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狐谷
55.夜叉
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毎日、物心着いた時からずっとお稲荷様にお参りをしていた。1ヶ月に1回油揚げを備えていた。次の日には無かったからきっと食べてもらっているんだろうと思いながらお参りをする。それがずっと日課だった。
その日はお参りが遅くなり夜中に参っていた時のこと。悪寒を感じて飛び退いた時、そこには『影』が居た。
『影』はお参りしていた自分を殺そうとしたのか分からないがその腕で狙ってきた。掴まれたら何かダメなようで逃げた。『影』は追いかけてくる。
その時だった。
「これは小生の物だ。お前らに渡すものでは無い。さっさと去れ。」
160cmある自分より高い背の何かが自分の後ろに立っていた。感覚的には170cm程あるおそらく女性のような声。しかしその声は低く、性別は分からなかった。
「聞こえなかったのか?『影』よ。去れと言っているのだ。ここは小生の領域だ。去れ」
そこでこの守ってくれている何かがお稲荷様であるかもしれないという憶測が立った。チラッといつもお参りをする場所にあったはずのお狐様の像は確かに消えていた。
視線を『影』に戻すとそこには何もいなかった。消えたのだろう。
「全く、人の物に手を出すとは・・・」
「あ、ありがとうございます。貴方はお狐様ですよね・・・?」
振り返って深く礼をして顔を上げて固まった。そこには九つの尾を持ち、女性寄りの顔をした人が立っていた。
「そうだね。君たち人間からすれば・・・小生はお狐様ということになるだろうね・・・そうそう、いつも油揚げありがとう。これからもよろしくね?」
それだけ言うとお狐様は像へと戻った。
あとから調べて分かったことだが、お狐様は『夜叉』と呼ばれる死者の心臓を喰らうものと一緒に祀られているとか。
あの『影』の正体は分からないがきっと守ってくれたのだろう。
稲荷神社の奥、お狐様の像の周りに狐火が立っていた事は誰も知らない。知れるとすれば守られたあの人だけだろう。
その日はお参りが遅くなり夜中に参っていた時のこと。悪寒を感じて飛び退いた時、そこには『影』が居た。
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その時だった。
「これは小生の物だ。お前らに渡すものでは無い。さっさと去れ。」
160cmある自分より高い背の何かが自分の後ろに立っていた。感覚的には170cm程あるおそらく女性のような声。しかしその声は低く、性別は分からなかった。
「聞こえなかったのか?『影』よ。去れと言っているのだ。ここは小生の領域だ。去れ」
そこでこの守ってくれている何かがお稲荷様であるかもしれないという憶測が立った。チラッといつもお参りをする場所にあったはずのお狐様の像は確かに消えていた。
視線を『影』に戻すとそこには何もいなかった。消えたのだろう。
「全く、人の物に手を出すとは・・・」
「あ、ありがとうございます。貴方はお狐様ですよね・・・?」
振り返って深く礼をして顔を上げて固まった。そこには九つの尾を持ち、女性寄りの顔をした人が立っていた。
「そうだね。君たち人間からすれば・・・小生はお狐様ということになるだろうね・・・そうそう、いつも油揚げありがとう。これからもよろしくね?」
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