警備兵の面々から、驚きの声があがりました。
城郭都市の真ん中には、尖った塔をもつ城があり、それを囲むように石造りの建物が立ち、野外劇場のようなドーム型の建物もありました。さらに帝国の住民の家々が積み木の箱をひっくりかしたようにびっしりと並んでいたのでした。
門をしめた後、すぐに騎士団長は馬車にのっているデル国王のところに行きました。
「まず、客人にお泊りいただく場所、迎賓館の方にお連れするように言いつけられております。そこで、お過ごしをいただきたいと存じます」
「さようか、だが、すぐにでも皇帝にお目見えして、ご挨拶をさせていただきたいのじゃが」
「分かりました。主にお伝えをいたします」
やがて、騎士団長は、デル王国一行を城の南にある建物、迎賓館に連れて行きました。
迎賓館は大理石の柱や天井にレリーフが刻まれた美しい建物でした。また、大きな建物でしたので、デル王国一団すべてが泊まることができました。
ジョージとアーサーは王たちが泊まっている部屋の近くの部屋に泊まることになり、すぐに二人は国王たちに呼ばれたのでした。
「これから、皇帝のいる御所に妻と娘のセリーヌをつれてご挨拶にいかなければならない。そのための身支度の用意をしてくれぬか?」
「おまかせください。皇帝とおあいになるのは、いつでございますか?」
「一刻後となっておる」
「それは、すぐにでも、お会いになるためのお服を用意して、お部屋の方にお持ちいたします」
ジョージは自分の部屋に戻ると、運び込んでいた箱から服を選び出し、部屋中にならべました。服を見ながらジョージは、あごに手をあて、三人の服を選んで組み合わせていました。アーサーはジョージが選んだ服を、王の部屋、王妃の部屋、さらに王女セシーヌの部屋に運びました。そこには、それぞれの部屋に侍女が待っていましたので、彼女らに服を渡しました。アーサーには、女性の着替えを手伝うことなどできなかったからです。その後、ジョージがそれぞれの部屋を回って着付けの手直しをしていました。
しばらくして、待合室でもある大広間に集まった王さま、王妃さま、そしてセリーヌ姫はお互いを見合うと微笑みあっていました。
ジョージの選んだ服は三人とも調和を感じさせる服で、皇帝を前にしても派手ではなく控えめな色合いで、それでいて気品を感じさせる服だったからです。
やがて、約束の定刻が近づいていましたので、三人は、警護隊長やアーサーに付き添われて皇帝との謁見の間に行きました。
控えめな服と態度で皇帝に接すことができた三人は笑顔で謁見の間から出てきました。
それは、ジョージの服選びの成功を意味していたのです。
山を越えて、平野に出たときでした。
全身を鎧でまとい、手にヤリを持ち、馬にのった一団がやってきたのでした。
すぐに警備兵は王さまたちの馬車の周りを囲みました。守るためです。
馬にのり先頭いた者は団の動きを手をあげてとめると、馬からおりてきました。
「私はデル帝国の騎士団の団長オズワルドと申す者。皇帝の命によりデル王国のご家族とセシール姫を迎えにまいりました。ご同行いたしますぞ」
「それは、ありがたい。山の中で、大盗賊に襲われて、かなりの負傷謝を出して、もう一度襲われることがあったら、どうしようかと不安に思っていたところでした」と、警備隊長は安堵の声をあげていました。
「ともかく、われらの王にご挨拶をしていだきたい」
「さようでござるな。まずは遭遇をさせていただこう」と言って、オズワルトは馬車の中にいる国王に声をかけ、口上を述べて、頭をさげていました。
「それでは、ご一緒にまいりましょう。先導をいたしますぞ」
オズワルドは騎士団を引き連れて先に立って歩き出しました。
しばらくして木々に囲まれた中から灰色の高いにへいが見え出しました。
へいの高さは二十メートル、広さは幾つもの町を飲み込むくらいの大きさがあったのです。
「帝国はどうなっているんですか?」とアーサーはジョージに聞きました。
