ご一緒に お茶でも

矢野 零時

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11やっぱり、襲撃

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 旅立ちの日がやってきました。見送りにきたデル王国の住民たちは、手に国旗をもって行列を作っていました。
 城門の上でラッパがなりだしました。
 すると、城門をとおって、王さまご夫婦とセシール姫が現れたのです。警護兵たちが手伝って王さま夫婦とセシール姫さまを一台のりっぱな馬車にのせていました。その後ろには、王さまたちが夜に眠るための寝台用の馬車、さらに結納品をのせた荷車も並んでいます。
「カサイ帝国へ出発いたします」と、先頭にいて馬にのる警護兵が声をあげると隊列は動き出しました。
 前が動き出したので、アーサーはロバの背に掛け声をかけました。
「はい、ほう」
 ロバたちも動き出しました。そして、アーサーの荷車の後ろについている雑技団も動き出しました。
 隊列を見ていた住民たちは「ばんざい」と声をあげ旗をふっていました。

 隊列は、街道を進みます。やがて、これ以上先に行けばデル王国の外に出てしまう場所にやってきていました。そして、夕刻になっていました。

 ちなみに、街道について少しご説明をさせていただきます。
 街道は国から国へ行き来できるよう整備された道のことです。街道ができあがったのは、国と国との間に物や貨幣を運んでくれる商人たちからの要望があったからです。もちろん、商人たちがいろんな物等を運び込み、また運びだしてもらえば、どの国にも利益をもたらされることでもありました。
 
 無事にここまでこれたので、警護兵たちは一安心をして野営のためのテントをはりだしました。
 そんな時でした。
 矢が飛んできて、警護兵の者たちに刺ささったのです。警護兵はすぐに盾を構えて丸くなり対陣を組みだしました。デル国でたむろしていた盗賊団たちは一致団結をして襲いかかってきたのでした。
 盗賊団が襲いたくなるのも無理はありません。セシール姫の結納のためにデル王国が集めた財宝を手に入れれば、贅沢をしても一生遊んで暮らせます。
 警護兵たちは火が付いた矢を放ち出しました。盗賊団に当たった矢は赤く燃えて辺りを照らし、そこにいる盗賊団の姿を明らかにしてしまいます。そこに向かって警護兵はたくさんの矢を放ったのでした。やがて、警護兵や盗賊たちの放つことができる矢がなくなると、お互いに剣を持って戦うことになりました。
 ジヨージはこんなこともあろうかと思い荷車の上に厚い木の板をのせていたので、矢でセシール姫さまたちが着ることになる衣服に穴が開くことはありません。それにロバには鍛冶屋に頼んで作らせた鎖帷子を着させていたので、ロバたちも矢で傷つくことはありませんでした。矢が飛んできている間、ジョージとアーサーは荷車の下にかくれていたので、矢に当たることもなかったのです。
 矢が飛んでこなくなったので二人が荷車の下から出ると、すぐに盗賊団たちに襲われ出しました。
 アーサーは剣を抜いて襲ってくる盗賊団に切りかかって行きました。ジョージは荷車の上に飛びのると長刀をふって、とりかこんだ盗賊団を切り下ろしていました。
 でも、数多い盗賊団にアーサーはぐるりと囲まれてしまったのです。
「アーサーさま」
とリンダが声をかけ、アーサーに剣を投げてよこしたのです。その剣は、菊一文字という日本の刀でした。簡単に手に入れることができない名刀です。
「ありがとう」
 アーサーは菊一文字を左に、今まで使っていた剣を右手に構えると、あっと言う間に、盗賊団の輪を繰り崩していったのでした。
 一方、雑技団の男たちは近づいて来る盗賊団に向かって最初短剣を投げていましたが、それがつきると今度はブーメランを投げだしました。ブーメランは盗賊団の頭をかちわり、男たちの手に戻ってきました。戻ってきますので、ブーメランを何度も投げつけることができるのでした。

 雑技団の馬車や荷車から物を盗ろうとする盗賊団たちは、サマンサの指示で動くサルたちに襲われ、ひっかき傷で血だらけになっていました。
 やがて、盗賊団は、隊列から物を奪うことなどできないとわかったのか、まるで、水がひくように逃げ出していったのでした。

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