41 / 164
さなのぶ
40.オドロケ
しおりを挟む
『鬼』それはある国での伝承の一つ。
それはこの国にもあった。
「出たぁぁぁあ『鬼』だぁぁあ!」
暗い暗い道、薄い霧が立ち込める場所で絶叫があがる。その道から逃げるようにして男性が出てくる。その男が出てきた一刻後に角の生えた女性と思わしき人物が出てくる。しかし、彼女には人には間違いなくない『角』が生えていた。彼女は逃げていく男を見たあと口角を釣り上げてまたその道へと戻る。その背中は何か恐ろしい何かを秘めている気がした。
「今日も人が来るとはねぇ・・・」
彼女は鬼。この国唯一の『━━━━━』と呼ばれる部類の『鬼』である。彼女は煩悩を表す象徴の鬼。その鬼には本名がある。しかし名前を言ってしまうとそれは彼女の本能を起こさせる。誰もそれを知るものはいないことが唯一の救いである。
「人間様とは話もしてみたいものです。」
彼女が『鬼』という概念であるから人は逃げてしまう。彼女が『鬼』でなければ話すことはできるのだろうか?さて、それを知るものはいないのである。
ある日、いつものように来た人間を追い返そうと彼女が姿を現すが、その人間は逃げなかった。それに不思議に思うが逃げないならと彼女は彼に手を伸ばす。しかし、悪寒が走り咄嗟に手を引いた。そして気になったことを彼女が聞いた。
「なぜ君は逃げないんだい?」
明確だった。彼の足には足枷があり、間違いなく生贄であった。しかし彼女はそんなもので消えるような『鬼』では無い。それで消えると思われたことに彼女は憤慨した。
「では、君。我が名前を教えるから呼んでくれるか?」
彼は了承した。そして誰にも言ったことのない彼女の本名を彼に伝える。そして彼はその名を呼んだ。
「天探女様。」
天探女。それは『鬼』の一つ、「天邪鬼」の名であった。その名を呼ばれた一刻後、その国に残った人間は名を呼んだ彼だけだったという。
この話を書いたのは彼ではない。
では、誰がこの話を書いたのだろうか・・・
この国の『人間』はもういないと言うのに。
それはこの国にもあった。
「出たぁぁぁあ『鬼』だぁぁあ!」
暗い暗い道、薄い霧が立ち込める場所で絶叫があがる。その道から逃げるようにして男性が出てくる。その男が出てきた一刻後に角の生えた女性と思わしき人物が出てくる。しかし、彼女には人には間違いなくない『角』が生えていた。彼女は逃げていく男を見たあと口角を釣り上げてまたその道へと戻る。その背中は何か恐ろしい何かを秘めている気がした。
「今日も人が来るとはねぇ・・・」
彼女は鬼。この国唯一の『━━━━━』と呼ばれる部類の『鬼』である。彼女は煩悩を表す象徴の鬼。その鬼には本名がある。しかし名前を言ってしまうとそれは彼女の本能を起こさせる。誰もそれを知るものはいないことが唯一の救いである。
「人間様とは話もしてみたいものです。」
彼女が『鬼』という概念であるから人は逃げてしまう。彼女が『鬼』でなければ話すことはできるのだろうか?さて、それを知るものはいないのである。
ある日、いつものように来た人間を追い返そうと彼女が姿を現すが、その人間は逃げなかった。それに不思議に思うが逃げないならと彼女は彼に手を伸ばす。しかし、悪寒が走り咄嗟に手を引いた。そして気になったことを彼女が聞いた。
「なぜ君は逃げないんだい?」
明確だった。彼の足には足枷があり、間違いなく生贄であった。しかし彼女はそんなもので消えるような『鬼』では無い。それで消えると思われたことに彼女は憤慨した。
「では、君。我が名前を教えるから呼んでくれるか?」
彼は了承した。そして誰にも言ったことのない彼女の本名を彼に伝える。そして彼はその名を呼んだ。
「天探女様。」
天探女。それは『鬼』の一つ、「天邪鬼」の名であった。その名を呼ばれた一刻後、その国に残った人間は名を呼んだ彼だけだったという。
この話を書いたのは彼ではない。
では、誰がこの話を書いたのだろうか・・・
この国の『人間』はもういないと言うのに。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
スキル【海】ってなんですか?
陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
スキル【海】ってなんですか?〜使えないユニークスキルを貰った筈が、海どころか他人のアイテムボックスにまでつながってたので、商人として成り上がるつもりが、勇者と聖女の鍵を握るスキルとして追われています〜
※書籍化準備中。
※情報の海が解禁してからがある意味本番です。
我が家は代々優秀な魔法使いを排出していた侯爵家。僕はそこの長男で、期待されて挑んだ鑑定。
だけど僕が貰ったスキルは、謎のユニークスキル──〈海〉だった。
期待ハズレとして、婚約も破棄され、弟が家を継ぐことになった。
家を継げる子ども以外は平民として放逐という、貴族の取り決めにより、僕は父さまの弟である、元冒険者の叔父さんの家で、平民として暮らすことになった。
……まあ、そもそも貴族なんて向いてないと思っていたし、僕が好きだったのは、幼なじみで我が家のメイドの娘のミーニャだったから、むしろ有り難いかも。
それに〈海〉があれば、食べるのには困らないよね!僕のところは近くに海がない国だから、魚を売って暮らすのもいいな。
スキルで手に入れたものは、ちゃんと説明もしてくれるから、なんの魚だとか毒があるとか、そういうことも分かるしね!
だけどこのスキル、単純に海につながってたわけじゃなかった。
生命の海は思った通りの効果だったけど。
──時空の海、って、なんだろう?
階段を降りると、光る扉と灰色の扉。
灰色の扉を開いたら、そこは最近亡くなったばかりの、僕のお祖父さまのアイテムボックスの中だった。
アイテムボックスは持ち主が死ぬと、中に入れたものが取り出せなくなると聞いていたけれど……。ここにつながってたなんて!?
灰色の扉はすべて死んだ人のアイテムボックスにつながっている。階段を降りれば降りるほど、大昔に死んだ人のアイテムボックスにつながる扉に通じる。
そうだ!この力を使って、僕は古物商を始めよう!だけど、えっと……、伝説の武器だとか、ドラゴンの素材って……。
おまけに精霊の宿るアイテムって……。
なんでこんなものまで入ってるの!?
失われし伝説の武器を手にした者が次世代の勇者って……。ムリムリムリ!
そっとしておこう……。
仲間と協力しながら、商人として成り上がってみせる!
そう思っていたんだけど……。
どうやら僕のスキルが、勇者と聖女が現れる鍵を握っているらしくて?
そんな時、スキルが新たに進化する。
──情報の海って、なんなの!?
元婚約者も追いかけてきて、いったい僕、どうなっちゃうの?
猫耳幼女の異世界騎士団暮らし
namihoshi
ファンタジー
来年から大学生など田舎高校生みこ。
そんな中電車に跳ねられ死んだみこは目が覚めると森の中。
体は幼女、魔法はよわよわ。
何故か耳も尻尾も生えている。
住むところも食料もなく、街へ行くと捕まるかもしれない。
そんな状況の中みこは騎士団に拾われ、掃除、料理、洗濯…家事をして働くことになった。
何故自分はこの世界にいるのか、何故自分はこんな姿なのか、何もかもわからないミコはどんどん事件に巻き込まれて自分のことを知っていく…。
ストックが無くなりました。(絶望)
目標は失踪しない。
がんばります。
1話30秒で読める140字小説集
醍醐兎乙
ライト文芸
x(旧Twitter)に投稿した140字小説をまとめました
各話に繋がりはないので、気になったタイトルからお読みください
カクヨムとノベルアップ+とnoteにも投稿しています
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~
乃神レンガ
ファンタジー
謎の白い空間で、神から異世界に送られることになった主人公。
二重取りの神授スキルを与えられ、その効果により追加でカード召喚術の神授スキルを手に入れる。
更にキャラクターメイキングのポイントも、二重取りによって他の人よりも倍手に入れることができた。
それにより主人公は、本来ポイント不足で選択できないデミゴッドの種族を選び、ジンという名前で異世界へと降り立つ。
異世界でジンは倒したモンスターをカード化して、最強の軍団を作ることを目標に、世界を放浪し始めた。
しかし次第に世界のルールを知り、争いへと巻き込まれていく。
国境門が数カ月に一度ランダムに他国と繋がる世界で、ジンは様々な選択を迫られるのであった。
果たしてジンの行きつく先は魔王か神か、それとも別の何かであろうか。
現在毎日更新中。
※この作品は『カクヨム』『ノベルアップ+』にも投稿されています。
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
家族もチート!?な貴族に転生しました。
夢見
ファンタジー
月神 詩は神の手違いで死んでしまった…
そのお詫びにチート付きで異世界に転生することになった。
詩は異世界何を思い、何をするのかそれは誰にも分からない。
※※※※※※※※※
チート過ぎる転生貴族の改訂版です。
内容がものすごく変わっている部分と変わっていない部分が入り交じっております
※※※※※※※※※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる