二次創作小説

ゆうひ

静寂の別れ

私は失恋してしまった。
大切な人と別れた。
辛い別れだった。涙が枯れてしまうほどに。
とてもいい人だった。

その人は花を大切にしていた。
いつも窓際にあるガラス製の花瓶に花をいけていた。
決まって同じような花だった。
四つに別れた花弁。黄色がとても美しい。

「この花は君のようだ」

ずっと彼は口癖のように私に話す。
こんなに美しい花が私と同じなのか？
私には全く分からなかった。

涙が出なくなった頃、まだ美しく咲いている黄色の花を調べた。
名前が分からなくて｢黄色の花｣でたくさん調べた。

そして辿り着いたのは『ツキミソウ』という花だった。
全く私には関係ない、月を見て咲くツキミソウという花がなぜ私のようとあの人は言ったのか。

ツキミソウについて書かれたインターネットのページをスクロールしていく。
そこである一文を発見した。

『竹久夢二はツキミソウを宵待草(ヨイマチグサ)と表したともされている』

私は妙にひっかかり、宵待草について調べた。
宵待草の花言葉は「移り気」「温和」「協調」
そして「ほのかな恋」

枯れたはずの涙がいつの間にか頬を伝っていた。
そっと窓際にある花瓶を机の真ん中に置いた。
ふわりと香る花の香り。
私は机にうずくまり泣いた。
涙が枯れようともずっと。

文字通り、私は恋を失ったのだ。
永遠に戻らない彼を嘆いた。

喪服姿から着替えず、次の日の朝私はいけられていた待宵草ごと花瓶を捨てた。

それから毎年、御盆に私は待宵草を彼の前に持って来ている。
そして今年も私は彼に話を聞いてもらうのだ。
返事は返ってこないけれど。それでいいのだ。

「私、今年から配信してるんだ。貴方が見ていたYouTubeで」