イニシアチブ

NaRu

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家に帰るとソファで友治が寝てた。
俺はあのあと、激しく後悔して気付くとものすごく遠くまで歩いてきていた。
どこにもいく所がない。
ホテルに泊まるにもあんまりお金もないし。
先生を頼るしかなかった。
高校の時、唯一カミングアウトした先生だ。

「旬也、お前変わってないなぁ。」

「先生は老けましたね。」

「うるさいわ。」

先生は離婚して今は一人だそうだ。
事情を全部話すと泊めてくれた。

「お前がまだ兄貴に片想いしてるなんてな。」

「このまま一生隠しとおすつもりだったんですけど。」

「そろそろ限界だろ。一つ屋根の下にいるんだから。」

「そうですよね。」

「もういっそのこと、兄弟やめてみたらどうだ?」

「え?」

「兄弟やめてちゃんと振られて前に進めばいいんじゃないか?」

「店のこととかどーするんですか?」

「なんとかなる。振られたら俺が旨い酒おごってやるよ。」

先生のその一言があったから俺は家に帰ってこれた。
正直怖いし。
不安だし。
この先友治以上に好きになれる相手に出会えるとは思えない。
でも嫌われたくない気持ちの方が勝ってる。

「おかえり、、、てか、どこ行ってたんだ!めちゃくちゃ心配して探しまくったんだぞ!」

「ごめん。」

「まぁ、無事だったからよかったけど。」

「、、、そうやって心配してくれるのは兄貴だからだよね」

「え?」

「でも、俺は一度も友治のこと兄貴だと思ったことない。ずっと、、好きだったんだ。」

友治はなにも言わず、沈黙が続いた。

「ごめん、凄くワガママだけど俺家を出る。店も続けられない。友治とも兄弟ではいられない。なるべく早く荷物まとめて出ていくから。」

怖くて顔が見れない。
俺は逃げるように自分の部屋に入った。
大丈夫だ。
そう言い聞かせて、トランクに荷物を詰め込みながら泣いた。

「お前、出ていく必要ないから。」

振り返ると友治が立ってた。

「お前の泣き顔なんて初めて見た。」

「と、友治だって、見せたことないじゃん。」

「だってカッコ悪いし。お前の前ではカッコつけてたかったんだよ。」

そう言われ、俺はベットに押し倒された。

「もう我慢しなくていいんだな。」

「は?」

「お前を俺のものにしていいんだな?」

「、、、いやいや、ちょっと待って。」

「待てない。」

「だってなんか色々、予想と違うから。」

「俺も違ったんだよなぁ。お前探してる間に気づいたんだ。俺がお前のこと弟として見れない理由とか、無性に触りたくなる理由とか。」

、、、てか、どんだけ鈍感なんだよ。
もとはと言えばこいつが抱き締めてきたりしたから。

「バカなの?」

「そうかも。」

「...何かお腹空いてきた。」

「え?」

「なんか食べさせて。」

俺がそう言うと、友治はそそくさとキッチンに向かった。
俺もあとをついていった。

「あ、そうだ。」

そう言うと、友治は振り返って腰に手を回しキスしてきた。

「俺、やられっぱなしは気に入らないんだよな。」

「なに調子乗ってんの。」

「嫌だった?」

「全然足りない。」

負けず嫌いな俺は倍返しのキスをした。
でも気付いてる。
俺はとっくに負けてる。

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