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暗闇に蠢く
11、夜店
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・・・・・
そこは深い深い海のようだった。
『心地よい』それだけが体に広がっていた。
しかしそれは昔の記憶を思い出させた。遠い遠い昔の話だ。
昔、この大陸が「日ノ本」と呼ばれていた頃の話だ。日向と呼ばれていた所をご存知だろうか?ライトの街の『ライト』という由来は日向が日、すなわち太陽、その光の元にと初代ライトの町長がつけたそうである。そんな光のある煌びやかな街。しかし、光があるなら闇もある。初代ライトの街は栄えていた事もあり、奴隷のように扱われる人達も少なくはなかった。過酷な労働環境で死に至る人々も少なくはなかったという。
響き渡る絶叫と痛々しい音。繰り返される謝罪の言葉と笑う男の声。その男がこちらにも歩いて来る。赤黒い何かをつけた棍棒を振りかざして力任せに振り下ろす・・・。
「・・・ッ。」
目が覚める。すぐ見えた景色は天井だった。
白い白い天井。体を起こし、見渡したそこには、掃除の行き届いた綺麗な部屋と、黒塗りの鞘に紫色の柄のある刀、そして自分の横で椅子に座って寝ている本好さんとスライムの姿があった。
「俺は・・・支配に負けたのか・・・。」
思い出せる情報を思い出そうとする。しかし、思い出せるのは信長の支配に負け、暗闇の中に落ちていく記憶までであった。
「おっと。起きましたか?らいさん。」
「あぁ・・・はい。まだ少し記憶が曖昧ですが・・・。」
「記憶がないでしょう?乗っ取られたあとの。お話しましょう。と言っても自分も聞いた話ですけどね。」
そこで初めて、シスター、さくまさん、魔王により信長を止めてもらった事、レイラは信長により破壊された事、りくは虚無ノ神に意識を移した事を知った。そしてそこに置いてある刀は虚無ノ神ではなく、りくの意識が移ったことにより弾き出された信長の魔力の塊の刀であるということを知った。
「じゃあ・・・虚無ノ神とりくは・・・?」
「それは魔王により何かを施されてるらしいよ。まぁ自分にはわからないですがね。」
膝に座るスライムを横に引っ張りながら本好は答えた。
「これは魔王様より伝言ですが・・・。『その信長の刀を使いこなせるようにならなければ信長の支配には勝てない。』とのことです。」
「なるほど・・・。身体が回復したら少し使ってみますか・・・。」
そう言った時、本好の目が鋭くなった。
「らいさん。無礼を承知で言いますが、今のらいさんのやり方だと、信長レベルの支配を抜け出すのに一生かかっても抜け出せないと思いますよ。信長レベルの伝説は数多くこの大陸に眠っています。この街の近くにもあるでしょう。そのレベルの伝説を使いこなせるようになった時、信長と対等になるんじゃないですかね。」
「しかし!それではっ・・・。」
言い返そうとしたらいはそこで言葉をつぐんでしまった。本好の目は本気だったのだ。それは昔、魔道士達から眠れる魔導とまで呼ばれた魔術師の本気の目だった。
「しかし自分もノーヒントで伝説を探せと言っている訳では無いですよ。体が治り次第店に来てください。自分も持っているんですよ。伝説。」
そう言ったあと本好は立ち上がり、スライムと一緒に部屋を出ていった。
「船長。準備がもうしばらくで整います。あとは 店の客次第でございます。」
「そうか。そろそろか。」
船長と呼ばれた男は煌びやかかな服を着て、綺麗な桃色の花を胸元へ飾り、ひとつ錠剤を飲み込むと店へと入っていった。その男が入っていった店。それは
ホストクラブ『バッカニアーズ』という。
ホストというからには男達がお客である女性をもてなすような店である。中は綺麗なエントランスから始まり、小部屋で女性をもてなすようになっているようだ。どの部屋にも甘い香りがする。どの部屋にも彼がつけていたような桃色の花が花瓶と共に置いてある。そしてこの店から出ていく女性達はみんな天国に来たかのような顔をしており、どの女性にも桃色の花の花弁がついた、ストラップのようなものをつけられていた。その小部屋の一角にて、船長と呼ばれた彼が女性をもてなしていた。
ある一室
「やはりおかしい。」
「何かおかしいことでも?No.1」
「おかしいに決まっているだろう。あの店はどの店より安定している。それにもっとおかしいのは女性の冒険者がこの街から出ようとしない。普通、冒険者は色々な街へと動いていく仕事だ。確かにこの街を拠点とする冒険者もいる。しかし、女性の冒険者はこの街へ入ってからほとんど出ていかない。住居を構えた訳でも、結婚した訳でもないのに・・・。」
「それは確かにおかしいねぇ・・・。」
「どう思う?No.3」
「正直あの店に何かあると思うのが普通だろうね。あと、海岸から良くあの店の裏に入っていくってタレコミが入ってるよ。」
「お狐様がそういうならホントなんだろうな・・・。何をするつもりなのかねぇ・・・。あの人は」
「さぁね。小生には分からないよ。」
お狐様と呼ばれた彼女は煙草に火をつける。
そして煙を吐くとこう言った。
「しかし女性だけってのは何かおかしいね。シスターにでも報告して、協力を仰いだ方がいいんじゃないかな?」
「そう・・・だね。あまり気が進まないけど今はそっちの方がいいかもしれないね。」
二人の二人だけの会議は終わったようだ。
その一室の灯りはその後消えた。
そこは深い深い海のようだった。
『心地よい』それだけが体に広がっていた。
しかしそれは昔の記憶を思い出させた。遠い遠い昔の話だ。
昔、この大陸が「日ノ本」と呼ばれていた頃の話だ。日向と呼ばれていた所をご存知だろうか?ライトの街の『ライト』という由来は日向が日、すなわち太陽、その光の元にと初代ライトの町長がつけたそうである。そんな光のある煌びやかな街。しかし、光があるなら闇もある。初代ライトの街は栄えていた事もあり、奴隷のように扱われる人達も少なくはなかった。過酷な労働環境で死に至る人々も少なくはなかったという。
響き渡る絶叫と痛々しい音。繰り返される謝罪の言葉と笑う男の声。その男がこちらにも歩いて来る。赤黒い何かをつけた棍棒を振りかざして力任せに振り下ろす・・・。
「・・・ッ。」
目が覚める。すぐ見えた景色は天井だった。
白い白い天井。体を起こし、見渡したそこには、掃除の行き届いた綺麗な部屋と、黒塗りの鞘に紫色の柄のある刀、そして自分の横で椅子に座って寝ている本好さんとスライムの姿があった。
「俺は・・・支配に負けたのか・・・。」
思い出せる情報を思い出そうとする。しかし、思い出せるのは信長の支配に負け、暗闇の中に落ちていく記憶までであった。
「おっと。起きましたか?らいさん。」
「あぁ・・・はい。まだ少し記憶が曖昧ですが・・・。」
「記憶がないでしょう?乗っ取られたあとの。お話しましょう。と言っても自分も聞いた話ですけどね。」
そこで初めて、シスター、さくまさん、魔王により信長を止めてもらった事、レイラは信長により破壊された事、りくは虚無ノ神に意識を移した事を知った。そしてそこに置いてある刀は虚無ノ神ではなく、りくの意識が移ったことにより弾き出された信長の魔力の塊の刀であるということを知った。
「じゃあ・・・虚無ノ神とりくは・・・?」
「それは魔王により何かを施されてるらしいよ。まぁ自分にはわからないですがね。」
膝に座るスライムを横に引っ張りながら本好は答えた。
「これは魔王様より伝言ですが・・・。『その信長の刀を使いこなせるようにならなければ信長の支配には勝てない。』とのことです。」
「なるほど・・・。身体が回復したら少し使ってみますか・・・。」
そう言った時、本好の目が鋭くなった。
「らいさん。無礼を承知で言いますが、今のらいさんのやり方だと、信長レベルの支配を抜け出すのに一生かかっても抜け出せないと思いますよ。信長レベルの伝説は数多くこの大陸に眠っています。この街の近くにもあるでしょう。そのレベルの伝説を使いこなせるようになった時、信長と対等になるんじゃないですかね。」
「しかし!それではっ・・・。」
言い返そうとしたらいはそこで言葉をつぐんでしまった。本好の目は本気だったのだ。それは昔、魔道士達から眠れる魔導とまで呼ばれた魔術師の本気の目だった。
「しかし自分もノーヒントで伝説を探せと言っている訳では無いですよ。体が治り次第店に来てください。自分も持っているんですよ。伝説。」
そう言ったあと本好は立ち上がり、スライムと一緒に部屋を出ていった。
「船長。準備がもうしばらくで整います。あとは 店の客次第でございます。」
「そうか。そろそろか。」
船長と呼ばれた男は煌びやかかな服を着て、綺麗な桃色の花を胸元へ飾り、ひとつ錠剤を飲み込むと店へと入っていった。その男が入っていった店。それは
ホストクラブ『バッカニアーズ』という。
ホストというからには男達がお客である女性をもてなすような店である。中は綺麗なエントランスから始まり、小部屋で女性をもてなすようになっているようだ。どの部屋にも甘い香りがする。どの部屋にも彼がつけていたような桃色の花が花瓶と共に置いてある。そしてこの店から出ていく女性達はみんな天国に来たかのような顔をしており、どの女性にも桃色の花の花弁がついた、ストラップのようなものをつけられていた。その小部屋の一角にて、船長と呼ばれた彼が女性をもてなしていた。
ある一室
「やはりおかしい。」
「何かおかしいことでも?No.1」
「おかしいに決まっているだろう。あの店はどの店より安定している。それにもっとおかしいのは女性の冒険者がこの街から出ようとしない。普通、冒険者は色々な街へと動いていく仕事だ。確かにこの街を拠点とする冒険者もいる。しかし、女性の冒険者はこの街へ入ってからほとんど出ていかない。住居を構えた訳でも、結婚した訳でもないのに・・・。」
「それは確かにおかしいねぇ・・・。」
「どう思う?No.3」
「正直あの店に何かあると思うのが普通だろうね。あと、海岸から良くあの店の裏に入っていくってタレコミが入ってるよ。」
「お狐様がそういうならホントなんだろうな・・・。何をするつもりなのかねぇ・・・。あの人は」
「さぁね。小生には分からないよ。」
お狐様と呼ばれた彼女は煙草に火をつける。
そして煙を吐くとこう言った。
「しかし女性だけってのは何かおかしいね。シスターにでも報告して、協力を仰いだ方がいいんじゃないかな?」
「そう・・・だね。あまり気が進まないけど今はそっちの方がいいかもしれないね。」
二人の二人だけの会議は終わったようだ。
その一室の灯りはその後消えた。
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