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T side
時々、旬也がやけによそよそしく感じるときがある。
朝、顔を合わせても目を反らされたり。
何故か敬語で返されたり。
でもそういう時の旬也はいつもよりエロい。
だから俺も変な感じになる。
よりによって墓参りにいく日にそんな感じで。
二人きりの車内がものすごく気まずい。
墓参りを終えて、近くの公園で花見をすることに。
桜は前日の雨で散り始めていた。
気まずいまま、弁当を広げていると救いの神現れる。
迷子の子供。
泣きながら俺じゃなく旬也の方に向かってきた。
旬也は慣れた感じで子供を落ち着かす。
「とりあえずこれ食え。」
俺は子供におにぎりを渡した。
ニコニコしながらバクつきだしたのを見て一安心。
「あきら!」
「おにいちゃん!」
「もう!一人でウロウロしちゃダメだろ!」
旬也はなだめるように仲裁に入り、兄弟は帰っていった。
俺と旬也も本当の兄弟だったらあんな感じだったんだろうか。
「よかったね。」
「お前、やけに子供の扱い慣れてるよな。」
「あぁ、高校の時ちょっとね」
多分、あの教師の子供を見てたんだろう。
よきアドバイザーって言ってたけど、ほんとにそれだけだったのか。
「友治、ありがとう。今日は誘ってくれて。」
「いや、別に。今日はいつもより食欲あったんじゃないか。弁当残らなかったし。」
「外だからかもね。」
「えらいえらい。」
思わず頭をわしゃわしゃしてしまった。
すぐに我に返り恥ずかしくなった。
旬也も俯いてしまった。
また気まずい。
「なんか今、初めて友治は俺の兄貴なんだなって思った。」
そう言われてモヤモヤした。
兄貴と思われて嬉しいはずなのに。
駐車場に着いて降りようとしたとき、旬也に腕を掴まれた。
「ん?どうした?」
「いや、ごめん。なんかとっさに。」
「なんだよ。疲れた?」
「うん、ちょっと疲れたかも。」
そう言った横顔にドキッとして、気付くと
手を伸ばして抱き寄せていた。
自分の鼓動の早さに我に返った。
その瞬間に旬也の顔が目の前にあった。
一瞬、唇が触れた。
離れて、すぐにまた重なって俺の頭は真っ白になった。
なにも考えなくていい。
ただ、気持ちのままに従えばいいと、誰かが言ってくれたなら俺はあの時旬也を離さなかった。
次に離れた時、旬也は車を降りて行ってしまった。
それきり家に帰ってこなかった。
何度も車の中でのことを脳内リピートした。
でも一番リアルだったのは唇の感触で。
なんであんなこと。
帰ってきた旬也とどんな顔で会えばいいのかわからない。
気がつくと朝になっていた。
とりあえず、店は休みにした。
家にいても落ち着かないから、とりあえず外に出てブラブラしてると、"取引先のお嬢さん"にバッタリ。
「なに、その顔。」
「え?」
「腑抜けな顔。てか、なんでお店休みなわけ?旬也くんは?」
「帰ってこなくなった。」
「はぁ?いい歳して喧嘩でもしたわけ?」
「喧嘩ならまだマシだな。」
「...ま、とりま飲みに行こーぜ!」
誘われるがまま居酒屋に入り、酒の勢いで全部ぶちまけた。
「なにそれ、てか、兄弟でしょ?」
「血は繋がってない。」
「あー、納得。全然似てないもんね。てことは、旬也くんはあんたが好きなんだろうね。」
「はぁ?」
「はぁ?はこっちのセリフ。好きじゃなきゃしないっしょ。わざわざあんたみたいなのにキスなんて。」
「できるだろ、好きじゃなくても。」
「できないわよ、ああいうタイプは。どーすんの?このまま帰ってこなかったら?」
「どーすっかなぁ。」
「その前に心配でしょ?変な男に掴まって、ぼろぼろにされてたらどーするの?自暴自棄になってさ。」
そんなこと考えてもみなかった!
