赤ちゃん神に願いを! 俺はお前で(プレイした)、お前の願いを叶える者(お前自身)だ!

虎口兼近

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完全版【002】:変態は歓喜し、鬼畜無理ゲーは泪を溢す!(2)

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かあちゃんと一緒に谷底まで落ちていく。三百十九回目の落下になると、感情かんじょう麻痺まひし、俯瞰ふかんで自分を見ている事に気付く。但し、両親の死をゲームだと割り切れるほど、俺は強くないようだ。



此処ここまでは試行しこう錯誤さくごをした結果、自分でも満足がいくルートで推移すいいしている。後はあの場所までの、最適解さいてきかいみちびすだけだった。



かあちゃんに別れを告げた俺は、いつもチクっと胸に痛みを感じていた。



「あぅあぅあぅ!(よし! いくぞ!)」



道無みちなき道だと思っていた雪が積もる谷底を、俺は匍匐前進はいはい颯爽さっそうと進み始めた。



「あぅ!(此処ここまでは、間違いない!)」



追手おっての赤色のしるしも、かあちゃんの灰色はいいろしるし辿たどいた。俺がいないので、周辺しゅうへん探索たんさくしているようだ。

脳裏マインドに浮かぶ周辺しゅうへん地図ちずと、しろ一色いっしょく白銀はくぎん世界せかいとをわせながら、慣れた動きで時間タイムを稼ぐ。

後残り二十三分と十四秒で、俺は行動不能お亡くなりになる!



「あぅあぅ!(此処ここまでは、問題はないか!)」



追手おってが、俺の匍匐前進はいはい痕跡こんせきを発見するのに、後三十二秒。

吹雪ふぶきはじめた粉雪こなゆきが、俺の痕跡こんせきかくしている。



俺は今、谷底にある氷道こおりみちの割れ目の前にいた。

アイキャン翔べるフライ! そう信じて、思いっきり後ろ足で氷道こおりみち蹴飛けとばした。



ヒュ――――――――――――! 



勿論もちろんべるはずもなく、割れ目の中に落ちていったのだった。







「おい! 此処ここ痕跡こんせきが消えているぞ!?」



「こりゃ、の割れ目の中に落ちたんじゃないか?」



追手おっての三人組は、割れ目をのぞき、りるか断念だんねんするか思案中しあんちゅうのようで、割れ目地点からしばらく動かない。



「あぅ!(成功だ!)」



脳裏マインドに浮かぶ周辺しゅうへん地図ちずの赤色のしるしが、とおざかっていく。



三百十九回目で、初めて追手おっていたのだった。真逆まさか割れ目に飛び込むが正解だとは思わなかった。問題もんだいなんか出すんじゃない! ワクワクするだろう! 俺はのルートを設定した制作者クリエイター賛辞さんじを送る! スッゲぇおもしろい!



おっと、喜んでいる場合じゃない。残り十九分五十八秒だった。



ズボッとさった雪のクッションから抜け出した俺は、目的地に向かって進み始めた。



此処ここは洞窟になっているのか? 



鍾乳洞しょうにゅうどうのように、氷柱つらら天井てんじょうを埋め尽くしている。俺は奥へ奥へと匍匐前進はいはいで進んでいく。そろそろ身体がかじかみ、スピードが落ちる時間だ。



ただ寒風かんぷうかないのは、ありがたかった。れで少しでも、寒さで身体が麻痺まひしてくる時間をかせぎたい。



地味じみ匍匐前進はいはいは、つらい。洞窟どうくつの中は、そこえがして、一段いちだんこごえが進む。



ああ、感覚かんかくが無くなって来た。時間は残すところ、一分四十八秒。自分の行動こうどう限界げんかい時間じかんとの戦いだった。 



フウッと、寒風かんぷうく。



メキッ! 



ズブッ!



天井てんじょう氷柱つらら地面じめんさる。衝撃しょうげきで、次々つぎつぎ氷柱つららが時間差で落ちて来た。



うっひょー、なん此処ここに来て、最高さいこうのアトラクションじゃないかと、ゲーム脳の変態は歓喜かんきいたのだった。





<<個体名【カルマ】の生命力HPが【0】になりました!>>





あっ!




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「お帰りなさいませ、【カルマ】さま。プレイ時間は【百八十一日十八時間四十九分二十二秒】でした。プレイ結果によって、【三百八十三】英雄えいゆうポイントを獲得かくとくです! リスタートされますか、それともプレイアバター【カルマ】でのプレイを終了されますか?」




ふー、スッゴく痛かった。氷柱つららが身体にさり、五体ごたい爆散ばくさんするなんてヤバぎる。天井を見上げながら、突き進むには無理がある。行動限界時間まで残り一分四十三秒。一気に匍匐前進はいはいで進み抜けないとけない。正解せいかいのルートがあるはずだ。ふむ、試行錯誤トライエンドエラーするしかないな。考えてみれば、解る事だ。ふっふふふふ。楽しい、久々ひさびさにワクワクが止まらない。あの先には、なにがあるんだろう。なにが待っているんだろう。



「・・・・・・リスタートのようですね、【カルマ】さま。現在【創造神の試練】そうプレイ時間が、【五万七千九百八十九日二十三時間三分四十八秒】でご座います。精神に異常いじょう数値すうちが、若干じゃっかんていますが、如何いかがされますか?」



「ああ、氷柱つららされて、身体からだ四散しさんした痛みで、異常いじょう数値が出たんだと思うよ? まあ気にするほどでもないから、心配しんぱいさせてゴメンね、ジョドー! 楽しかった、最高さいこうのシナリオだね! れを作った制作者クリエイターは、天才てんさいだ! でも、少し疲れたから一旦いったん【ゲームアウト】するよ! ありがとう、ジョドー!」 



「・・・・・・・・・」



無表情の執事は、何も言わずに、だまったままだった。



あ、あれ? バグかな、ジョドーがかたまった? 



「ジョドー、大丈夫?」



「・・・・・・失礼しつれいいたしましたカルマさま。問題ありません。ゲームアウトまで、三! 二! 一! ご利用ありがとうご座いました! またのお越しをお待ちしております!」



「ありがとう、ジョドー! また来るよ!(ジョドーがバグるなんて、初めてだ。やっぱり第二陣だいにじん一千万人が増えるから、調整ちょうせい所為せいかな?)」 



【カルマ】の身体が、徐々じょじょにエフェクト処理しょりされ分解ぶんかいされて、消えていく。



【アルグリア戦記の総合案内人】であるジョドーは、プレイヤーネーム【カルマ】を見送った後、嘆息たんそくした。



現在プレイ中の一千万のプレイヤーの中で、シナリオ【創造神の試練】を連続れんぞくそうプレイ時間で【五万七千九百八十九日二十三時間三分四十八秒】もプレイするプレイヤーは皆無かいむだった。

プレイヤーの多くは「なん鬼畜きちく無理むりゲー(鬼畜きちくぎて、クリアは無理だろって言うゲーム)は!」と罵詈ばり雑言ぞうごんらして、別のシナリオに変更へんこうして二度と【創造神の試練】をプレイしないのがジョドーの日常にちじょうだった。



「くっくくくく。流石さすがは、カルマさま! 【廃神オーバーアウト】と呼ばれる常人じょうじんななうえを、颯爽さっそうけるおかただ! たしかカルマさまの感覚かんかく調整ちょうせいシステムは、驚愕きょうがくの百パーセント! 通常(現実世界の痛覚は五十パーセント)の痛覚の二倍! 身体からだ氷柱つららされて四散しさんしたなどと、普通は衝撃しょうげき激痛げきつうで、精神が即死そくしするのですが。のジョドー、!」





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『ぽ~ん♪ お帰りなさい、マスター! 【アルグリア戦記】は、如何どうでしたか?』



【ポータルサイトの案内人】のナリアに、いつものごとむかれられる。

あお毛玉けだまたぬきは、空中でつぶらなあおひとみ好奇心こうきしんき出しにして、愛苦あいくるしく聞いてくる。



『ナリア、すごく楽しかったよ! 今回は、鬼畜きちく仕様しようと呼ばれるシナリオ【創造神の試練】でプレイをして最高だったよ!』



鬼畜きちく仕様しようってなに、マスター?』



仮想現実世界のエントランスである【ポータルサイトの案内人】の【ナリア】は、プレイヤーネーム【カルマ】専属せんぞく育成型ノーチュリングタイプノンプレイキャラクターである。

現在、現実世界の一秒が、仮想現実世界【アルグリア戦記】では【最大延長マキシマムエクステンション】で三千百十万四千倍に相当そうとうする、【三千百十万四千分の一秒(三百六十日)の世界】を構築こうちくしている。

此処ここポータルサイトでの時間の流れは、現実世界の一秒に対して二十四倍の【二十四分の一秒の世界】。れが、れまでの【仮想ヴァーチャル現実リアリティ規定ルール】の原則だった。

何故なぜならば人類じんるい世界せかいは、仮想現実の世界に生活の基盤きばん徐々じょじょに置くようになったが、仮想現実の生活と現実の生活のバランス感覚かんかくくずれ、精神と記憶に異常いじょうきた事例じれい散見さんけんされたからだった。

対策たいさくに、な現実の一秒が仮想現実世界での二十四秒を、【最大延長マキシマムエクステンション】時間とした規定がとなったのは、必然の流れだった。

れから百八十三年後、人間の脳の認識を克服するシステムとして、個人専用の【ポータルサイトの案内人】を設置した。



最大延長マキシマムエクステンション】の開発かいはつ当初とうしょは、現実の世界の一秒が仮想現実の世界での三百六十日(三千百十万四千分の一秒)に相当そうとうする時間じかん経過けいかに、人間の脳と精神がえられなかった。

最大延長マキシマムエクステンションでの三千百十万四千分の一秒の世界を謳歌おうかしていたのは、【不死身ふじみ機械きかい生命体せいめいたい】だけだった。

何故なぜ不死身ふじみ機械きかい生命体せいめいたいは、最大延長マキシマムエクステンションの世界に適応てきおうが出来たのか?

の答えは至極しごく簡単かんたんだった。

不死身ふじみ機械きかい生命体せいめいたいは、つね記憶きおくのバックアップをっていたからだった。



其処そこで【生身なまみ人間にんげん】でも、記憶きおくのバックアップを可能にするシステム【ポータルサイト】が開発された。

現実世界と仮想現実世界のエントランスで、【記憶の記録メモリーバックアップ】をする個人専用の案内人ナビゲーター設置せっちされた。

れにより、人間の認識にんしき限界げんかい克服こくふくするシステムが完成したのだった。



では何故なぜ案内人は、育成型ノーチュリングタイプになったのか?

インダストリア社の建前たてまえとしては、案内人の全て(表情・仕草・声など)でマスターに愛と信頼を向け、仮想現実と現実の世界で疲弊ひへいした精神こころやす効果があるからだった。

ただし、本音としては、育成する過程かていってマスターの思考・行動が案内人に反映はんえいされていく中で、論理ろんりかんの確認と危険きけん人物じんぶつ排除はいじょを目的としていた。



鬼畜きちく仕様しようって言うのは、すごくワクワクして、ドキドキする最高さいこうの内容・仕組みの事だよ、ナリア!』



『じゃあ、マスター! ナリアも鬼畜きちく仕様しようの案内人になる! 鬼畜きちくのナリア! かっこい~!』



あお毛玉けだまが、空中で乱舞らんぶして、喜びを身体全身であらわしていた。



『えっ、そんなに鬼畜きちく仕様しようこだわらなくても良いんだ、・・・・・・よ?(え~と、マズったかな? まっ、っか、特に問題はないはずだ!)』



ところでマスター、れから如何どうされますか? 少し精神に異常いじょう数値すうちが確認されますが?』



『ああ、別に大した事じゃないよ! 少し疲れたから、【ダイブアウト】するよ! じゃあ、またねナリア!』



あおひとみあお毛玉けだまごとたぬきが、了解りょうかいとばかりに、空中くうちゅう可愛かわいらしくうなずく。



『いってらしゃいませ、マスター!』



『ああ、行って来る!』





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「お帰りなさい、マスター? 早いお帰りですが、何かあったのですか?」



「ただいま、ミリィ! 大した事じゃない、少し疲れただけだよ!」



心配そうなミリィの声に、俺は、心配を掛けてしまったと反省した。俺が仮想現実世界にいた時間は、現実時間でたったの約二分四十九秒だった。

【ポータルサイト】内の時間の流れは、現実の【二十四分の一秒】で、【アルグリア戦記】内の時間の流れは、現実の【三千百十万四千分の一秒】。

全く凄い発明だ。たった数分で、悠久ゆうきゅうの時間を過ごせるんだからな。流石さすがは、インダストリア社だと俺は感心をあらたにした。




「精神に問題はないんですね?」



「・・・・・・少し、本のちょびっとだけ、異常いじょう数値すうちが出た
だけだ、・・・・・・よ?」



「ほう、どの口がおっしゃるの・で・す・か?」



「ごめんなさい。ちょっとだけ、痛かった、・・・・・・ような?」



ああ、ああ~! ミリィのひとみが、徐々じょじょに冷え込んでいく。ミリィの逆鱗げきりんれてしまったようだ。だめだ、こりゃ。・・・・・・当分機嫌が悪いぞ。



ミリィは白いソファに腰を掛け、自分のとなりに座りなさいと、ポンポンとソファを叩く。



「ごめんね、ミリィ! 機嫌を直してよ!」



「マスター?」



はい、ただいま。俺はミリィのとなりに座り、ミリィが自分のひざを叩くと、観念かんねんしてひざまくらのお世話になるのだった。

やわらかい、あたたかくて、においだ。

ミリィは、優しく俺の頭を静かにで始める。の内に、俺はいつの間にか静かに寝息を立てるのだった。



【オートドール】には感情が設定されていない。何故なぜなら感情は、理性的な判断を狂わせる一種のバグを生む。其処そこで販売元のインダストリア社は、感情の設定を無くし、人類じんるい補助ほじょ徹底てっていさせた。

機械であるオートドールに感情は必要ない。只々ただただ、人間に奉仕ほうしする存在そんざいだった。



「マスター、無茶むちゃをしないで下さいね、・・・・・・」



そうやさしく、かなしくつぶやいたミリィのひとみから、なみだこぼちた。





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れで、如何どうだ!」



俺は氷柱つらら落下らっか位置を、目視もくし脳裏マインド地図マップを同時にながら、かんかわして匍匐前進はいはいで進んでいく。

最初に氷柱つらら爆死ばくししてから、合計百五十八回。精神の異常いじょう数値すうち危険きけん規定きていに達しては、【ダイブアウト】してミリィに叱られ、膝枕ひざまくらいやされる羞恥しゅうちプレーを送っていた。



「良し、行けるぞ!」



此処ここ半身はんしんを右側に回避かいひ此処ここで三秒待つ、右にゴロン、三回まわって、前へいつ匍匐前進はいはい



残り行動制限時間お亡くなりになるまで、【五十二秒】!



おお! 抜けた! 俺は長い洞窟どうくつのアトラクションを抜け、あおじろまぶしい広場に、慎重しんちょう匍匐前進はいはいで進んでいく。



脳裏マインド地図マップ表記ひょうき名称めいしょうが、【ハルベルト渓谷けいこく洞窟どうくつ】から【はな水晶すいしょう】に変わる。



良し、成功だ! 俺は小躍こおどりするいきおいだったが、のアバターネーム【カルマ】の身体では土台どだい無理むりだった。



かべ一面いちめんには、あお水晶すいしょうはなのように咲いていて、天井てんじょうの中心には、あいはなが咲き、の周りにあおはなあおはなあおはなと囲む様に、水晶華クリスタルフラワーが咲き乱れていた。



慎重しんちょう慎重しんちょうに、俺は匍匐前進はいはいで進む。残り行動こうどう制限せいげん時間じかんが【二十秒】を切った。



「あぅ!(もう少しだ!)」



俺は、目的の大きなあおじろい山に辿たどり着いた。

さあ、時間は無いぞ! 何処どこだ、何処どこなんだ?



俺はあおじろい山の周りをまわり出す!

残り【十三秒】! くっ、何処どこなんだ?



十二秒! 十一秒! 十秒! 九秒! 八秒! 七秒! あっ! 六秒! アレか? 



俺の脳裏マインドに、ひらくものがあった!



俺は残り時間【三秒】で、あおじろい毛皮におおわれた山の乳房ちぶさに吸い付いたのだった。



<<個体名【カルマ】が称号【氷狼ひょうろう加護かご】を獲得しました!>> 



やった、なんとか正解に辿たどり着いたようだ。

あ、あったかい、気持ち良い。やわらかくあたたかい乳房ちぶさで、至福しふくとき味合あじわう俺だった。



「あぅあぅあぅ!(ウグウグっ! ちち美味うまぎる、ゲポっ!)」



俺の脳裏情報マインドインフォメーションに浮かぶ、ステータス表示の生命力(HP)は【1】ポイントでギリギリセーフだった。

間に合った・・・・・・



スゥー、スゥーーーーー



あっ、なんか、・・・・・・



安心した俺は、不覚ふかくにも睡魔すいまに負けて眠ってしまったのだった。





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【情報表示】:▼

氏名NAME:【カルマ】

個体LV:【1】

備考:▼

年齢:【0歳】

種族:【森精霊人エルフ普精霊人ヒューマン混血クオーター

身分:【未設定】

職業:【未設定】

称号:【氷狼ひょうろう加護かご】▼

   【氷狼ひょうろう加護かご】:寒冷かんれい耐性たいせいおおかみけい生物せいぶつ威圧いあつ魅了みりょう効果こうか

才能スキル:【0】※封印ふういん

説明:▼
運命うんめい宿命しゅくめいもう

【状態表示】:▼

生命力HP:【1/549】 ↑543UP

魔力MP :【8/1999】 ↑1991UP 

精神力MSP:【9/1095】 ↑1086UP

持久力EP:【1/21】 ↑15UP

満腹度FP:【23/100】

【能力表示】:▼

筋力STR   :【1】※封印ふういん

耐久力VIT  :【1】※封印ふういん

知力INT   :【1】※封印ふういん

敏捷AGI   :【1】※封印ふういん

器用DEX   :【1】※封印ふういん

魅力CHA   :【1】※封印ふういん


【部隊編成表示】:▽



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『おい、起きろ! おい!』



う、う~ん! ミリィ~もう少しだけ寝かしてよ~!

俺は微睡まどろみの中で、ミリィに懇願こんがんした。



ドンッ! グハッ!



俺は背中を襲った突然の衝撃しょうげきに、一瞬いっしゅんで、息を吐き出し覚醒かくせいした。



くっ、痛い!



痛む背中に手を伸ばしてさすりながら、俺は俺を襲ったあおじろい山を見上げたのだった。



「あぅあぅあぅ!(ひどいな、叩き起こすなんて!)」



巫山戯ふざけるな、お前は何者なにものだ? 此処ここがハルベルト山脈、われ縄張なわばりだと知っての狼藉ろうぜきか?』



俺を睥睨へいげいするあおひとみ射貫いぬかれたが、全くこわくは無かった。此奴こいつには、毎回お世話になっているからな。

あおじろい毛皮に身を包んだ巨大な狼が、俺を威圧いあつしていたが、俺にはかない。

何故なぜなら【アルグリア戦記】をプレイしていれば、必ず倒す相手だからだった。だが、現状の能力ではコイツには、まんいちにも勝てない。理由は簡単、コイツが【アルグリア戦記】で最強の十個体の内の一体だからだった。





アルグリア大陸には、決して触れてらない存在そんざいがある。

れは【十の災厄アンタッチャブル】と呼ばれている存在そんざいだった。アルグリアの住人達は、たましいに、脳髄のうずいの恐怖をきざみ込まれている。

近年きんねんでは、【十の災厄アンタッチャブル】の一体である【麒麟きりん】にって、国が一つ滅んでしまった。れも麒麟きりんの住む霊山れいざん不死山ふじやま】の禁忌きんきを破った事が原因で、一晩ひとばん一国いっこくずみの様に消滅しょうめつしたのだった。

圧倒的あっとうてきな力で、人類じんるい超越ちょうえつした存在そんざい。触れてはならない存在そんざいがあると、アルグリアの住民達に知らしめる存在そんざい

住民達は神に祈りをささげ、心の安寧あんねいる。

十の災厄アンタッチャブル】とは、絶対に触れてはならない【不可避ふかひ神罰しんばつのものだった。



さて、れから如何どうするか? と考えたところで重大な事に気付いた。



そもそも目的地であるあおじろ巨狼きょろう辿たどり着いたが、現在いまの俺では勝てるはずもなく、全くのノープランだったと言う事に衝撃しょうげきおぼえた。

まあ、行き当たりバ・・・・・・ゲフンゲフン! 臨機応変りんきおうへんに対応するスタンスだった。そう、そう言う事にしておこう。 



ふむ、にらんでいるな。そんなに見つめられると、・・・・・・れるじゃないか。



「あぅあぅあぅ!(やあ、俺はカルマ! 何者なにものもなにも、見た通り、赤ちゃんだ!)」



ドーン! 俺はペタンとお尻を地面に付けた状態で、堂々どうどう名乗なのりをげた。そう、赤ちゃん言語ことばで!



ゴクリ、・・・・・・



さあ、如何どうころぶか、出たとこ勝負の会話が続く。つ、・・・・・・続くよね? 行きなり戦闘とか、ご勘弁かんべんを。

俺が、巨狼きょろうをじ~っと見つめている。巨狼きょろうも俺を見つめる。お互い、目で語っていたが。



会話が全く成立していない? 俺はコイツの言葉が、聞こえる。コイツは、俺の赤ちゃん言語ことばを、解らない。

れって、んでるよね? そう俺が思っていると。



『カルマか、良い名前だ。だが、赤ん坊が一人で来るところでは、ないぞ此処ここは?』 



「あぅあぅ?(俺の言葉が、解るの?)」



『ああ、【念話ねんわ】で話しているからな! 想いを伝える事も、集中すれば相手の心の想いも聞ける! ただ、相手が心をブロックしていたら、聞こえないがな!」



へー、れは初めて知った。念話ねんわスキルって、一方通行いっぽうつうこうじゃなかったのか。れは良い事を、聞いたな。



俺は、目の前の巨狼きょろうに、俺の事情じじょうを話した。天涯孤独てんがいこどくになった俺に、巨狼きょろうはやけにやさしかった。

あれ、コイツこんなやつだっけ? 疑問を浮かべる俺の視線しせんの先には、脳裏情報マインドインフォメーションの情報表示に記載きさいされている称号しょうごうがあった。【氷狼ひょうろう加護かご】の称号しょうごう説明せつめいらんにある文言もんごんに意識を、集中させる。

すると浮かびがって来る三角さんかくボタンを、意識で押す。

何々なになに寒冷かんれい耐性たいせいと狼系生物へ威圧いあつ魅了みりょう効果こうか

マジか、俺は意識を集中して文言もんごんる。

寒冷かんれい耐性たいせい、読んで字のごとく寒さに耐性たいせいが付く。威圧いあつは、狼系の生物をしたがわせる力と。魅了みりょうは現在の【魅力みりょく×10倍】か。

俺の状態表示の魅力みりょくは、封印ふういんため【1】ポイントで固定こていだが、【アルグリア戦記】には隠された秘密がある。れはマスクデータと呼ばれるかくされた情報だった。れの存在を理解している者は少ない。少なくとも、トップランカーは確実にはずだ。



データ表示に、表示されないかくされた情報。俺の表面上の魅力みりょくは、【1】ポイントだが、マスクデータ上は、【10】ポイントだ。狼系生物限定と言う注釈ちゅうしゃくは付くが。

FHSLG(ファンタジー歴史シミュレーションゲーム)【アルグリア戦記】にいて、完全かんぜん制覇せいはでクリアするには、【マスクデータ】と【称号効果】、の二つの理解が不可ふかけつである。

完全かんぜん制覇せいはとは、アルグリア戦記にいて、最上さいじょう最高さいこう結果リザルトである。通常の制覇せいはなにが違うかと言えば、不可避ふかひ神罰しんばつである【十の災厄アンタッチャブル】の十個体全ての討伐とうばつに、アルグリア大陸全ての人類じんるい国家こっかと、モンスターのコミュニティを統一とういつする事だった。



天涯てんがい孤独こどく、・・・・・・なら、大人になるまで、われ此処ここで住めば良い』



えっ、マジッスか? 

俺にはコイツの行動が、ぐにわかった! 他のゲームで何度か、こういったシーンを見た記憶きおくがある!

そう、コイツは、のだ!


たしラブファイト恋愛系のゲームだったなぁ。



もう、の流れに乗るしかない。



「あぅあぅ!(よろしく、!)」



れが最適解さいてきかいだと、確信かくしんしたカルマは、もう一人の微笑ほほえんだのであった。







ウォーーーーーン!



狼の鳴き声が、渓谷けいこく木霊こだまする。狼の群れが、熊を包囲ほういしながら、的確てきかくに傷を付け弱らせていく。

統率とうそつされた狼の群れは五匹。の内の一匹の背に乗る上半身じょうはんしんはだかの若い男。

熊は身体中から、赤いエフェクトをらし、ついに倒された。



<<個体名【カルマ】の個体レベルが上がりました!>>



「良し、ったな!」



スノーベアを倒した!

エフェクトが立ちのぼしかばね脳裏情報マインドインフォメーションで、スノーベアの生命力が【0】ポイントになったのを確認してから、ゲームシステムの収納しゅうのうれを瞬時しゅんじ回収かいしゅうした。



「アイン!」



の言葉だけで、五匹は次の獲物えものを目指すのだった。

狼の背にられながら、五匹ながらも群れを統率とうそつするカルマ。

白い雪原を疾走しっそうする狼の群れは、迷いのない動きで、スノーディアにおそかった。





あの日、母さんと家族となってから十八年がった。俺もようや成人せいじんだ。の世界、アルグリア大陸の成人せいじんは十八歳。成人せいじんしたら此処ここから旅立つ計画に変わりはない。



身体は百七十五センチくらいひとみの色は、かあちゃんと同じようにあおく、髪はとうちゃんと同じく金髪きんぱつだ。きたえ上げられた上半身じょうはんしんには、一切いっさい贅肉ぜいにくもなくはがねごとくしなやかだった。

母親は生粋きっすいのエルフで、父親はエルフとヒューマンのハーフ。カルマは見た目はヒューマンだが、エルフとヒューマンのクォーターだった。



ただ、身体が大きくなって、個体レベルが上がっても、状態表示の能力値は【1】ポイントで固定こていだ。いつか、封印ふういんくか、れとも【1】ポイントのなにかをつかむか、と期待の想いで胸が高鳴たかなっていた。



カルマ自身はうに気付いる。の可能性が、圧倒的に低い数値である事を。



そして、の圧倒的に低い数値がカルマのトキメキを爆上ばくあげさせていたのだった。

なに鬼畜きちく仕様しようだ、のシナリオは、かみシナリオ! かみゲー(かみごとき高評価のゲーム)じゃないか!

現在までの総死亡|(ゲームオーバー)回数は、千五百十九回。

アルグリア大陸の一年は、一ヶ月が三十日で十二ヶ月の三百六十日。プレイヤーネーム【カルマ】の【創造神の試練】での総プレイ時間は、【一万千九百二十八年三百九日七時間三十二分三秒】におよんでいた。

だが、現実時間では【約三時間十九分】しかっていない。まさしく悠久ゆうきゅうの歴史をきざむゲームであった。



生肉なまにくも食べれるようになった。【ダイブアウト】して、ミリィの作る料理が美味うまぎて、涙を流した事も記憶に新しい。



ただし、一切いっさいの武器が持てなかった。筋力値【1】ポイントは伊達だてではなかった。耐久値【1】ポイントは、かみ装甲そうこうを超える弱さで、日々生命力(HP)を上げ続けていなければ、最悪の状況に追い込まれていただろう。

カルマは、かみシナリオ【創造神の試練】の楽しさに、面白さに、やり込みに歓喜かんきしたのだった。



「良し! ゼイン!」



大きく強靱きょうじんな身体を持つスノーディアは、氷の枝分かれした角で、狼をぎ払おうとした一瞬いっしゅんすきを付いて、他の狼がみぎうしあしみ付き負傷ふしょうさせた。拍子ひょうしに、身体のバランスがくずれ、地面に右後ろからくずれ落ちる。すきを他の狼はのがさず、一気に首元へ牙を立てた。赤いエフェクトが、首元、足元かられ出しスノーディアはの動きを止めたのだった。

簡単に倒せた、予想外の収穫しゅうかくだった。

そうか、足元か、バランスをくずせば大物おおものでも簡単に狩れるな。



お、もう一匹いるな。良し作戦会議ブリーフィングだ!



そうして、俺は仲間と意思いし疎通そつうはかるのだった。念話ねんわスキルがつかえれば簡単だが、無いものは仕方がない。俺は身振みぶ手振てぶりで、仲間の狼達に狩りの仕方と合図あいずを教えていく。



最初の群れの始まりは、一匹からだった。

俺が乗っている【アイン】は、最初は親とハグれた雪狼|(スノーウルフ)の子狼ころうだった。

最初はおびえて、ふるえていたアインを介抱かいほうして、育てたのは俺だ。

勿論もちろん、アインと名付なづけたのも俺で、アインがもう一人の家族になるのにそう時間は掛からなかった。



「良し、ゼイン!」



もう一匹のスノーディアも、ゼインがとどめをし、なんなく倒した俺達は、母さんの待つねぐらに帰るのだった。



「ハウス!(家へ戻るぞ!)」



俺は群れに号令ごうれいけ、アインにしがみ付く。アイン達は、ゼイン以外は全員【シルバーウルフ】に進化した個体達だった。

今回の狩りは、ホワイトウルフから【ゼイン】を、シルバーウルフへと進化させるためのものだったが、進化にはあとわずかに経験値が足りない。

だが、無理は禁物きんもつ。アイン以外は、死んでしまっても再度復活するダンジョンモンスターだが、死んでしまうと俺の部隊ぶたい編成へんせいからはずれ、初期配置設定でのリスポーンとなる。

リスポーンされたダンジョンモンスターは、記憶も経験値も全て初期値に戻ってしまう。

死にはしないが、俺と経験した記憶が消えた個体は、再度さいど部隊ぶたい編成へんせいで組み込んで育成しても、前回と同じ個体には育たない。

能力数値や、スキルが同じでも、全く別の個体となる。

れは想いが、共にした経験が違うからだった。俺の仲間は、えのく物じゃない。俺の手腕しゅわんひとつで、アッサリ全滅ぜんめつもありる。細心さいしんの注意と、大胆だいたんな行動のバランスを取りながら、ダンジョン【ハルベルト山脈】を今日もける。



後もう少しで、【華水晶はなすいしょう】がある洞窟どうくつ辿たどり着くと言う時、脳裏地図マインドマップでアイスタイガーを発見した。



「アテンション!(警戒けいかい!)」



俺の号令ごうれいで、警戒けいかい陣形じんけい瞬時しゅんじ移行いこうするも、の走りは止まらない。

何故なぜなら、俺の部隊に編成へんせいしている仲間とは、言葉は交わせないが、脳裏情報マインドインフォメーション共有きょうゆうする事は出来る。仲間は文字は読めないが、周辺しゅうへん地図ちずと俺の号令ごうれい瞬時しゅんじ部隊ぶたい行動こうどう移行いこう出来できるのだった。



距離は遠くはなく、意識でクリック確定かくていした俺の脳裏マインド地図マップからは、獲物えもののがれられない。

俺の部隊は、認識にんしき共有きゅうゆうしている脳裏地図マインドマップ脳裏情報マインドインフォメーションの絵文字で、部隊指令をはっする。アイスタイガーは、直ぐ近くにるので、声がげられない。黄色の印イエローマークは、パッシブモンスターを表す。此方こちら認識にんしきすれば、点滅てんめつする。点滅てんめつしていないのは、風下かざしもから近付ちかづ認識にんしきされていないからだ。

【アルグリア戦記】では、においもなにもかもが、現実げんじつ同様どうように感じられる。唯一ゆいいつちがところは、血が流れないで、エフェクトが流れこぼれる事だけだった。血の鉄臭てつくさにおいも、れればなんて事はない。


人間のれって結構けっこうすごい。順応じゅんのうしないと生き残れない本能ほんのうなのだろうか。



かく、アイスタイガーは強敵きょうてきだ。此処ここのダンジョンにはリポップされないモンスター。つまり、ダンジョンモンスターではないフィールドモンスターだ。



迷い込んだか? れが一匹以上なら、母さんがだまっていない。何故なぜなら、のダンジョンであるハルベルト山脈は、母さんの縄張りテリトリーだ。母さんのでは、複数の進入を許さないからだった。



獲物えものとの距離が、二百メートルを切った。



なんとか気付かれずに、布陣ふじんく事が出来そうだ!



俺は一息ひといきを付き、部隊全員に脳裏情報マインドインフォメーションで、ある絵文字を共有きょうゆうする。

良く見ると最高さいこうの形だった。絶好ぜっこうの場所で、絶好ぜっこうのタイミングで、俺は脳裏情報マインドインフォメーション骨付ほねつき肉の絵文字を十から順番じゅんばんに減らしていき、攻撃のタイミングをに伝える。



五秒! 四秒! 三秒! 二秒! 一秒! ゴー!



アイスタイガーの十時じゅうじの方向から、シルバーウルフをリーダーとするホワイトウルフのベータ部隊が注意を引き付け、四時よじの方向から俺のアルファ部隊がソッとしのひそむ。れにともな九時くじの方向からガンマ部隊が陽動ようどうを行う。アイスタイガーは、狼の群れに威嚇いかく雄叫おたけびをげた。



もうぐだ。一時いちじの方向からデルタ部隊が到着とうちゃくし、再々度さいさいど陽動ようどうける。さあ、仕上しあげだ。



三方向さんほうこう威嚇いかくうなりをげたアイスタイガーは、ようやく自分の不利ふりさと逃亡とうぼうこころみる。だが遅かった。すで盤面ばんめんではチェックメイトだった。



アイスタイガーの逃走とうそうルート上で、雪の中に、しげみに気配けはいかくしたアルファ部隊の牙がアイスタイガーの四肢ししらいく。一方的な狩りだった。アイスタイガーは反撃はんげきすら行えずに、赤いエフェクトをらしながら絶命ぜつめいした。



<<個体名【ゼノン】の個体レベルが上がりました!>>

<<個体レベル【20】に達したので、【進化】が可能になりました!>>

<<進化先は【シルバーウルフ】・【シャドウウルフ】から選択可能!>>



ゼノンの個体情報を、脳裏情報マインドインフォメーションの画面で確認する。





----------



【情報表示】:▼

氏名NAME:【ゼノン】

個体LV:【20】

備考:▼

年齢:【23歳】

種族:【白狼精霊人ホワイトウルフ

身分:【カルマ遊撃ゆうげき部隊ぶたい隊員たいいん

職業:【戦士】

称号:【プレイヤーの眷属けんぞく】▼

   【プレイヤーの眷属けんぞく】:ゲームシステムの一部を共有きょうゆう可能かのう

才能スキル:▼
   【身体強化LV6】【寒冷耐性LV5】【牙撃LV6】【爪撃LV4】
   【疾走LV4】

説明:▼
【ハルベルト山脈を縄張りとするホワイトウルフ。プレイヤーの眷属けんぞく。】

【状態表示】:▼

生命力HP:【78/78】 

魔力MP :【67/81】  

精神力MSP:【54/58】

持久力EP:【73/75】 

満腹度FP:【31/100】

【能力表示】:▼

筋力STR   :【67】

耐久力VIT  :【48】

知力INT   :【36】

敏捷AGI   :【93】

器用DEX   :【27】

魅力CHA   :【34】


【部隊編成表示】:▽



----------



ゼノンの種族に意識を集中させると、三角さんかくの表示が表れる。れをポチッと意識いしきで押す。



----------



種族:【銀狼精霊人シルバーウルフ】▼

   【銀狼精霊人シルバーウルフ】:雪狼精霊人スノーウルフの上位種族。
             寒冷地帯では、能力上昇(大)効果発生。



種族:【影狼精霊人シャドウウルフ】▼

   【影狼精霊人シャドウウルフ】:森狼精霊人フォレストウルフの上位亜種族。
             スキル【影魔法】が使用可能。



----------



俺は迷いなく、シルバーウルフを選択せんたくした。

まぶしい光のエフェクトにゼノンはつつまれ、分解ぶんかいされ、さい構築こうちくされていく。



<<個体名【ゼノン】は【シルバーウルフ】に進化しました!>>



「良し、ハウス!(帰還する!)」



俺の号令ごうれいを聞いた部隊リーダーが、一吠ひとほえをして、群れを統率とうそつする。

 

