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1章 迷宮攻略はじめます
番外編2 執事のいなくなった王宮で
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昨日は更新をお休みしてしまいすみません。少々忙しくて時間が取れませんでした。
本日は「あの」名前しか出ていなかった子が出てきますよ......!
ーーーーーーーーー
時は遡り、フェールがいなくなった後のメルテウス王国王宮、国王の執務室にて。
「お父様、フェールが休暇から戻ってきてないようなのだけど……」
「あぁ、あやつなら辞職した」
「えっ……?」
第一王女ユリウェラの呆然とした声が国王ルヴァン・ファル・メルテウスの執務室に響く。
「お前の頼みを聞けない執事などいらん。初めは国境守備隊に送ろうと思ったがいなくなって正解だったな」
ユリウェラにはルヴァンの声が遠くから冷たく聞こえた。
本当は、むしろユリウェラのためにしてやったんだ! 褒めて我が娘よ! という感じだったのだが、ユリウェラにとっては酷い仕打ちをされたようにしか思えない。
気がついたらユリウェラは涙をポロポロ流していた。
慌てたのはルヴァンだ。思わず椅子から立ち上がると、ユリウェラに歩み寄る。
「どうしたんだ可愛い娘よ! そんな泣いたら可愛い目が腫れてしまうよ……!」
だが、ユリウェラはパシッと手を払った。
「な、なぜお父様の手を払いのけ……」
「フェールを呼び戻して!」
今まで見たことのないユリウェラの声を荒げる姿にルヴァンは唖然とする。
長い銀髪に大きな青い瞳を持つユリウェラは儚い雰囲気を醸し出し、その見た目通りいつもおしとやかに、穏やかに振舞っていた。
だが……
「なぜだ! お前のために私は……」
「私のためっていうなら呼び戻して! フェールが一番大切なのに……」
フェールがいないことで泣きじゃくるユリウェラにはいつもの落ち着きはなかった。
ルヴァンはユリウェラの言葉に呆然とする。
「あんな奴のどこがいいのだ! お前の一番はお父様じゃ……!」
「お父様はいつも仕事を投げ出して遊んでばっかりだから嫌い!」
「そんな……」
がーん、という音が聞こえてくるような表情を浮かべてルヴァンはその場に崩れ落ちた。
親バカのルヴァンには娘から言われる嫌いという言葉ほど堪えるものはないだろう。
だが、ユリウェラにとってはフェールが一番。使用人達はその姿をよく見てきたが、ルヴァンは初めて見るためよりショックが大きい。
「お父様! フェールが戻るまでお父様と口ききません!」
「そ、それだけは……!」
「フェールがいないと嫌です! それでは!」
ユリウェラはドレスの裾を翻すと執務室から出て行く。
その様子をルヴァンは呆然として見送っていた。
***
「お父様なんて嫌いですわ。フェールを追い出してしまうなんて……」
ユリウェラは部屋に戻るとベッドに寝転がり枕を抱える。その姿はぐうたらしていてとても王女には見えない。
「殿下、陛下はお嬢様のために……」
「どこが? 私の世話もお父様の仕事の一部をしていたのもフェールなのよ! その相手を追い出すことが私のためになるわけないじゃない!」
メイドの言葉にユリウェラが鋭く返す。
メイドは黙るしかない。実際王宮の業務を回していたのは執事であったフェールだからだ。
そしてこのぐうたら王女を動かしてたのもフェールである。
頭も切れて政治もできるのに、なかなかベッドから離れないユリウェラをベッドから引き剥がす役目がフェールだったのだ。
「フェール……会いたいよぉ……」
ユリウェラがか細い声を漏らす。
ユリウェラにとってフェールは何よりも大切で、代え難いものだった。
「フェールを探させて」
「かしこまりました」
予想していたようにメイドは何事もなく返事をする。
メイドはこっそりため息をつく。これからこのぐうたら王女を起こすのが自分であることに。
(正直起こせる気がしないわ。早くフェールさん戻ってきて……!)
(フェール、会いたい、私の前からいなくならないで……)
ユリウェラも、メイドも、理由は違えどフェールが早く戻ってくることを祈っていた。
***
同じ頃。
「ユリウェラに口きかない宣言をされてしまった……」
ルヴァンが執務室で頭を抱えていた。ちなみに椅子に座っているがその上で体育座りをしている。
「これは陛下が悪いです」
「お前までそのようなことを……」
宰相が呆れた表情を浮かべている。
(あの執事がユリウェラ様のそばにいたからこの国は回ってたのだから)
宰相は内心でため息をついた。この国の現状をしっかり把握しているのはこの宰相——ピエスト・オマートンだけだった。
ユリウェラのこと以外何も考えていない国王。
フェールがいないとベッドからほとんど離れない王女。
(この国はもうやっていけないだろう。まぁ、私にとっては都合がいいがな)
ピエストはほくそ笑む。ピエストこそがルヴァンがユリウェラのこと以外何も考えられなくした張本人なのだから……
(あの執事が邪魔だったが勝手にいなくなってくれたから動きやすくなった)
「ピエスト、フェールを探せ。そうしないとユリウェラに口をきいてもらえない」
「かしこまりました」
ピエストは恭しく頭をさげる。
その顔は邪悪な笑みを浮かべていた。
ーーーーーー
読んでくださりありがとうございます!
これにて完全に一章終了です。明日から二章開始ですのでご期待ください!
(新キャラ......重要ですよ......!)
本日は「あの」名前しか出ていなかった子が出てきますよ......!
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時は遡り、フェールがいなくなった後のメルテウス王国王宮、国王の執務室にて。
「お父様、フェールが休暇から戻ってきてないようなのだけど……」
「あぁ、あやつなら辞職した」
「えっ……?」
第一王女ユリウェラの呆然とした声が国王ルヴァン・ファル・メルテウスの執務室に響く。
「お前の頼みを聞けない執事などいらん。初めは国境守備隊に送ろうと思ったがいなくなって正解だったな」
ユリウェラにはルヴァンの声が遠くから冷たく聞こえた。
本当は、むしろユリウェラのためにしてやったんだ! 褒めて我が娘よ! という感じだったのだが、ユリウェラにとっては酷い仕打ちをされたようにしか思えない。
気がついたらユリウェラは涙をポロポロ流していた。
慌てたのはルヴァンだ。思わず椅子から立ち上がると、ユリウェラに歩み寄る。
「どうしたんだ可愛い娘よ! そんな泣いたら可愛い目が腫れてしまうよ……!」
だが、ユリウェラはパシッと手を払った。
「な、なぜお父様の手を払いのけ……」
「フェールを呼び戻して!」
今まで見たことのないユリウェラの声を荒げる姿にルヴァンは唖然とする。
長い銀髪に大きな青い瞳を持つユリウェラは儚い雰囲気を醸し出し、その見た目通りいつもおしとやかに、穏やかに振舞っていた。
だが……
「なぜだ! お前のために私は……」
「私のためっていうなら呼び戻して! フェールが一番大切なのに……」
フェールがいないことで泣きじゃくるユリウェラにはいつもの落ち着きはなかった。
ルヴァンはユリウェラの言葉に呆然とする。
「あんな奴のどこがいいのだ! お前の一番はお父様じゃ……!」
「お父様はいつも仕事を投げ出して遊んでばっかりだから嫌い!」
「そんな……」
がーん、という音が聞こえてくるような表情を浮かべてルヴァンはその場に崩れ落ちた。
親バカのルヴァンには娘から言われる嫌いという言葉ほど堪えるものはないだろう。
だが、ユリウェラにとってはフェールが一番。使用人達はその姿をよく見てきたが、ルヴァンは初めて見るためよりショックが大きい。
「お父様! フェールが戻るまでお父様と口ききません!」
「そ、それだけは……!」
「フェールがいないと嫌です! それでは!」
ユリウェラはドレスの裾を翻すと執務室から出て行く。
その様子をルヴァンは呆然として見送っていた。
***
「お父様なんて嫌いですわ。フェールを追い出してしまうなんて……」
ユリウェラは部屋に戻るとベッドに寝転がり枕を抱える。その姿はぐうたらしていてとても王女には見えない。
「殿下、陛下はお嬢様のために……」
「どこが? 私の世話もお父様の仕事の一部をしていたのもフェールなのよ! その相手を追い出すことが私のためになるわけないじゃない!」
メイドの言葉にユリウェラが鋭く返す。
メイドは黙るしかない。実際王宮の業務を回していたのは執事であったフェールだからだ。
そしてこのぐうたら王女を動かしてたのもフェールである。
頭も切れて政治もできるのに、なかなかベッドから離れないユリウェラをベッドから引き剥がす役目がフェールだったのだ。
「フェール……会いたいよぉ……」
ユリウェラがか細い声を漏らす。
ユリウェラにとってフェールは何よりも大切で、代え難いものだった。
「フェールを探させて」
「かしこまりました」
予想していたようにメイドは何事もなく返事をする。
メイドはこっそりため息をつく。これからこのぐうたら王女を起こすのが自分であることに。
(正直起こせる気がしないわ。早くフェールさん戻ってきて……!)
(フェール、会いたい、私の前からいなくならないで……)
ユリウェラも、メイドも、理由は違えどフェールが早く戻ってくることを祈っていた。
***
同じ頃。
「ユリウェラに口きかない宣言をされてしまった……」
ルヴァンが執務室で頭を抱えていた。ちなみに椅子に座っているがその上で体育座りをしている。
「これは陛下が悪いです」
「お前までそのようなことを……」
宰相が呆れた表情を浮かべている。
(あの執事がユリウェラ様のそばにいたからこの国は回ってたのだから)
宰相は内心でため息をついた。この国の現状をしっかり把握しているのはこの宰相——ピエスト・オマートンだけだった。
ユリウェラのこと以外何も考えていない国王。
フェールがいないとベッドからほとんど離れない王女。
(この国はもうやっていけないだろう。まぁ、私にとっては都合がいいがな)
ピエストはほくそ笑む。ピエストこそがルヴァンがユリウェラのこと以外何も考えられなくした張本人なのだから……
(あの執事が邪魔だったが勝手にいなくなってくれたから動きやすくなった)
「ピエスト、フェールを探せ。そうしないとユリウェラに口をきいてもらえない」
「かしこまりました」
ピエストは恭しく頭をさげる。
その顔は邪悪な笑みを浮かべていた。
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読んでくださりありがとうございます!
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