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呀倭
64.神隠し
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それは一瞬の出来事だった。
僕はこの日、いつものように家の畑仕事の手伝いをしていた。空を見上げ、お天道様の輝きを受けながら作業する畑仕事はとても僕は好きである。この日、少し変わったことといえば、少し長い時間畑にいた事、畑を二つほど終わらせたこと。これくらいである。なのになぜあの時、僕はこんな不可解な事件に巻き込まれてしまったのだろうか?
「ここは・・・どこ・・・?」
僕は畑仕事をした後、いつも帰る道の途中にあるはずのない鳥居が立っていた。それに引き寄せられるように僕は鳥居の近くまで歩いた。僕はその鳥居をくぐっては行けない気がした。なにかこの場所に戻って来れない気がしたからだ。それでも僕は手を伸ばした。
手を伸ばした瞬間、鳥居の先になにか別の世界が見えた気がした。僕の視界はそこで途切れてしまった。
「おーい。おーい。起きてー!」
誰かの声が聞こえる。目が覚めた時、最初に見たのは澄み切った青空だった。そして次に目に入ってきたのは女性の顔だった。優しそうな顔つきで、横に白い虎を連れている。虎を連れていることには驚いたが、襲ってこないところを見ると手懐けられていることがわかる。
「身体、痛いところとかない?」
「いえ、大丈夫・・・です・・・」
僕はそう答えた。僕はここがどこなのかを彼女に聞いた。
「ここは・・・どこなんですか?」
彼女は少し難しそうな顔をした。
そして彼女はこう答えた。
「ここは平行世界と呼ばれる世界。全ての神社の鳥居をくぐると時々こちらの世界に来てしまう人が居るんだ。君もその一人だろう」
「へいこう・・・せかい・・・」
言葉が出てこなかった。
僕は鳥居をくぐっただけなのに、確かにあの鳥居は何かが違った。何か、悪寒のようなものが走った。僕は早くここから動かなきゃいけない気がした。
「君の思うことは正しい。平行世界は全く同じ事があちらの世界でも起こる。つまり、今こちらに君が来てしまったということは、あちらの世界に平行世界の君が飛んで行ってしまったのだ。急いでここから出なければ君は一生ここで暮らすことになるよ。」
つまり僕がこちらに来ると、こちらにいたはずの僕が僕の世界に行ってしまったということである。僕は彼女にどうしたら良いのかを聞いた。
「全く同じ鳥居を探すのが一番速い。君が来る原因となった鳥居を探すんだ。良いね?」
僕は言われた通りに、自分が来た鳥居と同じものを探した。綺麗な赤色で塗装されており、何か白いしめ縄だったのは覚えている。僕はこの世界に至る所にある鳥居を探した。しかしどれも違う。何か違和感を感じる。どれも僕が来た鳥居では無い。時間は刻一刻と近づいてくる。僕はもう諦めようとしていた。そこに彼女が来た。
「見つかったかい?そうか・・・見つからなかったか・・・ここは平行世界、あっちの世界では出来ないことも、この世界ではできてしまう。それでも君はあちらに戻りたいのかい?」
彼女がそう聞く。僕は当たり前だと思う。
僕が住んでいたのはあちらの世界である。この世界で僕が生きていける道理はない。正直住み慣れないとは思う。そして、家族に会いたい。それだけで僕は帰りたいと思うのである。そしてある考えに至った。
「この世界がなんでもできる世界なら、なぜこの世界には人が居ないんですか?鳥居しかない。じゃあなぜ、人が居ないのに鳥居だけあるんだ・・・?」
そう、彼が鳥居を探した時に感じた違和感とは、人が彼女を除いて誰も居なかったのである。そして僕はある考えに至る。
「僕が通ってきた鳥居、それはあなたじゃないんですか?この世界にただ一人動いている鳥居。それは僕が来た鳥居だ。」
彼女の顔が恍惚に染る。
彼女は笑いこう告げる。
「よく分かったねぇ。そうだよ?私があなたが来た鳥居なの。でも私は鳥居であって、鳥居じゃないの。私の名前は呀倭。この世界で、ただ一人動ける鳥居なの。」
彼女は口元に手を当て、笑いを堪える様にしてそう答える。この女性の話が本当なら、この世界にもう一人の僕は居なかったと考えられる。
「そうだね。君の思うことは正しい。この世界に動ける人なんて私だけしか居ない。さっきの話も全部デタラメなのさ。」
彼女は僕が思っていたことの答えを告げる。
では、なぜそんな嘘を、デタラメを教えたのか、それが謎である。
「どの鳥居からでもあちらの世界へは帰れるよ?でもどの場所に出るのかは君次第なの。それを言わなかったのは、帰れると思って探している君がとても可愛らしかったから!」
「壊れている。」
僕はそう口にした。それでも彼女は笑うのを止めない。彼女は僕と会うことを楽しみにしていたように。なぜそんなに嬉しそうなのか?それを僕が聞くと彼女はこう言った。
「あなたを、あなたの頑張りをずっと見ていたから。あなたと話してみたかった。」
彼女は少し寂しそうな顔をすると、彼女は彼に触れる。触れた瞬間、僕は元の世界の鳥居の前に立っていた。いつの間にか、日が暮れていた。僕は何もなかったかのように家に帰り、いつものように畑仕事をする。
いつもと違うのは、見守ってくれるある女性がいることだ。
僕はこの日、いつものように家の畑仕事の手伝いをしていた。空を見上げ、お天道様の輝きを受けながら作業する畑仕事はとても僕は好きである。この日、少し変わったことといえば、少し長い時間畑にいた事、畑を二つほど終わらせたこと。これくらいである。なのになぜあの時、僕はこんな不可解な事件に巻き込まれてしまったのだろうか?
