157 / 164
けり
151.何にも染まらぬ透明なひととき
しおりを挟む
今日も声は聞こえない。
もう声は届かない。あの人にはもう。
ずっと思い続けてきた。ずっと考えてきた。
ずっとこの深い深い森の中で。
陽の光も当たらない暗い中で。
逢いに来てくれたのはあなただけだったから。
「もう声は・・・聞けないのね・・・」
あの人の優しくて暖かい声。
届かない陽の光のように暖かく、優しい声。
ワタシの中に暖かさを与えてくれたあの人の声はもうワタシには聞こえない。
ワタシがあの人に伝えようとしても霧散して声は消えていく。透明な言葉を放ってしまったように。
「━━━━━━━━━━━━━━」
言えない。何も、言えない。
言いたくないのか、言えないのかワタシには分からないけれど。伝えられない。
言いたいのに。言えない。
一筋の涙がすっと頬を伝う。
その時思い出したのはあの人と遠くから見た夕焼けの景色。あんなにも美しく綺麗だった。でもワタシは何もあの人に伝えられてない。好きだと言うことさえも。
自分の感情が「好き」だとわかった時にはあの人はもう星になっていた。空に美しくきらめくあの星のどれがあの人かなんて分からないけれど。
「きっとあなたは星になっても誰かを救っているのでしょう?」
そう信じて。彼女は星に向かって呟くのだ。
「大好きでした。親愛なる貴方へ」
緑の目を細め、羽を揺らした彼女はそういうと俯いた。その涙を星に見せないように。
親愛なる貴方へ
誰かがきっとこの話を語り継いでくれる事を願ってこの話を残します。
ワタシが言えなかった言葉を多くの人に言って貰って貴方に届くように。
もう声は届かない。あの人にはもう。
ずっと思い続けてきた。ずっと考えてきた。
ずっとこの深い深い森の中で。
陽の光も当たらない暗い中で。
逢いに来てくれたのはあなただけだったから。
「もう声は・・・聞けないのね・・・」
あの人の優しくて暖かい声。
届かない陽の光のように暖かく、優しい声。
ワタシの中に暖かさを与えてくれたあの人の声はもうワタシには聞こえない。
ワタシがあの人に伝えようとしても霧散して声は消えていく。透明な言葉を放ってしまったように。
「━━━━━━━━━━━━━━」
言えない。何も、言えない。
言いたくないのか、言えないのかワタシには分からないけれど。伝えられない。
言いたいのに。言えない。
一筋の涙がすっと頬を伝う。
その時思い出したのはあの人と遠くから見た夕焼けの景色。あんなにも美しく綺麗だった。でもワタシは何もあの人に伝えられてない。好きだと言うことさえも。
自分の感情が「好き」だとわかった時にはあの人はもう星になっていた。空に美しくきらめくあの星のどれがあの人かなんて分からないけれど。
「きっとあなたは星になっても誰かを救っているのでしょう?」
そう信じて。彼女は星に向かって呟くのだ。
「大好きでした。親愛なる貴方へ」
緑の目を細め、羽を揺らした彼女はそういうと俯いた。その涙を星に見せないように。
親愛なる貴方へ
誰かがきっとこの話を語り継いでくれる事を願ってこの話を残します。
ワタシが言えなかった言葉を多くの人に言って貰って貴方に届くように。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」
異世界で悪霊となった俺、チート能力欲しさに神様のミッションを開始する
眠眠
ファンタジー
トラックに跳ねられ異世界に飛ばされた主人公。気がつくと、彼は身体のない意識だけの存在に成り果てていた。なぜこのようなことになってしまったのか。謎を探るべく異世界を彷徨う主人公の前に死神さんが現れた。死神さんは主人公に今の状態が異世界転生(仮)であることを告げ、とあるミッションの達成と引き換えに正しい転生と3つのチート能力の贈呈を約束する。そのミッションとは様々な異世界を巡るもので……。
身体を失った主人公が残った心すらボッキボキに折られながらも頑張って転生を目指す物語です。
なお、その過程でどんどん主人公の変態レベルが上がっていくようです。
第1章は「働かなくてもいい世界」。労働不要の世界で、不死の住人達と友達になります。
第2章は「恋のキューピッド大作戦」。世界を救うため、とある二人の恋仲を成就させます。
6〜8つの世界を巡る予定です。
婚約破棄ですね。これでざまぁが出来るのね
いくみ
ファンタジー
パトリシアは卒業パーティーで婚約者の王子から婚約破棄を言い渡される。
しかし、これは、本人が待ちに待った結果である。さぁこれからどうやって私の13年を返して貰いましょうか。
覚悟して下さいませ王子様!
転生者嘗めないで下さいね。
追記
すみません短編予定でしたが、長くなりそうなので長編に変更させて頂きます。
モフモフも、追加させて頂きます。
よろしくお願いいたします。
カクヨム様でも連載を始めました。
悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!
ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。
婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。
「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」
「「「は?」」」
「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」
前代未聞の出来事。
王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。
これでハッピーエンド。
一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。
その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。
対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。
タイトル変更しました。
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?
伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します
小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。
そして、田舎の町から王都へ向かいます
登場人物の名前と色
グラン デディーリエ(義母の名字)
8才
若草色の髪 ブルーグリーンの目
アルフ 実父
アダマス 母
エンジュ ミライト
13才 グランの義理姉
桃色の髪 ブルーの瞳
ユーディア ミライト
17才 グランの義理姉
濃い赤紫の髪 ブルーの瞳
コンティ ミライト
7才 グランの義理の弟
フォンシル コンドーラル ベージュ
11才皇太子
ピーター サイマルト
近衛兵 皇太子付き
アダマゼイン 魔王
目が透明
ガーゼル 魔王の側近 女の子
ジャスパー
フロー 食堂宿の人
宝石の名前関係をもじってます。
色とかもあわせて。
聖女として豊穣スキルが備わっていたけど、伯爵に婚約破棄をされました~公爵様に救済され農地開拓を致します~
安奈
ファンタジー
「豊穣スキル」で農地を豊かにし、新鮮な農作物の収穫を可能にしていたニーア。
彼女は結婚前に、肉体関係を求められた婚約者である伯爵を拒否したという理由で婚約破棄をされてしまう。
豊穣の聖女と呼ばれていた彼女は、平民の出ではあったが領主である伯爵との婚約を誇りに思っていただけに非常に悲しんだ。
だがニーアは、幼馴染であり現在では公爵にまで上り詰めたラインハルトに求婚され、彼と共に広大な農地開拓に勤しむのだった。
婚約破棄をし、自らの領地から事実上の追放をした伯爵は彼女のスキルの恩恵が、今までどれだけの効力を得ていたのか痛感することになるが、全ては後の祭りで……。
【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?
仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。
そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。
「出来の悪い妹で恥ずかしい」
「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」
そう言ってましたよね?
ある日、聖王国に神のお告げがあった。
この世界のどこかに聖女が誕生していたと。
「うちの娘のどちらかに違いない」
喜ぶ両親と姉妹。
しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。
因果応報なお話(笑)
今回は、一人称です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる