二次創作小説

くもり

忘れさせられた怪異

怪異、都市伝説が明確に人類史から消された。否、消されようとしていた。
怪異は人を蝕むものとして扱われ、存在していた怪異達は少しずつ着実に姿を減らして行った。

八咫烏は足をもがれ、撃ち殺された。
口裂け女は首を跳ねられ、地に伏せた。
海坊主には核爆弾を放たれ、蒸発した。

ここにも一人。否ひとつ。怪異に成れなかったものがまがい物が消えようとしていた。

「見つけたぞ。社会を蝕むゴミめ」

数人の男たちに囲まれたひとつの怪異が居た。
半身は黒くおぞましいものに変わっている彼女はジンカン。に成れなかったもの。

怪異であれど、人であるなら触れられる。
銃で足と手を撃たれ思うように動けない。
逃げようともがくそれに冷ややかな視線をした男が首を持って締め上げる。

「がっ・・・ぐっ・・・」

必死に締め上げる手を引き剥がそうと身体が動く。身をよじろうとも、ギリギリと締め上げる力が強くなる。

男の爪が彼女の首に刺さり、血が吹きでてくる。カヒューと少ない通りを空気が通る音がした。

そして。

ゴキンという音と共にそれは身体の力を無くした。よじっていた身体も、もがいていた足も、引き剥がそうとした手も力を無くしたように落ちた。

首を離されゴトッと地面に落ちたそれを数百の銃弾が撃ち込まれる。なんの抵抗も無く、なんの声もあげない死体にそれは突き刺さっていく。

そしてその場には鮮血と黒いなにかだけが残った。血塗られた地面をゴミを見るような目で見た男達はその場を離れた。

塵になって黒は消えた。
鮮血はその場を濡らしただけだった。