「ここは・・・どこ・・・?」
僕は畑仕事をした後、いつも帰る道の途中にあるはずのない鳥居が立っていた。それに引き寄せられるように僕は鳥居の近くまで歩いた。僕はその鳥居をくぐっては行けない気がした。なにかこの場所に戻って来れない気がしたからだ。それでも僕は手を伸ばした。
手を伸ばした瞬間、鳥居の先になにか別の世界が見えた気がした。僕の視界はそこで途切れてしまった。
「おーい。おーい。起きてー!」
誰かの声が聞こえる。目が覚めた時、最初に見たのは澄み切った青空だった。そして次に目に入ってきたのは女性の顔だった。優しそうな顔つきで、横に白い虎を連れている。虎を連れていることには驚いたが、襲ってこないところを見ると手懐けられていることがわかる。
「身体、痛いところとかない?」
「いえ、大丈夫・・・です・・・」
僕はそう答えた。僕はここがどこなのかを彼女に聞いた。
「ここは・・・どこなんですか?」
彼女は少し難しそうな顔をした。
そして彼女はこう答えた。
「ここは平行世界と呼ばれる世界。全ての神社の鳥居をくぐると時々こちらの世界に来てしまう人が居るんだ。君もその一人だろう」
「へいこう・・・せかい・・・」
言葉が出てこなかった。
僕は鳥居をくぐっただけなのに、確かにあの鳥居は何かが違った。何か、悪寒のようなものが走った。僕は早くここから動かなきゃいけない気がした。
「君の思うことは正しい。平行世界は全く同じ事があちらの世界でも起こる。つまり、今こちらに君が来てしまったということは、あちらの世界に平行世界の君が飛んで行ってしまったのだ。急いでここから出なければ君は一生ここで暮らすことになるよ。」
つまり僕がこちらに来ると、こちらにいたはずの僕が僕の世界に行ってしまったということである。僕は彼女にどうしたら良いのかを聞いた。
「全く同じ鳥居を探すのが一番速い。君が来る原因となった鳥居を探すんだ。良いね?」
僕は言われた通りに、自分が来た鳥居と同じものを探した。綺麗な赤色で塗装されており、何か白いしめ縄だったのは覚えている。僕はこの世界に至る所にある鳥居を探した。しかしどれも違う。何か違和感を感じる。どれも僕が来た鳥居では無い。時間は刻一刻と近づいてくる。僕はもう諦めようとしていた。そこに彼女が来た。
「見つかったかい?そうか・・・見つからなかったか・・・ここは平行世界、あっちの世界では出来ないことも、この世界ではできてしまう。それでも君はあちらに戻りたいのかい?」
彼女がそう聞く。僕は当たり前だと思う。
僕が住んでいたのはあちらの世界である。この世界で僕が生きていける道理はない。正直住み慣れないとは思う。そして、家族に会いたい。それだけで僕は帰りたいと思うのである。そしてある考えに至った。
「この世界がなんでもできる世界なら、なぜこの世界には人が居ないんですか?鳥居しかない。じゃあなぜ、人が居ないのに鳥居だけあるんだ・・・?」
そう、彼が鳥居を探した時に感じた違和感とは、人が彼女を除いて誰も居なかったのである。そして僕はある考えに至る。
「僕が通ってきた鳥居、それはあなたじゃないんですか?この世界にただ一人動いている鳥居。それは僕が来た鳥居だ。」
彼女の顔が恍惚に染る。
彼女は笑いこう告げる。
「よく分かったねぇ。そうだよ?私があなたが来た鳥居なの。でも私は鳥居であって、鳥居じゃないの。私の名前は呀倭。この世界で、ただ一人動ける鳥居なの。」
彼女は口元に手を当て、笑いを堪える様にしてそう答える。この女性の話が本当なら、この世界にもう一人の僕は居なかったと考えられる。
「そうだね。君の思うことは正しい。この世界に動ける人なんて私だけしか居ない。さっきの話も全部デタラメなのさ。」
彼女は僕が思っていたことの答えを告げる。
では、なぜそんな嘘を、デタラメを教えたのか、それが謎である。
「どの鳥居からでもあちらの世界へは帰れるよ?でもどの場所に出るのかは君次第なの。それを言わなかったのは、帰れると思って探している君がとても可愛らしかったから!」
「壊れている。」
僕はそう口にした。それでも彼女は笑うのを止めない。彼女は僕と会うことを楽しみにしていたように。なぜそんなに嬉しそうなのか?それを僕が聞くと彼女はこう言った。
「あなたを、あなたの頑張りをずっと見ていたから。あなたと話してみたかった。」
彼女は少し寂しそうな顔をすると、彼女は彼に触れる。触れた瞬間、僕は元の世界の鳥居の前に立っていた。いつの間にか、日が暮れていた。僕は何もなかったかのように家に帰り、いつものように畑仕事をする。
いつもと違うのは、見守ってくれるある女性がいることだ。
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