148 / 164
咲楽
143.誰が貴女を
しおりを挟む
「誰が貴女なんか愛すものか。」
そう言われてあの世界からこちらの世界に落とされた。それから彼女は心を閉ざすように、人からの目線を気にするようになった。
『誰がお前なんか愛すものか』
『誰が貴女なんかと仲良くするか』
『誰が貴様なんか好きになるか』
誰が、誰が、誰が。ずっとそう言われて生きてきた。この世界ではそう言ってくる人はいなかった。
彼女は自分を変える努力をした。
髪色を暗闇のような黒から輝くような明るい紫にした。身なりも何もかも美しく綺麗に着飾った。自分を虚偽で、嘘の美しさで固めた。
誰もがそれを褒めた。美しく綺麗にした彼女の外側を褒めた。誰も中身を褒めることはなかった。
「優しいね。君の眼は。」
そう初めて言ってくれた人もいた。
初めてだった。それから少しずつ、彼女の外側だけでなく中身を褒める人も出てきた。時には厳しい言葉をかける人もいたけれど。
「ありがとう・・・!」
中身を見てくれた人がいた事に。
それを正そうとしてくれた人がいた事に。
彼女は嬉しくて、嬉しくて。
透明な雫が頬を伝った。
誰もが彼女を愛した。
誰もが貴女を愛した。
彼女はそれを知れたことに。
「ありがとう。僕を愛してくれて」
そう言って透明な雫が頬を伝った。
彼女の眼は死んだ魚のような、ハイライトのない暗い眼だった。
そんな彼女の眼から流れた涙は悲しく静かな涙だった。
そう言われてあの世界からこちらの世界に落とされた。それから彼女は心を閉ざすように、人からの目線を気にするようになった。
『誰がお前なんか愛すものか』
『誰が貴女なんかと仲良くするか』
『誰が貴様なんか好きになるか』
誰が、誰が、誰が。ずっとそう言われて生きてきた。この世界ではそう言ってくる人はいなかった。
彼女は自分を変える努力をした。
髪色を暗闇のような黒から輝くような明るい紫にした。身なりも何もかも美しく綺麗に着飾った。自分を虚偽で、嘘の美しさで固めた。
誰もがそれを褒めた。美しく綺麗にした彼女の外側を褒めた。誰も中身を褒めることはなかった。
「優しいね。君の眼は。」
そう初めて言ってくれた人もいた。
初めてだった。それから少しずつ、彼女の外側だけでなく中身を褒める人も出てきた。時には厳しい言葉をかける人もいたけれど。
「ありがとう・・・!」
中身を見てくれた人がいた事に。
それを正そうとしてくれた人がいた事に。
彼女は嬉しくて、嬉しくて。
透明な雫が頬を伝った。
誰もが彼女を愛した。
誰もが貴女を愛した。
彼女はそれを知れたことに。
「ありがとう。僕を愛してくれて」
そう言って透明な雫が頬を伝った。
彼女の眼は死んだ魚のような、ハイライトのない暗い眼だった。
そんな彼女の眼から流れた涙は悲しく静かな涙だった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ちょっとハッとする話
狼少年
ホラー
人の心理をくすぐるちょっとだけハッとする話です。色々な所でちょこちょこ繋がってる所もありますが。基本何処から読んでも大丈夫です。2.3分で読める話ばかりです。ネタが浮かぶ限り更新したす。一話完結です。百話を目指し書いていきます。
異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
【完結】不協和音を奏で続ける二人の関係
つくも茄子
ファンタジー
留学から戻られた王太子からの突然の婚約破棄宣言をされた公爵令嬢。王太子は婚約者の悪事を告発する始末。賄賂?不正?一体何のことなのか周囲も理解できずに途方にくれる。冤罪だと静かに諭す公爵令嬢と激昂する王太子。相反する二人の仲は実は出会った当初からのものだった。王弟を父に帝国皇女を母に持つ血統書付きの公爵令嬢と成り上がりの側妃を母に持つ王太子。貴族然とした計算高く浪費家の婚約者と嫌悪する王太子は公爵令嬢の価値を理解できなかった。それは八年前も今も同じ。二人は互いに理解できない。何故そうなってしまったのか。婚約が白紙となった時、どのような結末がまっているのかは誰にも分からない。
創作BL SS詰め合わせ
とぶまえ
BL
倫理観ゆるゆるな創作BLのSSをまとめていきます
キャラはずっと同じ二人ですがパラレル世界の話なので話ごとに付き合ってたり付き合ってなかったりします
◆キャラクター
・スラッジ
一人称 僕。自分のことをかわいくて格好よくて美人だと思っている。性格が良くない。
・パラスーアサイド
一人称 俺。スラッジの事を非常識扱いするけど本人も大概非常識。
こうして少女は最強となった
松本鈴歌
ファンタジー
何やかんやあって母親に家を追い出されたマリア。そんな彼女があてもなく歩いているところに声をかけたのは冒険者の男、ウーノだった。
マリアを放っておけなかったウーノは一晩の宿と食事を与える。
翌日、ウーノはマリアを連れてマリアの母親のもとを訪れるが、返ってきた言葉は拒絶。行き場を失くしたマリアは昨夜のうちに約束を取り付けていた魔術師、ローザに住み込みで約1年、魔術の基礎と礼儀作法を習うこととなる。
そして10歳を迎えた年、貴族だらけの王立魔術学園(通称学園)に(授業料、その他免除で)入学することとなる。
※落ちしか決まっていない、半分行き当たりばったりの話です。所々矛盾が出ているかもしれませんが、気づき次第修正を入れます。
※一話1000字程度と短いのでお気軽にお読み下さい。
※小説家になろうの方でも掲載しています。そちらはこちらの数話を1話に纏めています。
※しばらくは不定期更新にはなりますが、更新再開しました(2019.3.18)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる