2 / 9
2.第二王女殿下は天才のようです
しおりを挟む
「ベルフレア様、本日のご予定は...」
朝、朝食を召し上がっているベルフレア様に今日の予定を告げる。と言ってもまだ6歳。仕事らしい仕事もなく、専属教師とのお勉強やお散歩などである。こんな小さな子でもきっちり予定が組まれていることに驚いてしまった。
「あ、こぼされてますよ」
殿下が野菜をこぼされた。まだ小さなお口ではちゃんと食べることは難しい。給支しているメイドが拭いてあげていた。
「ありがとうなのだ!」
「いえいえ」
(お礼ちゃんと言えて偉いよなぁ)
帝国貴族はやってもらって当然と思っているからお礼なんて言わない。さらに酷い者では仕えさせてやってるのだから感謝しろとさえ言うのだ。
(王国の貴族や王族の方々は優しいなぁ)
私は殿下の側に控えながらそんなことを考えていた。
「アラン、どうしたのだ?」
「いえいえ、なんでもございませんよ。お食事は終わりましたか?」
「はいなのだ!」
「ではお部屋に戻りましょうか」
(すぐに考え込んでしまう。表情が乏しいのだから黙っていると殿下が心配してしまう。気をつけなければ)
殿下の部屋に戻ると礼儀作法の先生が来る。
「ベルフレア殿下ごきげんよう」
「ごきげんよう、リアナ先生」
リアナ先生は細身の眼鏡をかけている女性で眼鏡の奥で細い目が光っている厳格そうな方だ。
「殿下、今日は婚約者の方への振る舞い方をお教えします」
「よろしくお願い致します」
「まず、婚約者との顔合わせの時ですが...」
礼儀作法の先生の前では普通の口調の殿下。
(口調が変わると王女らしさが出るなぁ)
聞いているとかなりスパルタだ。しかし殿下も教えられたことをどんどん吸収していてリアナ先生も頬を緩めている。
(そもそも殿下に婚約者なんているんですか!?)
まだ6歳。流石に早いんじゃないだろうか。
(殿下が婚約者とばかり一緒にいて私に見向きもしなくなったら泣くなぁ)
すでに父親にような思考になっていることに全く気づいていなかった。
***
さて、この世界には魔法がある。しかし、魔法は適性がない者は使えず、適性は大体血筋に現れるため貴族に多い。だが貴族でも現れない者は多く、結局国民の20%くらいしか使えないと言われている。そのため魔法師は重宝され国が職をあてがうため一生職に困ることはない。
何故こんな話をしているのかというと。
「アランは魔法は使えるのだ?」
昼食後。お部屋に戻った殿下から聞かれたからである。
どう答えようか迷う。スパイであることを考えると使えないと言った方がいいのだろう。しかし、殿下のキラキラした目を見ていると
(ま、大丈夫でしょう)
あっさりその考えはなくなる。殿下の笑顔が見れるのならなんだってするアランだった。
「使えますよ」
「見たいのだ!」
「いいですよ、どんな魔法がよろしいですか?」
「綺麗なのがいいのだ!」
「綺麗、ですか...」
私が使う魔法は実践に特化している。もしもの時、オズワルト殿下を守るのも執事の役目の一つにあったからだ。
「そう、ですね。ではこんなのは如何でしょう?」
結局、即興で魔法を創ることにした。殿下に実践で使うような魔法は見せれないし、何より綺麗な魔法というオーダーなのだ。それを叶えるのが執事の役目である!
両手を前に差し出してイメージする。
(薔薇がいいかな)
ワクワクして手のひらを見つめる殿下を微笑ましく思いながら、氷の薔薇を創り出した。
「うわぁ!綺麗なのだ!これはなんなのだ?」
「氷で創られた薔薇でございます。これを殿下に差し上げましょう」
「いいのだ?」
「もちろんでございます」
殿下の金色に輝く髪に薔薇をさす。それは窓から差し込む陽の光に反射してキラキラと光っていた。
「ありがとうなのだ!」
「いえいえ。よくお似合いでございますよ」
嬉しそうに頬を染める殿下にやはり可愛らしかった。
「ベルでもできるのだ?」
「どうでしょう?やってみますか?」
「はいなのだ!」
殿下に適性があるかわからないが、王族はある可能性が高い。魔力についてまだ知らないだろうから多分できないとは思うが、丁寧に教える。
「両手を前に出してください」
「こうなのだ?」
「そうです。そしてさっき私が創った薔薇を思い浮かべてください」
「んんっ!できたのだ!」
(えっ?)
絶句する。殿下の手の平の上にはアランが創ったものより一回り小さい氷の薔薇がちょこんとのっていた。イメージしただけでできるとはそれは適性が高いどころの話ではない。
「どうしたのだ?」
「い、いえ、殿下、魔法を使ったことがあるのですか?」
「ないのだ!初めてなのだ!」
「...」
紛れもない天才である。
(可愛い上に魔法の天才って...あなたは神ですか!?)
心の中で叫びながら努めて冷静に言う。
「お見事です、殿下」
「やったーなのだ!」
飛び跳ねて喜ぶ殿下はやっぱり王女であっても普通の子供と変わらなくて。
(可愛いなぁ)
と心の中で呟くアランだった。
朝、朝食を召し上がっているベルフレア様に今日の予定を告げる。と言ってもまだ6歳。仕事らしい仕事もなく、専属教師とのお勉強やお散歩などである。こんな小さな子でもきっちり予定が組まれていることに驚いてしまった。
「あ、こぼされてますよ」
殿下が野菜をこぼされた。まだ小さなお口ではちゃんと食べることは難しい。給支しているメイドが拭いてあげていた。
「ありがとうなのだ!」
「いえいえ」
(お礼ちゃんと言えて偉いよなぁ)
帝国貴族はやってもらって当然と思っているからお礼なんて言わない。さらに酷い者では仕えさせてやってるのだから感謝しろとさえ言うのだ。
(王国の貴族や王族の方々は優しいなぁ)
私は殿下の側に控えながらそんなことを考えていた。
「アラン、どうしたのだ?」
「いえいえ、なんでもございませんよ。お食事は終わりましたか?」
「はいなのだ!」
「ではお部屋に戻りましょうか」
(すぐに考え込んでしまう。表情が乏しいのだから黙っていると殿下が心配してしまう。気をつけなければ)
殿下の部屋に戻ると礼儀作法の先生が来る。
「ベルフレア殿下ごきげんよう」
「ごきげんよう、リアナ先生」
リアナ先生は細身の眼鏡をかけている女性で眼鏡の奥で細い目が光っている厳格そうな方だ。
「殿下、今日は婚約者の方への振る舞い方をお教えします」
「よろしくお願い致します」
「まず、婚約者との顔合わせの時ですが...」
礼儀作法の先生の前では普通の口調の殿下。
(口調が変わると王女らしさが出るなぁ)
聞いているとかなりスパルタだ。しかし殿下も教えられたことをどんどん吸収していてリアナ先生も頬を緩めている。
(そもそも殿下に婚約者なんているんですか!?)
まだ6歳。流石に早いんじゃないだろうか。
(殿下が婚約者とばかり一緒にいて私に見向きもしなくなったら泣くなぁ)
すでに父親にような思考になっていることに全く気づいていなかった。
***
さて、この世界には魔法がある。しかし、魔法は適性がない者は使えず、適性は大体血筋に現れるため貴族に多い。だが貴族でも現れない者は多く、結局国民の20%くらいしか使えないと言われている。そのため魔法師は重宝され国が職をあてがうため一生職に困ることはない。
何故こんな話をしているのかというと。
「アランは魔法は使えるのだ?」
昼食後。お部屋に戻った殿下から聞かれたからである。
どう答えようか迷う。スパイであることを考えると使えないと言った方がいいのだろう。しかし、殿下のキラキラした目を見ていると
(ま、大丈夫でしょう)
あっさりその考えはなくなる。殿下の笑顔が見れるのならなんだってするアランだった。
「使えますよ」
「見たいのだ!」
「いいですよ、どんな魔法がよろしいですか?」
「綺麗なのがいいのだ!」
「綺麗、ですか...」
私が使う魔法は実践に特化している。もしもの時、オズワルト殿下を守るのも執事の役目の一つにあったからだ。
「そう、ですね。ではこんなのは如何でしょう?」
結局、即興で魔法を創ることにした。殿下に実践で使うような魔法は見せれないし、何より綺麗な魔法というオーダーなのだ。それを叶えるのが執事の役目である!
両手を前に差し出してイメージする。
(薔薇がいいかな)
ワクワクして手のひらを見つめる殿下を微笑ましく思いながら、氷の薔薇を創り出した。
「うわぁ!綺麗なのだ!これはなんなのだ?」
「氷で創られた薔薇でございます。これを殿下に差し上げましょう」
「いいのだ?」
「もちろんでございます」
殿下の金色に輝く髪に薔薇をさす。それは窓から差し込む陽の光に反射してキラキラと光っていた。
「ありがとうなのだ!」
「いえいえ。よくお似合いでございますよ」
嬉しそうに頬を染める殿下にやはり可愛らしかった。
「ベルでもできるのだ?」
「どうでしょう?やってみますか?」
「はいなのだ!」
殿下に適性があるかわからないが、王族はある可能性が高い。魔力についてまだ知らないだろうから多分できないとは思うが、丁寧に教える。
「両手を前に出してください」
「こうなのだ?」
「そうです。そしてさっき私が創った薔薇を思い浮かべてください」
「んんっ!できたのだ!」
(えっ?)
絶句する。殿下の手の平の上にはアランが創ったものより一回り小さい氷の薔薇がちょこんとのっていた。イメージしただけでできるとはそれは適性が高いどころの話ではない。
「どうしたのだ?」
「い、いえ、殿下、魔法を使ったことがあるのですか?」
「ないのだ!初めてなのだ!」
「...」
紛れもない天才である。
(可愛い上に魔法の天才って...あなたは神ですか!?)
心の中で叫びながら努めて冷静に言う。
「お見事です、殿下」
「やったーなのだ!」
飛び跳ねて喜ぶ殿下はやっぱり王女であっても普通の子供と変わらなくて。
(可愛いなぁ)
と心の中で呟くアランだった。
1
お気に入りに追加
298
あなたにおすすめの小説
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
騎士団長のお抱え薬師
衣更月
ファンタジー
辺境の町ハノンで暮らすイヴは、四大元素の火、風、水、土の属性から弾かれたハズレ属性、聖属性持ちだ。
聖属性持ちは意外と多く、ハズレ属性と言われるだけあって飽和状態。聖属性持ちの女性は結婚に逃げがちだが、イヴの年齢では結婚はできない。家業があれば良かったのだが、平民で天涯孤独となった身の上である。
後ろ盾は一切なく、自分の身は自分で守らなければならない。
なのに、求人依頼に聖属性は殆ど出ない。
そんな折、獣人の国が聖属性を募集していると話を聞き、出国を決意する。
場所は隣国。
しかもハノンの隣。
迎えに来たのは見上げるほど背の高い美丈夫で、なぜかイヴに威圧的な騎士団長だった。
大きな事件は起きないし、意外と獣人は優しい。なのに、団長だけは怖い。
イヴの団長克服の日々が始まる―ー―。
魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
七代目は「帝国」最後の皇后
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「帝国」貴族・ホロベシ男爵が流れ弾に当たり死亡。搬送する同行者のナギと大陸横断列車の個室が一緒になった「連合」の財団のぼんぼんシルベスタ・デカダ助教授は彼女に何を見るのか。
「四代目は身代わりの皇后」と同じ世界の二~三代先の時代の話。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる