そこは夢の詰め合わせ

らい

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ゆうひ

114.別れと決断

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病室の窓から外を眺めている男が居た。
必ずその男がみていた方向には大きな木が立っており、多くの人がそこに集まっていた。

「あそこに行かれても大丈夫なのですよ?」

看護婦が男にそう問いかける。
しかし男は縦に首を振ることは無かった。
そしてうわ言のように言うのだ。

「私があそこに行く時、それはこの命が消える時だろう」

看護婦も担当医もそれをさっぱり分からないと言った顔をしていたが一人、同じ病室の隣に居た女性だけがそれを聞いて笑っていた。

ある日、木の上に猫が居た。
灰色のどこにでも居るような猫だった。
それを遠目から見た男は木の下へと急いだ。

「あぁようやく外に出る気になったんだ」

誰もがそう思った。しかし男は言っていた。
あの木へ行く時は、自分が死ぬ時だろうと。
そして彼は木の下へと行ったのだ。

誰にも見向きもしなかった猫が、彼にだけ身体を許した。大きく鳴いて、彼の膝へと乗った。

同じ病室の女性はその猫を見ながら言った。

「それが最後でも良いのかい?」

彼女は病気も怪我もしていないのにその病室に居た。しかし誰もそれを怪しむこともなかった。そんな女性が病室から消えた。

その日、心地よい木陰の中で男は息を引き取った。その腕の中で灰色の猫も死んでいた。

「今までお疲れ様。また会う日まで」

オレンジ色の服に着替え、誰にも見つからないように消えた彼女。
それが宵乃ゆうひという人物だった。

猫にまつわる都市伝説
「自分が死ぬ前に姿を現す」

さて皆様。猫がもし消えていった後で再び姿を現した時、もしかしたらその猫の死期は近いのかも知れません。

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