「旬也くんてなんか危なっかしいもんねぇ。曲がりなりにもあんた兄貴なんだから。ちゃんと守ってやんなきゃ。」
そう言われ三日三晩探し歩いた。
けど、俺ってよく考えるとあいつのことなにも知らない。
友達とか、よくいく場所とか。
そして、四日目の朝。
旬也は帰ってきた。
時々、旬也がやけによそよそしく感じるときがある。
朝、顔を合わせても目を反らされたり。
何故か敬語で返されたり。
でもそういう時の旬也はいつもよりエロい。
だから俺も変な感じになる。
よりによって墓参りにいく日にそんな感じで。
二人きりの車内がものすごく気まずい。
墓参りを終えて、近くの公園で花見をすることに。
桜は前日の雨で散り始めていた。
気まずいまま、弁当を広げていると救いの神現れる。
迷子の子供。
泣きながら俺じゃなく旬也の方に向かってきた。
旬也は慣れた感じで子供を落ち着かす。
「とりあえずこれ食え。」
俺は子供におにぎりを渡した。
ニコニコしながらバクつきだしたのを見て一安心。
「あきら!」
「おにいちゃん!」
「もう!一人でウロウロしちゃダメだろ!」
旬也はなだめるように仲裁に入り、兄弟は帰っていった。
俺と旬也も本当の兄弟だったらあんな感じだったんだろうか。
「よかったね。」
「お前、やけに子供の扱い慣れてるよな。」
「あぁ、高校の時ちょっとね」
多分、あの教師の子供を見てたんだろう。
よきアドバイザーって言ってたけど、ほんとにそれだけだったのか。
「友治、ありがとう。今日は誘ってくれて。」
「いや、別に。今日はいつもより食欲あったんじゃないか。弁当残らなかったし。」
「外だからかもね。」
「えらいえらい。」
思わず頭をわしゃわしゃしてしまった。
すぐに我に返り恥ずかしくなった。
旬也も俯いてしまった。
また気まずい。
「なんか今、初めて友治は俺の兄貴なんだなって思った。」
そう言われてモヤモヤした。
兄貴と思われて嬉しいはずなのに。
駐車場に着いて降りようとしたとき、旬也に腕を掴まれた。
「ん?どうした?」
「いや、ごめん。なんかとっさに。」
「なんだよ。疲れた?」
「うん、ちょっと疲れたかも。」
そう言った横顔にドキッとして、気付くと
手を伸ばして抱き寄せていた。
自分の鼓動の早さに我に返った。
その瞬間に旬也の顔が目の前にあった。
一瞬、唇が触れた。
離れて、すぐにまた重なって俺の頭は真っ白になった。
なにも考えなくていい。
ただ、気持ちのままに従えばいいと、誰かが言ってくれたなら俺はあの時旬也を離さなかった。
次に離れた時、旬也は車を降りて行ってしまった。
それきり家に帰ってこなかった。
何度も車の中でのことを脳内リピートした。
でも一番リアルだったのは唇の感触で。
なんであんなこと。
帰ってきた旬也とどんな顔で会えばいいのかわからない。
気がつくと朝になっていた。
とりあえず、店は休みにした。
家にいても落ち着かないから、とりあえず外に出てブラブラしてると、"取引先のお嬢さん"にバッタリ。
「なに、その顔。」
「え?」
「腑抜けな顔。てか、なんでお店休みなわけ?旬也くんは?」
「帰ってこなくなった。」
「はぁ?いい歳して喧嘩でもしたわけ?」
「喧嘩ならまだマシだな。」
「...ま、とりま飲みに行こーぜ!」
誘われるがまま居酒屋に入り、酒の勢いで全部ぶちまけた。
「なにそれ、てか、兄弟でしょ?」
「血は繋がってない。」
「あー、納得。全然似てないもんね。てことは、旬也くんはあんたが好きなんだろうね。」
「はぁ?」
「はぁ?はこっちのセリフ。好きじゃなきゃしないっしょ。わざわざあんたみたいなのにキスなんて。」
「できるだろ、好きじゃなくても。」
「できないわよ、ああいうタイプは。どーすんの?このまま帰ってこなかったら?」
「どーすっかなぁ。」
「その前に心配でしょ?変な男に掴まって、ぼろぼろにされてたらどーするの?自暴自棄になってさ。」
そんなこと考えてもみなかった!
「旬也くんてなんか危なっかしいもんねぇ。曲がりなりにもあんた兄貴なんだから。ちゃんと守ってやんなきゃ。」
そう言われ三日三晩探し歩いた。
けど、俺ってよく考えるとあいつのことなにも知らない。
友達とか、よくいく場所とか。
そして、四日目の朝。
旬也は帰ってきた。
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