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2.第二王女殿下は天才のようです

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「ベルフレア様、本日のご予定は...」

朝、朝食を召し上がっているベルフレア様に今日の予定を告げる。と言ってもまだ6歳。仕事らしい仕事もなく、専属教師とのお勉強やお散歩などである。こんな小さな子でもきっちり予定が組まれていることに驚いてしまった。

「あ、こぼされてますよ」

殿下が野菜をこぼされた。まだ小さなお口ではちゃんと食べることは難しい。給支しているメイドが拭いてあげていた。

「ありがとうなのだ!」
「いえいえ」

(お礼ちゃんと言えて偉いよなぁ)

帝国貴族はやってもらって当然と思っているからお礼なんて言わない。さらに酷い者では仕えさせてやってるのだから感謝しろとさえ言うのだ。

(王国の貴族や王族の方々は優しいなぁ)

私は殿下の側に控えながらそんなことを考えていた。

「アラン、どうしたのだ?」
「いえいえ、なんでもございませんよ。お食事は終わりましたか?」
「はいなのだ!」
「ではお部屋に戻りましょうか」

(すぐに考え込んでしまう。表情が乏しいのだから黙っていると殿下が心配してしまう。気をつけなければ)

殿下の部屋に戻ると礼儀作法の先生が来る。

「ベルフレア殿下ごきげんよう」
「ごきげんよう、リアナ先生」

リアナ先生は細身の眼鏡をかけている女性で眼鏡の奥で細い目が光っている厳格そうな方だ。

「殿下、今日は婚約者の方への振る舞い方をお教えします」
「よろしくお願い致します」
「まず、婚約者との顔合わせの時ですが...」

礼儀作法の先生の前では普通の口調の殿下。

(口調が変わると王女らしさが出るなぁ)

聞いているとかなりスパルタだ。しかし殿下も教えられたことをどんどん吸収していてリアナ先生も頬を緩めている。

(そもそも殿下に婚約者なんているんですか!?)

まだ6歳。流石に早いんじゃないだろうか。

(殿下が婚約者とばかり一緒にいて私に見向きもしなくなったら泣くなぁ)

すでに父親にような思考になっていることに全く気づいていなかった。



***



さて、この世界には魔法がある。しかし、魔法は適性がない者は使えず、適性は大体血筋に現れるため貴族に多い。だが貴族でも現れない者は多く、結局国民の20%くらいしか使えないと言われている。そのため魔法師は重宝され国が職をあてがうため一生職に困ることはない。
何故こんな話をしているのかというと。

「アランは魔法は使えるのだ?」

昼食後。お部屋に戻った殿下から聞かれたからである。
どう答えようか迷う。スパイであることを考えると使えないと言った方がいいのだろう。しかし、殿下のキラキラした目を見ていると

(ま、大丈夫でしょう)

あっさりその考えはなくなる。殿下の笑顔が見れるのならなんだってするアランだった。

「使えますよ」
「見たいのだ!」
「いいですよ、どんな魔法がよろしいですか?」
「綺麗なのがいいのだ!」
「綺麗、ですか...」

私が使う魔法は実践に特化している。もしもの時、オズワルト殿下を守るのも執事の役目の一つにあったからだ。

「そう、ですね。ではこんなのは如何でしょう?」

結局、即興で魔法を創ることにした。殿下に実践で使うような魔法は見せれないし、何より綺麗な魔法というオーダーなのだ。それを叶えるのが執事の役目である!
両手を前に差し出してイメージする。

(薔薇がいいかな)

ワクワクして手のひらを見つめる殿下を微笑ましく思いながら、氷の薔薇を創り出した。

「うわぁ!綺麗なのだ!これはなんなのだ?」
「氷で創られた薔薇でございます。これを殿下に差し上げましょう」
「いいのだ?」
「もちろんでございます」

殿下の金色に輝く髪に薔薇をさす。それは窓から差し込む陽の光に反射してキラキラと光っていた。

「ありがとうなのだ!」
「いえいえ。よくお似合いでございますよ」

嬉しそうに頬を染める殿下にやはり可愛らしかった。

「ベルでもできるのだ?」
「どうでしょう?やってみますか?」
「はいなのだ!」

殿下に適性があるかわからないが、王族はある可能性が高い。魔力についてまだ知らないだろうから多分できないとは思うが、丁寧に教える。

「両手を前に出してください」
「こうなのだ?」
「そうです。そしてさっき私が創った薔薇を思い浮かべてください」
「んんっ!できたのだ!」

(えっ?)

絶句する。殿下の手の平の上にはアランが創ったものより一回り小さい氷の薔薇がちょこんとのっていた。イメージしただけでできるとはそれは適性が高いどころの話ではない。

「どうしたのだ?」
「い、いえ、殿下、魔法を使ったことがあるのですか?」
「ないのだ!初めてなのだ!」
「...」

紛れもない天才である。

(可愛い上に魔法の天才って...あなたは神ですか!?)

心の中で叫びながら努めて冷静に言う。

「お見事です、殿下」
「やったーなのだ!」

飛び跳ねて喜ぶ殿下はやっぱり王女であっても普通の子供と変わらなくて。

(可愛いなぁ)

と心の中で呟くアランだった。

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