ご一緒に お茶でも

矢野 零時

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13カサム帝国に到着

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13 カサム帝国へ入場
 山を越えて、平野に出たときでした。
 全身を鎧でまとい、手にヤリを持ち、馬にのった一団がやってきたのでした。
 すぐに警備兵は王さまたちの馬車の周りを囲みました。守るためです。
 馬にのり先頭いた者は団の動きを手をあげてとめると、馬からおりてきました。
「私はデル帝国の騎士団の団長オズワルドと申す者。皇帝の命によりデル王国のご家族とセシール姫を迎えにまいりました。ご同行いたしますぞ」
「それは、ありがたい。山の中で、大盗賊に襲われて、かなりの負傷謝を出して、もう一度襲われることがあったら、どうしようかと不安に思っていたところでした」と、警備隊長は安堵の声をあげていました。
「ともかく、われらの王にご挨拶をしていだきたい」
「さようでござるな。まずは遭遇をさせていただこう」と言って、オズワルトは馬車の中にいる国王に声をかけ、口上を述べて、頭をさげていました。
「それでは、ご一緒にまいりましょう。先導をいたしますぞ」
 オズワルドは騎士団を引き連れて先に立って歩き出しました。

 しばらくして木々に囲まれた中から灰色の高いにへいが見え出しました。
 へいの高さは二十メートル、広さは幾つもの町を飲み込むくらいの大きさがあったのです。
「帝国はどうなっているんですか?」とアーサーはジョージに聞きました。
「これは城郭都市だね。話には聞いていたが、こんな大きいとは思っていなかったよ。ここは城の中に町や村を持っているのさ。これなら、敵が攻めてきたとしても、わざわざ城門をあけて市民を中にいれる必要もない。市民と協力をして長期の戦いができるからね」
 
 しばらくデル王国一行と騎士団は草原を歩き、目の前にへいの門に近づくことができました。
 へいの上にいる門番の兵士に向かって、騎士団長が手をあげ、「開門!」と叫ぶと、それが合図になり、大きな鉄柵の門が左右に開けられました。

 デル王国の一行がへいの中に入ると、警備兵の面々から、驚きの声があがりました。
 城郭都市の真ん中には、尖った塔をもつ城があり、それを囲むように石造りの建物が立ち、野外劇場のようなドーム型の建物もありました。さらに帝国の住民の家々が積み木の箱をひっくりかしたようにびっしりと並んでいたのでした。
 門をしめた後、すぐに騎士団長は馬車にのっているデル国王のところに行きました。
「まず、客人にお泊りいただく場所、迎賓館の方にお連れするように言いつけられております。そこで、お過ごしをいただきたいと存じます」
「さようか、だが、すぐにでも皇帝にお目見えして、ご挨拶をさせていただきたいのじゃが」
「分かりました。主にお伝えをいたします」
 やがて、騎士団長は、デル王国一行を城の南にある建物、迎賓館に連れて行きました。
 迎賓館は大理石の柱や天井にレリーフが刻まれた美しい建物でした。また、大きな建物でしたので、デル王国一団すべてが泊まることができました。 

 ジョージとアーサーは王たちが泊まっている部屋の近くの部屋に泊まることになり、すぐに二人は国王たちに呼ばれたのでした。
「これから、皇帝のいる御所に妻と娘のセリーヌをつれてご挨拶にいかなければならない。そのための身支度の用意をしてくれぬか?」
「おまかせください。皇帝とおあいになるのは、いつでございますか?」
「一刻後となっておる」
「それは、すぐにでも、お会いになるためのお服を用意して、お部屋の方にお持ちいたします」

 ジョージは自分の部屋に戻ると、運び込んでいた箱から服を選び出し、部屋中にならべました。服を見ながらジョージは、あごに手をあて、三人の服を選んで組み合わせていました。アーサーはジョージが選んだ服を、王の部屋、王妃の部屋、さらに王女セシーヌの部屋に運びました。そこには、それぞれの部屋に侍女が待っていましたので、彼女らに服を渡しました。アーサーには、女性の着替えを手伝うことなどできなかったからです。その後、ジョージがそれぞれの部屋を回って着付けの手直しをしていました。

 しばらくして、待合室でもある大広間に集まった王さま、王妃さま、そしてセリーヌ姫はお互いを見合うと微笑みあっていました。
 ジョージの選んだ服は三人とも調和を感じさせる服で、皇帝を前にしても派手ではなく控えめな色合いで、それでいて気品を感じさせる服だったからです。
 やがて、約束の定刻が近づいていましたので、三人は、警護隊長やアーサーに付き添われて皇帝との謁見の間に行きました。
 控えめな服と態度で皇帝に接すことができた三人は笑顔で謁見の間から出てきました。
 それは、ジョージの服選びの成功を意味していたのです。

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