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そぼろ
138.深紅の瞳
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昏い肌。焼けたとかそういうの次元ではないくらいに昏い色。人の形をしてるが人の身体にはない尻尾。
明るく白い月に照らされ、それは姿をこの世に晒す。おどろおどろしい。紅い髪は深紅のインクを垂らしたように紅く。闇に溶け込むような肌。光を吸収するような角と尻尾。
この世のものとは思えない。
あぁ、あれは人では無い。この世に存在してはいけない物だ。この世にあってはならないものだ。
「綺麗だ・・・!」
何者かがそのしぃんとした緊張を破ったかのように呟いた。それが、その一言がその場にいた人類を正気に戻すのに充分だった。
「な、なんだよあれ・・・」
「きもちわるいよ・・・」
口々にそう悲鳴を上げながら逃げ惑う人々にそれはようやく視線を向けた。
「あぁ・・・!」
僕は心底見とれていた。美しい紅い瞳に。
見とれている間に、逃げ惑う人々は深紅の液体を身体中から吹き出して倒れていた。
「なぜ・・・にげない?」
拙いが喋った。人の言葉を理解しているかのような。高度な知能なのだろう。僕は言った。
「その瞳が綺麗だから・・・!最後の瞬間まで見ていたいと思ったから・・・!」
僕はそう言った。伝わったのか僕には分からない。しかし確かにそれは言葉を聞いて笑ったのだ。眼を、紅い瞳が細めて。
━━━━━━━━━━━━━━━僕を殺した。
明るく白い月に照らされ、それは姿をこの世に晒す。おどろおどろしい。紅い髪は深紅のインクを垂らしたように紅く。闇に溶け込むような肌。光を吸収するような角と尻尾。
この世のものとは思えない。
あぁ、あれは人では無い。この世に存在してはいけない物だ。この世にあってはならないものだ。
「綺麗だ・・・!」
何者かがそのしぃんとした緊張を破ったかのように呟いた。それが、その一言がその場にいた人類を正気に戻すのに充分だった。
「な、なんだよあれ・・・」
「きもちわるいよ・・・」
口々にそう悲鳴を上げながら逃げ惑う人々にそれはようやく視線を向けた。
「あぁ・・・!」
僕は心底見とれていた。美しい紅い瞳に。
見とれている間に、逃げ惑う人々は深紅の液体を身体中から吹き出して倒れていた。
「なぜ・・・にげない?」
拙いが喋った。人の言葉を理解しているかのような。高度な知能なのだろう。僕は言った。
「その瞳が綺麗だから・・・!最後の瞬間まで見ていたいと思ったから・・・!」
僕はそう言った。伝わったのか僕には分からない。しかし確かにそれは言葉を聞いて笑ったのだ。眼を、紅い瞳が細めて。
━━━━━━━━━━━━━━━僕を殺した。
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