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狐谷
52.お狐様と男
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黒い何かが目の前を通る。
そして彼女の前に現れる。
「今日も来たのかい?」
扉の向こう側から声がする。その声は少し低めの声。ずっと聞いている低い声。それを聞きに今日も同じ時間に彼はそこを訪れる。
「今日はお狐様とあって一年だからね。」
木々の間から見える星空を見ながら、彼は扉の向こうにいるお狐様へ語る。
「去年のこの日、ふらっと立ち寄った近所の神社でお参りをした時、あなたの声を聞いて、妖怪に初めて会いましたよ。」
彼は苦笑するように笑う。扉の向こうにいる彼の顔は、お狐様には見えている。しかし彼からは見えていない。九つの尻尾を持つ狐だと打ち明けた時、この男はどんな顔をするのだろう。恐れるだろうか?それとも目を輝かせるだろうか?
「・・・ふふっ」
「どうしました?」
彼女は少し笑いを漏らしてしまった。彼にはなぜ彼女が笑ったのか理解が出来なかった。
「いや、なんでもないよ。大丈夫」
彼女はこの事は話さないと決めているのだ。彼と話したいから、彼の声は、話は楽しいと思えるから。彼女は自分のことを話さない。
「ありがとうございます。そして、ごめんない。お狐様」
彼女はいきなりお礼を言われ驚いた。
謝られたのにも驚いてしまった。
「どうした?いきなり」
彼は座っていた扉の前から移動して石畳の上に立つ。すると彼女は目を見開いた。
「僕も妖怪なんです。」
先程までいた男はいなくなり、その代わり目の前に居たのは『烏天狗』と呼ばれる妖怪だった。
「お久しぶりです。お狐様。」
彼女はもう隠すものはないと、扉を開け放った。
そして彼女の前に現れる。
「今日も来たのかい?」
扉の向こう側から声がする。その声は少し低めの声。ずっと聞いている低い声。それを聞きに今日も同じ時間に彼はそこを訪れる。
「今日はお狐様とあって一年だからね。」
木々の間から見える星空を見ながら、彼は扉の向こうにいるお狐様へ語る。
「去年のこの日、ふらっと立ち寄った近所の神社でお参りをした時、あなたの声を聞いて、妖怪に初めて会いましたよ。」
彼は苦笑するように笑う。扉の向こうにいる彼の顔は、お狐様には見えている。しかし彼からは見えていない。九つの尻尾を持つ狐だと打ち明けた時、この男はどんな顔をするのだろう。恐れるだろうか?それとも目を輝かせるだろうか?
「・・・ふふっ」
「どうしました?」
彼女は少し笑いを漏らしてしまった。彼にはなぜ彼女が笑ったのか理解が出来なかった。
「いや、なんでもないよ。大丈夫」
彼女はこの事は話さないと決めているのだ。彼と話したいから、彼の声は、話は楽しいと思えるから。彼女は自分のことを話さない。
「ありがとうございます。そして、ごめんない。お狐様」
彼女はいきなりお礼を言われ驚いた。
謝られたのにも驚いてしまった。
「どうした?いきなり」
彼は座っていた扉の前から移動して石畳の上に立つ。すると彼女は目を見開いた。
「僕も妖怪なんです。」
先程までいた男はいなくなり、その代わり目の前に居たのは『烏天狗』と呼ばれる妖怪だった。
「お久しぶりです。お狐様。」
彼女はもう隠すものはないと、扉を開け放った。
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