135 / 164
結月
118.月夜と陽
しおりを挟む
夕暮れ時。皆が夕暮れを見ながら、夕暮れに向かいながら帰ってる時、ただ一人だけ夕暮れに背を向けている人が居た。俯いて太陽ではなく、月へ。明るいではなく、暗い方へ。
彼が初めて顔を上げた時、そこは夜だった。
星々と月が輝き、辺りは闇が来ている。
彼が走り出したのはすぐ後のことだった。
「俺の何が悪かったんだろうな・・・」
彼が走るのを辞めたのは、彼がもう一度ソラを見たのは、丘で寝転がった時だった。
「こんな夜更けにどうしたんです?」
声が聞こえた。女性の声だ。しかし彼は何故か声の出処を探そうとはせずに独り言のようにポツポツと話していく。
「それはそれは・・・おつかれだったでしょう」
彼女の声を聞いている間に眠くなったのかもう一度目が覚めた時、そこには明るくなる空があった。そして彼の近くに、1匹の猫がいた。珍しい色をした猫。
「見守ってくれたのか・・・俺は護られてばっかりだなぁ・・・」
丘の上で手を広げ、晴れ晴れとした表情で寝転がった彼が猫をもう一度見ようと視線を落とした時、そこには何もいなかった。
「貴方ならもう大丈夫」
そう聞こえた気がした。
彼が朝日に向かって走っていったのを確認した後、奥の木の裏から彼女が出てきた。
誰も見ていなかったが、誰も彼女を知らないが、彼女が彼に笑いかけた笑顔はきっと一番美しいものだっただろう。
彼が初めて顔を上げた時、そこは夜だった。
星々と月が輝き、辺りは闇が来ている。
彼が走り出したのはすぐ後のことだった。
「俺の何が悪かったんだろうな・・・」
彼が走るのを辞めたのは、彼がもう一度ソラを見たのは、丘で寝転がった時だった。
「こんな夜更けにどうしたんです?」
声が聞こえた。女性の声だ。しかし彼は何故か声の出処を探そうとはせずに独り言のようにポツポツと話していく。
「それはそれは・・・おつかれだったでしょう」
彼女の声を聞いている間に眠くなったのかもう一度目が覚めた時、そこには明るくなる空があった。そして彼の近くに、1匹の猫がいた。珍しい色をした猫。
「見守ってくれたのか・・・俺は護られてばっかりだなぁ・・・」
丘の上で手を広げ、晴れ晴れとした表情で寝転がった彼が猫をもう一度見ようと視線を落とした時、そこには何もいなかった。
「貴方ならもう大丈夫」
そう聞こえた気がした。
彼が朝日に向かって走っていったのを確認した後、奥の木の裏から彼女が出てきた。
誰も見ていなかったが、誰も彼女を知らないが、彼女が彼に笑いかけた笑顔はきっと一番美しいものだっただろう。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小ネタ集
狭雲月
恋愛
短いSSともいえるような言えないようなシチュ小ネタ。あっさり読みたい人向け。たまに男性向けも入ってます。色々入っているのでご注意を。注:某所に投下したものを改稿したまとめです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
絶滅危惧種のパパになりました………~保護して繁殖しようと思います~
ブラックベリィ
ファンタジー
ここでは無いどこかの世界の夢を見る。起きているのか?眠っているのか?………気が付いたら、見知らぬ森の中。何かに導かれた先には、大きな卵が………。そこから孵化した子供と、異世界を旅します。卵から孵った子は絶滅危惧種のようです。
タイトルを変更したモノです。加筆修正してサクサクと、公開していたところまで行きたいと思います。
サリーの日報
中綿げにを
キャラ文芸
私は見つけてしまった。
自身が唯一心を許せる侍女、サリーの手帳を。
「日報代わり」と題された手帳には、日々の細々とした記録が綴られていた。
侍女長に提出するものであれば、わざわざ手帳に書く必要はない。
つまり、本来そんなものは必要ない。
それでも、サリーは敢えてその日々を記していた。
誰にも見せることのない、しかしいつか誰かに見られても問題ないようにと、その手記は記載されていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる