ご一緒に お茶でも

矢野 零時

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6合コン(合同懇親会)

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 ジョージの店の前に置いたテーブルでアーサーとジョージは気ままな時間にお茶会を開いていました。そんな時、ポポロ商店街の人や買い物にきた人たちも、立ち寄って一緒にお茶を楽しんでくれました。
 やがて、アーサーはいつでもみんなが集まって、お茶を楽しむ場所を作りたいと考えるようになりました。ジョージもその考えに賛同してくれ、いつでも協力をしてくれる約束をしていました。
 そんな時に、帽子屋の前の店、果物屋が店を閉めることになったのです。さっそく、今まで貯めていたお金で店と土地を買い、商店街の組合長へ営業権の支払いをしました。
 ジョージの協力のおかげもあって、紅茶入れの上手なカンナさんは喫茶店の経営に参加してくれることになりました。それができたのは、ジョージの洋装店にカンナさんの娘さん、ジョアンナが働いてくれることになったからです。
 店の壁にはジョージからもらった薄緑色の布地をはりました。その壁に絵のかわりに、アーサーが作った造花をあしらった帽子をあちらこちらに飾りました。
 もう一つ言っておくことがあります。それはアーサーの帽子屋のことです。そちらの店には前からやとっていた若者が一人前になっていましたので、全面的に仕事をまかせることにしたのでした。

 喫茶店の前に一台の馬車がとまりました。その馬車の色は、いつもの黒でなく葡萄のような赤茶色をしていましたので、オローラ姫の使っている馬車ではないことがわかりました。
 降りてきたのは男と女。それも若い二人。そして、身なりの確かさから貴族以上の身分の人たちであることがわかりました。二人はこの店の一番奥のテーブルをはさんで向かい合うようにすわりました。
 二人はレモンティを頼み、カンナさんが注文された紅茶を運んでいきました。カンナさんがカウンターに戻ると二人は話し始めました。二人の話し声はカンナさんのいるカウンターの所まで聞こえてきていたのです。
「王子4人と王女の4人で顔合わせをする懇親会なんて、思いつきもしなかったね」と若い男が話し出しました。
 王子4人と王女4人の合同懇親会、つまり合コンを考えついたのは、この場にいないオローラ姫でした。
 4人の王子は、ボブ王子、ベル王子、メルト王子、スクエ王子。
 4人の王女は、スカレート姫、オードリー姫、オンディーヌ姫、そして、オローラ姫。
 お互いの顔合わせは、カドノ王国の舞踏会でしています。そう、ルイ王子がシンデレラを妃にえらんだあの舞踏会です。
 でも、その時は本当に顔を見ただけです。そこでもっとお互いを知りあうためにデル王国の別荘で合コンを開いて集まっていたのでした。

 ひとつだけ言い足すことがあります。ここに集まった王子と王女は、カサム帝国の中にある都市国家の王子や王女でした。都市国家はカサム帝国の支配下にあり、従属を余儀なくされていました。

「合コン。本当に楽しかったわね。おかげで、ベル王子と知り合うことができたんですもの」と言って、オードリー姫は手をのばし、ベル王子の手の上に置きました。
「私も幸せだね。オードリー王女と知り合うことができたのだから。でも、オローラ姫は残念ながら、相手をみつけることができなかったみたいだね」
「オンディーヌ姫と好きな殿方、メルト王子がだぶってしまった。オローラ姫はあきらめがつかなかったみたいですわ」
「残念ながらメルト王子はオンディーヌ姫を選んでしまった。それにボブ王子はオローラ姫を好きだったのに、オローラ姫は振り向いてもくれないので、いじけてしまっているよ」
「それは、オローラ姫も同じですわ」
「4人対4人の男女が顔合わせをして、二組のペアが生まれた。それだけでも上出来じゃないかな。男女を結びつけるのは神であるキューピッドがきめる技だからね」
 二人はうなずきあっていました。

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