そこは夢の詰め合わせ

咲楽

154、過去を振り返る。未来を掴む

辛く厳しい道のりを僕は進んでいた。
わかっている。この道が険しく辛いことくらい。
それでも僕はこの道を選んだ。
たとえこれから起こることを知ってたとしても。

「時計」

誰よりも早く未来への一歩を進み、誰よりも過去など振り返らず前だけを見る物。
時計の針はずっと未来を指している。
どれだけ嘆いても時計は前だけを見ている。
誰よりも先を刻み続ける。

「でも僕は、人は過去があるから今の自分があると思うんだ。記憶という事ができるから」

彼女はそう言っていた。いつしか彼女に聞いたことがある。何故そんなにも過去を見るのかと。何故未来へそんなにも不安ではなく希望を抱けるのかと。

彼女は答えた。

「未来の自分がどうなっているか憧れるからこそ、未来の自分を作る今を全力で生きたいんだ。そしたら失敗しても、少しは気楽だろう？」

『気楽』と、そう彼女は答えた。
彼女に縁のある言葉ではあるが、彼女はずっと笑っていた。ずっと、誰よりも。

「何か過去に忘れ物をした時さ、失ってそのまま振り向かず進むか、それとも振り返ってきちんと拾ってから進むのか。その考え方が君の人生を楽しくさせるよ？」

彼女の言葉が、スっと胸に突き刺さる。
あぁ・・・こういう言葉が聞きたかったんだ。
あぁ・・・こういう考え方が聞きたかったんだ。
彼女は今日も笑っていた。
屈託のない笑顔だったが、その笑顔の中にある何かを誰も見つけることはできない。
しかし、一人片鱗を知れたのだろう。