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戻ってきた夜
5、ラジオ
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「あっちゃーやっちまったぁー。」
「おいおい、これからって時に・・・どうしたよ?」
ステージから降りてきたりくが、そう話しかける。
「いやさ、お前狐谷紫紅さんってラジオ配信者知ってるか?」
「あぁ、街で人気の?カッコイイ声の人よな?」
「そう!俺大ファンでさぁ・・・。」
「で、なんでその人が今出てくるん?」
「俺獣人だから、耳が良くてさ、ちょうど今珍しく昼に配信してる声がラジオから聞こえてさ・・・。」
「あぁー止まっちゃったかぁ・・・。」
「そういうことです。」
「魔王の配下なのにそういうところもあるんだな。ちょっと意外だよ。あ、あと一応勝ったから、聞くけどお前古代文字読めるの?」
「あーそうだよ。俺は古代文字を使っていた時代に産まれて育ったからな。だから、遺代機器が使えるし、古代文字も読める。簡単だろう?」
「なるほどなぁ・・・。じゃあお前は色々な遺代機器を使ったり見てきたりして、色んな武器について知ってるんだよな?」
「まぁそうだな。それがどうしたよ。」
「いやさ、俺の武器試してみてくれない?」
「お前の武器ねぇ・・・でも合体?吸収?してたのはいいと思うよ?今の技術でしか出来ないやろしな。」
「いや、使ってみた感想が欲しい。今俺の武器を使えるのは俺だけだ。これじゃあ鍛冶師なんて自慢でも言えるわけがねぇ。」
「なるほどな。ここには絶対死なないステージがあるしな試すのはもってこいって訳だな。」
「そういうこと」
「じゃあやろうか!お前が武器を作って来たらまた戦ろうぜ!」
それから、数ヶ月の間、らいと、りくは武器を作っては試して、作っては試してを繰り返していた。それはらいにとって、とても楽しい時間だった。しかし、それは昨日までの話だった・・・。
明朝、ライトの街。その細い細い路地にて、
りくが死体で発見された。
それを発見したのは、偶然なのか、必然なのか、奇しくも、らいだった。彼は激しく動揺した。それもそうだ、昨日まで。昨日まで一緒に武器について話していた、彼にとっての最初の友達は誰も知らないところで誰にも知られずに息を引き取った。それを少しでも早く自分が見つけていれば、生きていただろうか。
(俺がもっと、もっとはやく、なぜ見つけられなかった?何が獣人だ。何が人より感覚が鋭いだ。何が魔王の臣下だ。そんなもの・・・たった一人の友達すら救えない。なんにもならない・・・。俺は無力だ・・・。こんなにも力があるのに何もできなかった・・・。)
彼は、彼の心にどす黒い何かが溜まっていくような感覚に襲われた。もうお前の居ないこの街など要らないような。そんな感覚にも誘われた。その時だった・・・
「俺が認めたお前は、そんなにも弱かったか?お前なら大丈夫だろうがよ。前を向け、顔を上げろ。お前は強い、弱気になるな。」
そう、聞こえた気がした。幻聴だろうか、いやそんな訳無いだろう、とてもしっかりと耳に残っているのだから。涙を拭い、教会へと向かう。この綺麗なまま、供養するために。
「すまない。こいつを供養して貰えないだろうか。俺の友達なんだ。」
「らい・・くん。その子は・・・まさかりっくん!?なんで・・・。」
「もうこの世には居ない。俺が見つけた時にはもう・・・。」
「そう・・・なの。でもあなたのその篭手の様なものに宿っているようにも見えるよ。あと、『7つの本』に行きなさい。そしてりっくんのことを伝えて、おそらく本好さんから何かしら聞けると思う。この体は私が責任をもって。」
「ありがとうございます。行ってきます。」
彼は走る。『7つの本』へと、肺が苦しい、しかしそんなことはどうでも良い。この体が壊れようとも、倒れようとも、彼のことを聞くために。教会️から数分、魔導書店『7つの本』へと到着した。時間が惜しく、彼は扉を乱暴に開ける。そして店主、本好を探す。
「どうしたんですか!?らいさん。そんなに息を切らして・・・」
「りくが、死んだ。教会であいつのことについて聞くことができると聞いてきた。すまないが教えてくれるだろうか?」
「そうですか・・・りくさんが・・・。ではコレを持って工房の奥へと向かいなさい。」
本好から投げられたのは、普通のより少し小さめの、鍵だった。それは扉を閉めるものには小さ過ぎるものだった。
「ありがとう・・・ございますッ。」
お礼を言うと彼は工房へと向かった。
工房へと入り、奥の扉を開ける。そこには
ある木箱が施錠されて置いてあった。これだろうとらいは鍵を使い、木箱を開けた。そこには少し赤みがかっている一振りの刀と手紙が置いてあった。銘は「カグツチ」と書いてあった。手紙にはこうかいてあった。
「これをお前が見ていると言うことは俺に何かしらあったんだろう。これは俺でも使いきれなかった俺の最高傑作だ。お前ならこれを服従させることができると思う。いやさせろ。こいつは俺の夜叉ノ王と対になる。夜叉ノ王は・・・」
ここまでは読めるが、あとは文字が滲んでいた。おそらく夜叉ノ王を呼ぶ為のコードが書いてあったのだろうが読めない。らいは「カグツチ」に炎霊ノ王と名付けた。らいは手紙を読み終わったあと、涙が頬を伝っていた。そして、心に決める。彼はそこで、また一人になった。
彼は自分の刃を静かに研ぐ。
親友との仇討ちのために。親友の意志を、託された思いを胸に抱いて。