「これは城郭都市だね。話には聞いていたが、こんな大きいとは思っていなかったよ。ここは城の中に町や村を持っているのさ。これなら、敵が攻めてきたとしても、わざわざ城門をあけて市民を中にいれる必要もない。市民と協力をして長期の戦いができるからね」
しばらくデル王国一行と騎士団は草原を歩き、目の前にへいの門に近づくことができました。
へいの上にいる門番の兵士に向かって、騎士団長が手をあげ、「開門!」と叫ぶと、それが合図になり、大きな鉄柵の門が左右に開けられました。
デル王国の一行がへいの中に入ると、警備兵の面々から、驚きの声があがりました。
城郭都市の真ん中には、尖った塔をもつ城があり、それを囲むように石造りの建物が立ち、野外劇場のようなドーム型の建物もありました。さらに帝国の住民の家々が積み木の箱をひっくりかしたようにびっしりと並んでいたのでした。
門をしめた後、すぐに騎士団長は馬車にのっているデル国王のところに行きました。
「まず、客人にお泊りいただく場所、迎賓館の方にお連れするように言いつけられております。そこで、お過ごしをいただきたいと存じます」
「さようか、だが、すぐにでも皇帝にお目見えして、ご挨拶をさせていただきたいのじゃが」
「分かりました。主にお伝えをいたします」
やがて、騎士団長は、デル王国一行を城の南にある建物、迎賓館に連れて行きました。
迎賓館は大理石の柱や天井にレリーフが刻まれた美しい建物でした。また、大きな建物でしたので、デル王国一団すべてが泊まることができました。
ジョージとアーサーは王たちが泊まっている部屋の近くの部屋に泊まることになり、すぐに二人は国王たちに呼ばれたのでした。
「これから、皇帝のいる御所に妻と娘のセリーヌをつれてご挨拶にいかなければならない。そのための身支度の用意をしてくれぬか?」
「おまかせください。皇帝とおあいになるのは、いつでございますか?」
「一刻後となっておる」
「それは、すぐにでも、お会いになるためのお服を用意して、お部屋の方にお持ちいたします」
ジョージは自分の部屋に戻ると、運び込んでいた箱から服を選び出し、部屋中にならべました。服を見ながらジョージは、あごに手をあて、三人の服を選んで組み合わせていました。アーサーはジョージが選んだ服を、王の部屋、王妃の部屋、さらに王女セシーヌの部屋に運びました。そこには、それぞれの部屋に侍女が待っていましたので、彼女らに服を渡しました。アーサーには、女性の着替えを手伝うことなどできなかったからです。その後、ジョージがそれぞれの部屋を回って着付けの手直しをしていました。
しばらくして、待合室でもある大広間に集まった王さま、王妃さま、そしてセリーヌ姫はお互いを見合うと微笑みあっていました。
ジョージの選んだ服は三人とも調和を感じさせる服で、皇帝を前にしても派手ではなく控えめな色合いで、それでいて気品を感じさせる服だったからです。
やがて、約束の定刻が近づいていましたので、三人は、警護隊長やアーサーに付き添われて皇帝との謁見の間に行きました。
控えめな服と態度で皇帝に接すことができた三人は笑顔で謁見の間から出てきました。
それは、ジョージの服選びの成功を意味していたのです。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
喫茶「のばら」
冬村蜜柑
恋愛
亡国の女王さまと国を攻め滅ぼした王族男子による、喫茶店経営ゆるゆるスローライフを所望する物語。
お茶もお菓子もいっぱい登場します。
ぜひ温かい紅茶をのみながら、ご覧くださいませ。
基本はゆるくほのぼのでありますが、時には抉りに行く描写もございます。
※カクヨム、なろうにもほぼ同じものを掲載
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる