【完結】千年ぶりの魔法をあなたに〜生贄にされた王女と処刑された護衛〜

美原風香

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7. 再びあの場所へ

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 一週間後、とうとうその日が来た。

「王女様、ご案内いたします」

 侍女に案内されて王宮の中を進む私は、千年前のあの時と同じ、真っ白な衣を身に纏っていた。

 この一週間、私は儀式に関して何も知らないふりを貫いた。王宮に住むために必要な儀式、と伝えられた時も、純粋に喜んでいるふりをしてい見せた。

『俺たちは儀式が始まってから王都の外壁を突破する。王宮にたどり着くまで儀式を伸ばせ』

 なんと無茶な要求だろうか。ヴァールの言葉を思い出して顔をしかめる。

 外壁から王宮までかなりの距離がある。儀式の間は騎士団長が独自に軍を動かして王都の守りに務めるらしいから、いくら不意打ちといえどそう簡単にはここにたどり着けないだろう。

 しかも、彼は民は傷つけないとまで宣言していた。それは殺すよりも難しい。
 つまり、相当な時間儀式を伸ばさなければならないということ。

「無理言わないでほしいわ……」
「どうかされましたか?」
「い、いいえ、なんでもないわ」

 案内してくれている侍女が首を傾げて聞いてくるが、慌てて首を振る。無意識に声が漏れていたようだ。気をつけねば。

 文句を言ったって、私が生贄にならないようにするには時間を伸ばすしかない。それに、これはこの国の間違いを正す絶好の機会。逃すわけにはいかなかった。

 この国がルマージュ王国でなくなろうとも、民にとって良い国であってほしい。
 そのためには私はいくらでも頑張れる。

 強い決意とともに儀式の間に入った。


「おお、よく来た」

 最初に目に入ったのは、儀式の間の奥にある玉座に座った国王の姿。千年ぶりに入る儀式の間は、フードを被った魔法使いが並んでいるところまで全く変わっていなかった。

 国王に対しカーテシーをする。

「初めてお目にかかります、陛下。ティアラ・ド……」
「良い、堅苦しい挨拶などいらない。そなたは私の娘なのだから」

 笑みを浮かべて言い切る国王に嫌悪感が湧き上がる。娘だなんて微塵も思っていないだろうに。自分が力を手に入れるためだけに利用する相手によくそんな笑みを見せれるものだ。

 だが、そんな思いは隠し、笑みを浮かべる。

「陛下にそうおっしゃっていただき嬉しいですわ」
「あぁ」

 鷹揚に頷くと、陛下は宣言した。

「では、儀式を始めようか」

 儀式が始まった。粛々と進んでいくそれは、千年前と全く変わらず、ただ私の心持ちだけが違った。

「それでは、王女殿下。こちらの聖水の泉にお入りください」

 その時だった。
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