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狐谷
57.雨に濡れた宴会話
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暗く、厚い雲に覆われた日。
ある森の社では酒盛りが行われていた。
居るものはほぼ異形。尻尾がある。耳がある。鱗がある。牙がある。人ではない存在達の宴会だったらしい。
「今日も聞かせて馬鹿話!」
「今日も聞いてけホラ話!」
「無駄な話が楽しいのさ!」
異形がそうやって話に華を咲かせている時、社の主である九尾は社の屋根の上で煙草を吸っていたそうだ。
誰かが主に声をかけた。
「飲まないんですか?お話聞かないんですか?」
主はその低い声でこう言ったそうだ。
「馬鹿な話は寝る時に聞くくらいが丁度いいのさ。そういう話は大抵、心に残らないのだから」
中身も、身も蓋も、意味も。
嘘も、真実も。
全てが無い。
そんな話は寝る時で十分。
主は持っていた杯で酒を飲んだ。
その杯を掲げた時、雨がぽつぽつ降り出した。雨粒は酒と混じるが透明なまま。
代わりに雨粒で煙草の火は消えていく。
煙草を焦がしていた熱が雨粒により冷えてしまったようだ。
「さて、じゃあ小生も飲もうかな」
煙草の火が完全に消えた事を確認し、そう呟いた。最後の熱により焦げた煙草から上がる煙を雨粒が消し去る。
さぁ酔い潰れよう。さぁ笑い荒らそう。
さぁこの世を呪おう。さぁ遊ぼう。
これが妖怪たちの宴である。
さて、今語ったのは与太話。
本当かどうかも分からない。
今宵の雲には似つかない。
されどこの話、どこから来たのか。
分からないのが御伽噺。
ある森の社では酒盛りが行われていた。
居るものはほぼ異形。尻尾がある。耳がある。鱗がある。牙がある。人ではない存在達の宴会だったらしい。
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誰かが主に声をかけた。
「飲まないんですか?お話聞かないんですか?」
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「馬鹿な話は寝る時に聞くくらいが丁度いいのさ。そういう話は大抵、心に残らないのだから」
中身も、身も蓋も、意味も。
嘘も、真実も。
全てが無い。
そんな話は寝る時で十分。
主は持っていた杯で酒を飲んだ。
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代わりに雨粒で煙草の火は消えていく。
煙草を焦がしていた熱が雨粒により冷えてしまったようだ。
「さて、じゃあ小生も飲もうかな」
煙草の火が完全に消えた事を確認し、そう呟いた。最後の熱により焦げた煙草から上がる煙を雨粒が消し去る。
さぁ酔い潰れよう。さぁ笑い荒らそう。
さぁこの世を呪おう。さぁ遊ぼう。
これが妖怪たちの宴である。
さて、今語ったのは与太話。
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