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1章 迷宮攻略はじめます
8. 元執事、遭遇する
しおりを挟む「フェール様、いらっしゃいませ」
ギルドに行くと昨日と同じように閑散としていた。お昼を回ったところだから、冒険者は既に出払っているようだ。
フィルナのところに行くと笑顔で迎えられる。良かった、リリアナが何かしているということはないようだ。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
「コアの換金を頼みたい」
「かしこまりました。こちらに出していただけますか?」
「あぁ」
集めたコアをごそっと出す。小さな金色のコアが受付のデスクに転がった。
「こ、これは、今迷宮で獲ってきたものですか?」
「そうだが」
「この量……もしかして一階層を攻略されましたか?」
「ああ、転移陣で戻ってきたな」
「迷宮に潜ったのは……」
「今朝だな」
俺の答えにフィルナが額に手を当てて天井を仰ぐ。
「すごい人って昨日で十分知ったと思ったけど、本格的にやばい人が来た気がするわ……」
「聞こえてるが?」
「す、すみません! すぐに換金してきます! 少々お待ちください」
ドタバタと奥に消えていく。フィルナがいなくなると俺はため息をついた。
「やばい人って……小鬼しかいない階層なんてすぐに攻略できるだろ……」
「あの迷宮って一回層罠が大量にあるのよね」
「そうなのか」
「そうなのかって潜ってきたんじゃないの? てかなんで私に話しかけられて驚かないの?」
「気づいていたから」
俺の独り言に答えたリリアナがため息をつく。ギルドに入った段階でいることには気づいていたが、まさか話しかけて来るとは。
「これでも気配を消すのは得意なのだけど」
「俺は気配を感知するのが得意なんだ」
「得意ってレベルで感知されたらたまったものじゃないのだけど」
「じゃー他にどう言えと」
「『俺、天才なんです』?」
「ただの痛いやつじゃねーか」
こいつはなぜこうも絡んで来るんだろうか。正直めんどくさい。
「で、潜ってきたんじゃないの?」
「潜ってきたが?」
「罠大量にあったでしょ?」
「浮遊を使って最初以外全部回避したから知らない」
「あなたって人は……」
なぜかこいつまで天井を仰ぐ。俺は最善な策をとった、ただそれだけのはずなんだが。
俺の表情から言いたいことを読み取ったのか、リリアナがため息をつく。
「浮遊なんて魔力大量に使うでしょ。それを罠を回避するためだけに使うなんて……」
「命の方が大切だからな」
「そもそも一階層攻略できるほど魔力が持つ方がおかしいのだけど」
「さぁ」
こいつと話していると疲れる。
会話を切り上げようとしたところでフィルナが戻ってきた。
「お待たせしま……リリアナ様、またフェール様を勧誘しにきたのですか?」
「そんなジト目を向けないでよ。勧誘じゃなくて観察しにきたのよ」
フィルナがため息をつく。てか聞き捨てならないことを今言ったよなこいつ。
「おい、観察ってなんだ観察って」
「言葉通りの意味だけど?」
正直俺よりこいつの方がばくないか?
「付き纏って来るなよ?」
「気づかないでくれるとありがたいわ」
「付き纏って来る気満々じゃねーか!」
断言しよう、こいつの方がやばい。
ため息しか出ない。あぁ、俺の幸せが逃げていく……
「とりあえずリリアナ様は落ち着いてください」
「私は別に落ち着いてるわよ?」
「じゃー正気に戻ってください」
「ひどい言い草」
リリアナが楽しげに笑う。フィルナは諦めたように首を振ってこちらに向き直った。
「フェール様、こちらコアの代金になります。ご確認ください」」
「あぁ、問題ない。ありがとう」
コアの代金は予想通り銅貨十枚だった。無造作にアイテムボックスに突っ込む。
「じゃー俺はこれで……」
「ねぇ、今から一緒にご飯食べに行かない?」
「嫌だ」
俺がさっさとギルドから出ようとするとリリアナが誘って来る。なんでこんなめんどいやつとご飯なんか……
「美味しいお店を紹介するわ。予約制でなかなか入れない名店よ」
「……行く」
不本意だが惹かれてしまった。しょーがない、我慢するか。
俺の様子にリリアナがまた楽しげに笑う。
……なんか腹たつ。
ーーーーーーーー
読んでくださりありがとうございます!
