21 / 30
8喫茶店存立問題
しおりを挟む
カサイ帝国へコンテストに参加し、花嫁の着付けをするためにジョージは随行していかなければなりません。その間、カンナさんがジョージの洋装店をまかされることになりました。もちろん、カンナさんは店を守ってジョージを待ってくれると言っています。
後は、アーサーがどうするかです。
ジョージがカサイ帝国への旅をしている間、何が起きるかわかりません。ジョージを守るためにアーサーもジョージについて行かなければと思っていました。
そうなると、喫茶店は店を閉めるしかありません。
アーサーがため息をついていると、リンダが声をかけてきました。
「アーサーさま、喫茶店のことで悩んでおられるのですか?」
「そうだよ。ジョージがセシール姫さまといっしょに旅にでる。だが、旅の途中で何が起きるかわからない。だから、ジョージを守るために私もジョージといっしょに旅に行こうと思っているんだ」
「では、この店を誰がするのですか?」
「誰もいないな。まずは喫茶店を閉店にしようと思うんだ」
「これだけ、はやっているのに、もったいないですよ」
「リンダさんには申し訳ない。喫茶店がなくなると、働き口がなくなる。リンダさんの働き口はこの商店街のどこかに見つけておくつもりだからね」
「ここはアーサーさまのお城ですよ。守らなければなりません」
「お城ね!そうだ。いいことを思いついた。リンダさんがこの喫茶店をやってくれないか、店をゆずるよ」
「それはダメですよ」
「え、どうして?」
「アーサーさまが、ジョージさまについて行かれる時は、私はアーサーさまについて旅に行きますから」
アーサーは口を開けて、リンダをみつめていました。
「じゃ、やっぱり、この店は閉店だね」
「また、アルバイト募集のチラシをはりだしてみるのはどうでしょう?」
「でも、今度欲しい店員は、経験者で、一日中店にいてもらわなければならないぞ」
しばらくの間、リンダは軽く頭を横にかしげていました。
「なんとか、なると思いますよ」
「そうかな?」
他にいいアイデアも浮かばないので、アーサーはカウンターの上に紙をもってきて、ペンで次のような、文言を書きました。
アルバイト募集
朝8時から夜8時まで働いてくれる人、三名まで募集します。
待遇:男女とはない。
朝、昼、夕方にまかない飯を用意いたします。
賃金は、一日 金貨5枚
喫茶店店主 アーサー
それをさっそく店の前にはりました。
次の日の朝。
開店に準備を終えたアーサーがモーニングのためにやってきたお客たちのために仕入れたパンを焼いていた時でした。
かっぷくのいい少しお腹がつきでた男と小太りの女二人が店の中に入ってきました。
「いらしゃいませ」と、ジョージは言って、三人に挨拶をしました。すると、三人はカウンターにいるジョージのところにやってきました。
「店の外にはってあるチラシを見たんだが、やとってくれないかね」
「みなさん、全員がこの店で働くことを望んでいるのですか?」
ジョージがそう聞くのも無理のないことでした。この歳の人たちならば、それぞれの部署で活躍をしていそうな人たちだったからです。
「そうだよ。そろそろ仕事を変えたくなったからね」
渡りに船、あまりにも都合よすぎます。
「じゃ、お願いできますか。まずお名前を教えていただきたいと思います」
「わしはフランクリン」
「私は、マリア」
「私はミネルバ」
アーサーが何も言わないのに、三人はすぐに働き出しました。リンダは三人と目をあわすと笑顔をむけています。パンを運んできていたパン屋の職人たちともすぐに仲良くなっていました。
昼に様子を見に来たカンナさんは「これで、一安心だね」と言ってました。
この三人が何者なのか、お話をする前に、少しデル王国の制度についてお話をしておきましょう。
デル王国の王家に生まれた子どもたちは、母である女王さまが直接育てることをしません。オローラ姫さまやセシール姫さまにはそれぞれ乳母がついて、その乳母によってずっと育てられていたのでした。
乳母になっている方はこの国の公爵の妻がその任にあたっていました。
公爵はデル王国に長い間つかえ、信用を得て、領地も与えられ、直属の部下ももっていたのです。
セシール姫さまの乳母は、ブスタ家の奥さま、ホメルでした。今回はセシール姫さまの縁組が決まりましたので、空を飛ぶことができたように喜んでいました。
オローラ姫さまの乳母は、ケンド家の奥さま、サマンサでした。長女でありながらオローラ姫さまが結婚できなかったことを一番くやんでいました。サマンサは、オローラ姫さまの恋心を知ると、それをかなえさせてやりたいと思っていたのです。
もうお分かりですね。喫茶店のアルバイトをしたいと現れたのはケンド家の料理長とメイド二人だったのでした。
後は、アーサーがどうするかです。
ジョージがカサイ帝国への旅をしている間、何が起きるかわかりません。ジョージを守るためにアーサーもジョージについて行かなければと思っていました。
