そこは夢の詰め合わせ

紫苑

60.東の空を見上げる

「やぁ、久しぶりだね。」

僕は彼女を見る。彼女は何も変わりない様子だった。僕は少し大人になった。成長する僕は何も変わりない彼女を見て少し辛い気持ちを思う。彼女はそれを察したように答える。

「僕はこれでも大人になったの！」

彼女は少し怒ったような、しかし笑顔であった。彼女は僕の手を引く。僕は彼女に引っ張られるようにして今日も走る。

「僕は君と一緒だ。ずっとずっと・・・」

彼女はそういうと照れ隠しのように走る速さを速くする。髪の間から見えた彼女の顔はとても笑顔だった。そして頬が少し赤かった。

「照れてるんだね。ありがとう。」

僕はあえて空気を読まなかった。
彼女はこちらを見るなり、顔を真っ赤にしていたが、お礼を言われてまんざらでもなかった様だった。

「なんで言うの！そういうのは言わないんじゃないの！空気読んでよ！」

彼女が怒る。でも僕は笑う。彼女もつられて笑う。この日は彼女と沢山遊んで、その日を終えた。彼女が次の日、僕の前に現れることはなかった。しかし、僕は知っている。彼女はずっと東の空に彼女が居ることを。

そんな彼女の名前は『東雲 紫苑』である。