リリアナ、不穏な気配がしますね……。どんどん進んでいきますので楽しんでいただけたら嬉しいです!
ギルドに行くと昨日と同じように閑散としていた。お昼を回ったところだから、冒険者は既に出払っているようだ。
フィルナのところに行くと笑顔で迎えられる。良かった、リリアナが何かしているということはないようだ。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
「コアの換金を頼みたい」
「かしこまりました。こちらに出していただけますか?」
「あぁ」
集めたコアをごそっと出す。小さな金色のコアが受付のデスクに転がった。
「こ、これは、今迷宮で獲ってきたものですか?」
「そうだが」
「この量……もしかして一階層を攻略されましたか?」
「ああ、転移陣で戻ってきたな」
「迷宮に潜ったのは……」
「今朝だな」
俺の答えにフィルナが額に手を当てて天井を仰ぐ。
「すごい人って昨日で十分知ったと思ったけど、本格的にやばい人が来た気がするわ……」
「聞こえてるが?」
「す、すみません! すぐに換金してきます! 少々お待ちください」
ドタバタと奥に消えていく。フィルナがいなくなると俺はため息をついた。
「やばい人って……小鬼しかいない階層なんてすぐに攻略できるだろ……」
「あの迷宮って一回層罠が大量にあるのよね」
「そうなのか」
「そうなのかって潜ってきたんじゃないの? てかなんで私に話しかけられて驚かないの?」
「気づいていたから」
俺の独り言に答えたリリアナがため息をつく。ギルドに入った段階でいることには気づいていたが、まさか話しかけて来るとは。
「これでも気配を消すのは得意なのだけど」
「俺は気配を感知するのが得意なんだ」
「得意ってレベルで感知されたらたまったものじゃないのだけど」
「じゃー他にどう言えと」
「『俺、天才なんです』?」
「ただの痛いやつじゃねーか」
こいつはなぜこうも絡んで来るんだろうか。正直めんどくさい。
「で、潜ってきたんじゃないの?」
「潜ってきたが?」
「罠大量にあったでしょ?」
「浮遊を使って最初以外全部回避したから知らない」
「あなたって人は……」
なぜかこいつまで天井を仰ぐ。俺は最善な策をとった、ただそれだけのはずなんだが。
俺の表情から言いたいことを読み取ったのか、リリアナがため息をつく。
「浮遊なんて魔力大量に使うでしょ。それを罠を回避するためだけに使うなんて……」
「命の方が大切だからな」
「そもそも一階層攻略できるほど魔力が持つ方がおかしいのだけど」
「さぁ」
こいつと話していると疲れる。
会話を切り上げようとしたところでフィルナが戻ってきた。
「お待たせしま……リリアナ様、またフェール様を勧誘しにきたのですか?」
「そんなジト目を向けないでよ。勧誘じゃなくて観察しにきたのよ」
フィルナがため息をつく。てか聞き捨てならないことを今言ったよなこいつ。
「おい、観察ってなんだ観察って」
「言葉通りの意味だけど?」
正直俺よりこいつの方がばくないか?
「付き纏って来るなよ?」
「気づかないでくれるとありがたいわ」
「付き纏って来る気満々じゃねーか!」
断言しよう、こいつの方がやばい。
ため息しか出ない。あぁ、俺の幸せが逃げていく……
「とりあえずリリアナ様は落ち着いてください」
「私は別に落ち着いてるわよ?」
「じゃー正気に戻ってください」
「ひどい言い草」
リリアナが楽しげに笑う。フィルナは諦めたように首を振ってこちらに向き直った。
「フェール様、こちらコアの代金になります。ご確認ください」」
「あぁ、問題ない。ありがとう」
コアの代金は予想通り銅貨十枚だった。無造作にアイテムボックスに突っ込む。
「じゃー俺はこれで……」
「ねぇ、今から一緒にご飯食べに行かない?」
「嫌だ」
俺がさっさとギルドから出ようとするとリリアナが誘って来る。なんでこんなめんどいやつとご飯なんか……
「美味しいお店を紹介するわ。予約制でなかなか入れない名店よ」
「……行く」
不本意だが惹かれてしまった。しょーがない、我慢するか。
俺の様子にリリアナがまた楽しげに笑う。
……なんか腹たつ。
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読んでくださりありがとうございます!
リリアナ、不穏な気配がしますね……。どんどん進んでいきますので楽しんでいただけたら嬉しいです!
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