そうなると、喫茶店は店を閉めるしかありません。
アーサーがため息をついていると、リンダが声をかけてきました。
「アーサーさま、喫茶店のことで悩んでおられるのですか?」
「そうだよ。ジョージがセシール姫さまといっしょに旅にでる。だが、旅の途中で何が起きるかわからない。だから、ジョージを守るために私もジョージといっしょに旅に行こうと思っているんだ」
「では、この店を誰がするのですか?」
「誰もいないな。まずは喫茶店を閉店にしようと思うんだ」
「これだけ、はやっているのに、もったいないですよ」
「リンダさんには申し訳ない。喫茶店がなくなると、働き口がなくなる。リンダさんの働き口はこの商店街のどこかに見つけておくつもりだからね」
「ここはアーサーさまのお城ですよ。守らなければなりません」
「お城ね!そうだ。いいことを思いついた。リンダさんがこの喫茶店をやってくれないか、店をゆずるよ」
「それはダメですよ」
「え、どうして?」
「アーサーさまが、ジョージさまについて行かれる時は、私はアーサーさまについて旅に行きますから」
アーサーは口を開けて、リンダをみつめていました。
「じゃ、やっぱり、この店は閉店だね」
「また、アルバイト募集のチラシをはりだしてみるのはどうでしょう?」
「でも、今度欲しい店員は、経験者で、一日中店にいてもらわなければならないぞ」
しばらくの間、リンダは軽く頭を横にかしげていました。
「なんとか、なると思いますよ」
「そうかな?」
他にいいアイデアも浮かばないので、アーサーはカウンターの上に紙をもってきて、ペンで次のような、文言を書きました。
アルバイト募集
朝8時から夜8時まで働いてくれる人、三名まで募集します。
待遇:男女とはない。
朝、昼、夕方にまかない飯を用意いたします。
賃金は、一日 金貨5枚
喫茶店店主 アーサー
それをさっそく店の前にはりました。
次の日の朝。
開店に準備を終えたアーサーがモーニングのためにやってきたお客たちのために仕入れたパンを焼いていた時でした。
かっぷくのいい少しお腹がつきでた男と小太りの女二人が店の中に入ってきました。
「いらしゃいませ」と、ジョージは言って、三人に挨拶をしました。すると、三人はカウンターにいるジョージのところにやってきました。
「店の外にはってあるチラシを見たんだが、やとってくれないかね」
「みなさん、全員がこの店で働くことを望んでいるのですか?」
ジョージがそう聞くのも無理のないことでした。この歳の人たちならば、それぞれの部署で活躍をしていそうな人たちだったからです。
「そうだよ。そろそろ仕事を変えたくなったからね」
渡りに船、あまりにも都合よすぎます。
「じゃ、お願いできますか。まずお名前を教えていただきたいと思います」
「わしはフランクリン」
「私は、マリア」
「私はミネルバ」
アーサーが何も言わないのに、三人はすぐに働き出しました。リンダは三人と目をあわすと笑顔をむけています。パンを運んできていたパン屋の職人たちともすぐに仲良くなっていました。
昼に様子を見に来たカンナさんは「これで、一安心だね」と言ってました。
この三人が何者なのか、お話をする前に、少しデル王国の制度についてお話をしておきましょう。
デル王国の王家に生まれた子どもたちは、母である女王さまが直接育てることをしません。オローラ姫さまやセシール姫さまにはそれぞれ乳母がついて、その乳母によってずっと育てられていたのでした。
乳母になっている方はこの国の公爵の妻がその任にあたっていました。
公爵はデル王国に長い間つかえ、信用を得て、領地も与えられ、直属の部下ももっていたのです。
セシール姫さまの乳母は、ブスタ家の奥さま、ホメルでした。今回はセシール姫さまの縁組が決まりましたので、空を飛ぶことができたように喜んでいました。
オローラ姫さまの乳母は、ケンド家の奥さま、サマンサでした。長女でありながらオローラ姫さまが結婚できなかったことを一番くやんでいました。サマンサは、オローラ姫さまの恋心を知ると、それをかなえさせてやりたいと思っていたのです。
もうお分かりですね。喫茶店のアルバイトをしたいと現れたのはケンド家の料理長とメイド二人だったのでした。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
喫茶「のばら」
冬村蜜柑
恋愛
亡国の女王さまと国を攻め滅ぼした王族男子による、喫茶店経営ゆるゆるスローライフを所望する物語。
お茶もお菓子もいっぱい登場します。
ぜひ温かい紅茶をのみながら、ご覧くださいませ。
基本はゆるくほのぼのでありますが、時には抉りに行く描写もございます。
※カクヨム、なろうにもほぼ同じものを掲載
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
【完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる