そこは夢の詰め合わせ

らい

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狐谷

148.薬指は永遠に

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雨が降る。その雨が血に濡れた身体を洗い流す。そして手の中にいる彼女の温もりが抜け落ちていく。

辛い。悲しい。ただそれだけが、彼女の中に募る。自分と一緒に居てくれた数少ない彼女が自分のせいで殺された。自分が異形の者だから。自分が人ではないから。

「なんで・・・なんでなんだ・・・」

彼女は妖怪だから、この恋心は『偽物』だと、人々は言う。それでも一人の女性が自分を愛してくれたことに変わりはない。

「お前の心は人の心では無い」

彼女と付き合っている時も、それ以上になった時も、周りの人々はそう言ってきた。彼女はその度に彼らに反論してくれた。
どうしようもなく、どうしても妖怪という存在が恐ろしい人々はここから自分消したいらしい。

『あの妖怪をこの街から消すにはあの人間を殺そう』

そう、なってしまった。
自分が居ない間に彼女が彼らの手にかかってしまった。彼女にとめられた自分の力を使ってしまい彼らを蹂躙した。

「ごめん・・・ね・・・」

血に濡れた手で彼女を抱き上げる。
家からそっと出た彼女は女性の身体を深い深い森の中へ入る。

数刻の時間、雨が止んだ頃。
妖怪はまた一人となった。
妖怪は泣いていた。憎しみはあれど復讐の心は無かった。

何故なのか?それは妖怪が愛した彼女の左手の薬指、指輪があった場所がちぎられていた。そしてそれは彼女が大切に握っていた。

。力強く、そして弱々しく握っていた。
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