そこは夢の詰め合わせ

らい

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咲楽

125.桜の下

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「ごめんよ・・・」

低い声が誰かを押さえている。大きな身体で、一人を押さえつけているのが居た。

「僕がこの世から消えた時私の体は桜の下に埋めて」

「それだけは守ろうじゃないか」

鋭く伸びた爪は彼女の喉を切り裂いた。
真っ赤な鮮血が美しく飛沫をあげる。
彼女の身体は冷たくなっていく。

もう何も話さない。もう何も見ることは出来ない。何も聞くことは出来ない。彼女の温もりを感じることすら出来ない。

言われた通り彼女の身体は土に還され、その上に桜の木を植えた。

「綺麗に咲くかな・・・」

埋めた人物は一瞬にして消えた。
誰にもその姿を見られないように。

桜は尋常ではない速度で育った。
次の春。その桜はとても良い色の花を咲かせた。とても紅く、少し恐ろしい色だった。

「自分が殺した人物の桜は美しいと感じれるのか・・・?少し分からないな」

大きなそれは思い出す。
紫の髪が赤黒くなる所を。
優しい顔が固まっていく所を。
握っていた手が力を無くして落ちる感覚も。

楽しいねぇ。とても楽しかった。
美しく咲いてくれ。お前も咲かせるのは楽しいだろう。なぁ?咲楽さらく
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