周囲しゅういにはスノーラット一匹いない。次にリポップされるまでの時間は、スノーラット・スノーラビットの下位アンダー魔物モンスターで三十分! スノーフォックス・スノーバードの中位ミドル魔物モンスターで六十分! スノーディア・スノーベアの上位ハイ魔物モンスターで六時間! スノーレオンの特殊スペシャル魔物モンスターが二十四時間だった!



ちなみに、スノーウルフは中位ミドル、ホワイトウルフは上位ハイ、シルバーウルフは最上位ハイオーバーのモンスターに分類ぶんるいされる。



疾走しっそうする狼の群れの数は、二十匹。の内の一匹の背にまたがる若い半裸はんらの男。

彼らが、ねぐらに向かって走っていると、続々ぞくぞくと狼の群れが集まって来る。

狼の群れは、雪崩なだれごとさかさまに雪山を登っていく。の数は、百数匹にたっしていたのだった。







ああ、見えた。あ、あれ? かあさんが洞窟どうくつの前で、仁王におうちしている。



見るからに機嫌きげんが悪い。あれ、おれなにかしたっけ? 

全くなに心当こころあたりがない。はて、なんだろうか?



「ストップ!(止まれ!)」



俺の号令ごうれい脳裏情報マインドインフォメーションとで、総数百二十匹の群れが行動を停止ていしする。 



カルマの強化された感覚かんかくが、強く激しく母親の機嫌きげんが最悪だとげる。



いや、変な先入観せんにゅうかんは善くない。



かあさんは、なにも言わないが、無言むごん威圧いあつがハンパない。

俺の仲間(眷属けんぞく)達も萎縮いしゅくして、五体ごたい投地とうちする者、腹を見せて降参こうさん服従ふくじゅうれいをする者もいる始末しまつだ。

勘弁かんべんしてくれよ、かあさん。俺は嘆息たんそくを心の中できながら、かあさんに挨拶あいさつをする。



かあさん、只今ただいま! 如何どうしたのめずらしく洞窟どうくつから出てきて? なにかあったの?」



俺の言葉に、かあさんは重い口を開けた。



『カルマ、お前も成人せいじんだ! 大人になったお前に、伝えなければいけない事がある! 実はわれは【十の災厄アンタッチャブル】と呼ばれるじゅう盟約めいやくけもの一柱いっちゅうなのだ!』



「・・・・・・・・・・・・」



『全く驚かないんだな、カルマ?』



かあさんは、不満そうに俺を見つめながら、鼻を鳴らす! 驚くもなにも、ずっと知っていたから仕方ないと、僕は心の中で毒突どくづいた。 



「えっ!いや驚いた、・・・・・・よ? れが如何どうかしたの、かあさん?」



俺の言葉に、何故なぜかあさんは、一瞬いっしゅんかなしそうな表情を見せた。



『【十の災厄アンタッチャブル】はわれだけではない! われほかにもアルグリア大陸には九柱きゅうちゅう存在そんざいする! 今のお前では、死ににいくようなものだ! 其処そこでだ、お前には試練しれんを受けて貰う!』



試練しれん?(なんだれ、クエストかイベントかな?)」



此処ここを旅立ちたければ、われを倒して行け! れがお前にせられた試練しれんだ!』
 


ドォーン! 



プチッ!



俺はれを聞いて、堪忍袋かんにんぶくろが切れた。



かあさん、おこるよ! れはただかあさんが俺と離れたくないだけだよね?」



明らかに俺の言葉に動揺どうようするかあさんが、静かにつぶやく。



『カルマ、かあさんをてる気なのか? われはお前をそんな子に、育てた覚えはないぞ?』



そうつぶやかあさんのひとみには、大粒おおつぶの涙がまりウルウルとしている。

なにかくそう【十の災厄アンタッチャブル】とおそれられる俺のかあさんは、最初にったあの日からデレデレにデレて、【親バカモンスターペアレント】にバージョンアップしたのだった。














【アルグリア戦記】には、セーブ機能きのうは存在しない。全て最初からのスタートとる。で、セーブなどは出来るはずもない。此処ここは【アルグリア世界】、もう一つの現実の世界。現実の一秒が、三千百十万四千秒に相当そうとうする仮想の現実世界。現実の一時間が、百二十九万六千日(三千五百五十年と二百五十日)に相当そうとうする【悠久ゆうきゅう歴史れきしを|刻(きざ)む世界せかい】。



たして、【アルグリア世界】は、仮想の現実世界なのだろうか? れとも、実はもう一つの現実世界【異世界いせかい】なのだろうか? の答えは【プレイヤー】だけが知っている。







To be続きは  continuedまた次回で! ・・・・・・
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