工房から立ち去ったあとの工房はなぜだか暖かい風に包まれた。
「おいおい、これからって時に・・・どうしたよ?」
ステージから降りてきたりくが、そう話しかける。
「いやさ、お前狐谷紫紅さんってラジオ配信者知ってるか?」
「あぁ、街で人気の?カッコイイ声の人よな?」
「そう!俺大ファンでさぁ・・・。」
「で、なんでその人が今出てくるん?」
「俺獣人だから、耳が良くてさ、ちょうど今珍しく昼に配信してる声がラジオから聞こえてさ・・・。」
「あぁー止まっちゃったかぁ・・・。」
「そういうことです。」
「魔王の配下なのにそういうところもあるんだな。ちょっと意外だよ。あ、あと一応勝ったから、聞くけどお前古代文字読めるの?」
「あーそうだよ。俺は古代文字を使っていた時代に産まれて育ったからな。だから、遺代機器が使えるし、古代文字も読める。簡単だろう?」
「なるほどなぁ・・・。じゃあお前は色々な遺代機器を使ったり見てきたりして、色んな武器について知ってるんだよな?」
「まぁそうだな。それがどうしたよ。」
「いやさ、俺の武器試してみてくれない?」
「お前の武器ねぇ・・・でも合体?吸収?してたのはいいと思うよ?今の技術でしか出来ないやろしな。」
「いや、使ってみた感想が欲しい。今俺の武器を使えるのは俺だけだ。これじゃあ鍛冶師なんて自慢でも言えるわけがねぇ。」
「なるほどな。ここには絶対死なないステージがあるしな試すのはもってこいって訳だな。」
「そういうこと」
「じゃあやろうか!お前が武器を作って来たらまた戦ろうぜ!」
それから、数ヶ月の間、らいと、りくは武器を作っては試して、作っては試してを繰り返していた。それはらいにとって、とても楽しい時間だった。しかし、それは昨日までの話だった・・・。
明朝、ライトの街。その細い細い路地にて、
りくが死体で発見された。
それを発見したのは、偶然なのか、必然なのか、奇しくも、らいだった。彼は激しく動揺した。それもそうだ、昨日まで。昨日まで一緒に武器について話していた、彼にとっての最初の友達は誰も知らないところで誰にも知られずに息を引き取った。それを少しでも早く自分が見つけていれば、生きていただろうか。
(俺がもっと、もっとはやく、なぜ見つけられなかった?何が獣人だ。何が人より感覚が鋭いだ。何が魔王の臣下だ。そんなもの・・・たった一人の友達すら救えない。なんにもならない・・・。俺は無力だ・・・。こんなにも力があるのに何もできなかった・・・。)
彼は、彼の心にどす黒い何かが溜まっていくような感覚に襲われた。もうお前の居ないこの街など要らないような。そんな感覚にも誘われた。その時だった・・・
「俺が認めたお前は、そんなにも弱かったか?お前なら大丈夫だろうがよ。前を向け、顔を上げろ。お前は強い、弱気になるな。」
そう、聞こえた気がした。幻聴だろうか、いやそんな訳無いだろう、とてもしっかりと耳に残っているのだから。涙を拭い、教会へと向かう。この綺麗なまま、供養するために。
「すまない。こいつを供養して貰えないだろうか。俺の友達なんだ。」
「らい・・くん。その子は・・・まさかりっくん!?なんで・・・。」
「もうこの世には居ない。俺が見つけた時にはもう・・・。」
「そう・・・なの。でもあなたのその篭手の様なものに宿っているようにも見えるよ。あと、『7つの本』に行きなさい。そしてりっくんのことを伝えて、おそらく本好さんから何かしら聞けると思う。この体は私が責任をもって。」
「ありがとうございます。行ってきます。」
彼は走る。『7つの本』へと、肺が苦しい、しかしそんなことはどうでも良い。この体が壊れようとも、倒れようとも、彼のことを聞くために。教会️から数分、魔導書店『7つの本』へと到着した。時間が惜しく、彼は扉を乱暴に開ける。そして店主、本好を探す。
「どうしたんですか!?らいさん。そんなに息を切らして・・・」
「りくが、死んだ。教会であいつのことについて聞くことができると聞いてきた。すまないが教えてくれるだろうか?」
「そうですか・・・りくさんが・・・。ではコレを持って工房の奥へと向かいなさい。」
本好から投げられたのは、普通のより少し小さめの、鍵だった。それは扉を閉めるものには小さ過ぎるものだった。
「ありがとう・・・ございますッ。」
お礼を言うと彼は工房へと向かった。
工房へと入り、奥の扉を開ける。そこには
ある木箱が施錠されて置いてあった。これだろうとらいは鍵を使い、木箱を開けた。そこには少し赤みがかっている一振りの刀と手紙が置いてあった。銘は「カグツチ」と書いてあった。手紙にはこうかいてあった。
「これをお前が見ていると言うことは俺に何かしらあったんだろう。これは俺でも使いきれなかった俺の最高傑作だ。お前ならこれを服従させることができると思う。いやさせろ。こいつは俺の夜叉ノ王と対になる。夜叉ノ王は・・・」
ここまでは読めるが、あとは文字が滲んでいた。おそらく夜叉ノ王を呼ぶ為のコードが書いてあったのだろうが読めない。らいは「カグツチ」に炎霊ノ王と名付けた。らいは手紙を読み終わったあと、涙が頬を伝っていた。そして、心に決める。彼はそこで、また一人になった。
彼は自分の刃を静かに研ぐ。
親友との仇討ちのために。親友の意志を、託された思いを胸に抱いて。
工房から立ち去ったあとの工房はなぜだか暖かい風に包まれた。
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