13 / 164
あらん
13.空に浮かぶ星と狐
しおりを挟む
僕が転校する前日に行ったことの無かった神社へと出向いた。そこはこの街の一番高いところにあった。そこで、僕は見てしまった。空に浮かぶ狐の面を被った何かを。空に浮かび、空を漂うお狐様を。
「なに・・・あれ・・・」
言葉が漏れた。それが聞こえてしまったのだろう、彼はいきなり下を見た。そこで空を見上げていたのは僕だけだったのだろう。こちらに降りてきた。
「君は俺が見えるのかい?」
「え?うん・・・」
僕はとっさに返事してしまった。そこで彼は被っていたお面を僕に付けた。すると周りは僕のことを気にしなくなった。否、見えなくなったように、意識から外されたような、そんな感覚だった。
彼に手を握られ、僕は空を飛んだ。彼とその夜、星座のことについて沢山話した。その時彼は『こぎつね座』から来たと言っていた。しかし、にわかに信じられる話ではなかった。でも、それがほんとうに思わないと何故自分は今、空を飛んでいるか、説明がつかなかった。それでも彼と話すのは楽しかった。彼はここに来ればいつでも話せると言っていた。しかし僕は転校するのだ。もうこの街に戻ってくる事もないだろう。
「そうか、君は戻って来れないのか。」
彼は少し表情が暗くなった。しかし、彼は行かなければならない。その後、彼が言った。
「どうしても会いたくなったら僕から行くけど君から会いたくなったら『お狐様の神社』に行って。」
そこで彼は一度言葉を切り、こう続けた。
「そこで『狗竜あらん』と頭の中で叫べ。」
その後、彼と別れた。今もおそらく彼はあの街で空を見上げているのだろう。
あの街は『星の降る街』と呼ばれる街。
そしてあの時聞いたあれは彼の名前だったのかも知れない。僕はそう思いながら、神社に来ていた。狐が祀られている。
「久しぶりだね。『狗竜あらん』」
「久しぶりだね。」
僕の耳に確かに彼の声が聞こえた。
「なに・・・あれ・・・」
言葉が漏れた。それが聞こえてしまったのだろう、彼はいきなり下を見た。そこで空を見上げていたのは僕だけだったのだろう。こちらに降りてきた。
「君は俺が見えるのかい?」
「え?うん・・・」
僕はとっさに返事してしまった。そこで彼は被っていたお面を僕に付けた。すると周りは僕のことを気にしなくなった。否、見えなくなったように、意識から外されたような、そんな感覚だった。
彼に手を握られ、僕は空を飛んだ。彼とその夜、星座のことについて沢山話した。その時彼は『こぎつね座』から来たと言っていた。しかし、にわかに信じられる話ではなかった。でも、それがほんとうに思わないと何故自分は今、空を飛んでいるか、説明がつかなかった。それでも彼と話すのは楽しかった。彼はここに来ればいつでも話せると言っていた。しかし僕は転校するのだ。もうこの街に戻ってくる事もないだろう。
「そうか、君は戻って来れないのか。」
彼は少し表情が暗くなった。しかし、彼は行かなければならない。その後、彼が言った。
「どうしても会いたくなったら僕から行くけど君から会いたくなったら『お狐様の神社』に行って。」
そこで彼は一度言葉を切り、こう続けた。
「そこで『狗竜あらん』と頭の中で叫べ。」
その後、彼と別れた。今もおそらく彼はあの街で空を見上げているのだろう。
あの街は『星の降る街』と呼ばれる街。
そしてあの時聞いたあれは彼の名前だったのかも知れない。僕はそう思いながら、神社に来ていた。狐が祀られている。
「久しぶりだね。『狗竜あらん』」
「久しぶりだね。」
僕の耳に確かに彼の声が聞こえた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ドラゴンの愛
かわの みくた
児童書・童話
一話完結の短編集です。
おやすみなさいのその前に、一話ずつ読んで夢の中。目を閉じて、幸せな続きを空想しましょ。
たとえ種族は違っても、大切に思う気持ちは変わらない。そんなドラゴンたちの愛や恋の物語です。
異世界転生はうっかり神様のせい⁈
りょく
ファンタジー
引きこもりニート。享年30。
趣味は漫画とゲーム。
なにかと不幸体質。
スイーツ大好き。
なオタク女。
実は予定よりの早死は神様の所為であるようで…
そんな訳あり人生を歩んだ人間の先は
異世界⁈
魔法、魔物、妖精もふもふ何でもありな世界
中々なお家の次女に生まれたようです。
家族に愛され、見守られながら
エアリア、異世界人生楽しみます‼︎
500文字恋愛小説【SS集】
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
1ページ完結、掌編恋愛集。
1話の文量は500文字のみ。
(改行含まず)
1話は極短です。
1日1話更新、365話完結予定。
とはいえ、1話完結方式ですので、どこから読んでいただいてもOK。
好きなお話を見つけてください。
暇つぶしにどうぞ。
※本作品は過去に書いた作品の転載+書き下ろしです。
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
正しい聖女さまのつくりかた
みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。
同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。
一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」
そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた!
果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。
聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる