記憶と約束を探して〜千年の時を超えて『今』結ばれる〜

追憶

異世界恋愛ファンタジーになります。1人でも多くの人に読んでいただけると嬉しいです！


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


貴方は一輪の花のようだった。

気の向くままに空を飛んでいたら、泣き声が聞こえてきた。普段であれば特に気にしなかっただろう。幼児の泣き声などよくあることなのだから。
しかし、気まぐれにその泣き声の方に行ってみると、少女がいた。
そこはジメジメとしていて薄暗く、ただ一枚毛布が置いてあるだけで、他は何もない。そんな場所にただ1人貴方はいたんだ。
あの時胸に込み上げたのは憐れみだろうか？
久しく感じていなかった感情に戸惑ったのを今でも覚えている。
久しくしていなかった人間の姿になって話しかけると貴方は驚いて目を見開いた。

「誰？」

その声はコロコロと鈴が鳴るようでとても可愛らしかった。

『助けてあげよう』
「でも、ここから出られないの」
『大丈夫だよ、僕が出してあげる』
「本当に？」
『ああ、おいで』

ふらふらと僕の方に近寄ってきた貴方を抱きしめると、貴方は大声をあげて泣き始めたんだ。しばらく背中をとんとん、と優しく叩いてあげると貴方は寝てしまった。
あの時、僕は決めたんだ、貴方を守ると。名前も知らなかったけれど、胸いっぱいに愛おしさが溢れた。


＊＊＊


「貴方、名前は？」
『ない』
「ないの？じゃあ私が付けてあげる！」
『いいのか？』
「もちろん！どうしようかなー」

しっかり食事をとって元気になった貴方は思った以上にお転婆で、でも優しくて。うーんと唸って真剣に考えている姿はとても可愛らしかった。

『思いつかないのなら別にー』
「決めた！」

真剣な眼差しにごくりと唾を飲む。

「貴方の名前はー」

名前をくれた貴方を、優しさをくれた貴方を、僕は今でも愛しているよ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


読んでくださりありがとうございます！
これから頑張っていきますのでどうぞよろしくお願い致します！