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三章

こだわりという名の正義

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赤ちゃんが転生した姫で賞金首のクイーンだそうです。いや、違うな。クイーンと呼ばれた赤ん坊は異世界転生した元日本人だそうで王都のお姫様だそうです。

ワタナベしか詳細知らないんだけど、修羅場な展開になりそうかもしれません。



「ツキシマ、おまえやっちゃうのか? あんな赤ん坊を! 最低だな!」

「いやいやいや、やらないし、俺最低じゃないし! つーか、クイーンって決めたの誰だよ。おまえじゃないのか? ワタナベ!」

「いや、俺じゃないよ? その赤ん坊は優れた力を持っていて、色んなやつらに疎まれてたんだろ? だから···。」

と言う所でワタナベの口を塞ぐ。
小さな声で「おい、その先は言うな!」と言うもワタナベは瞬間移動で逃げる。

「ツキシマ様、残念ですが···これを見越していたのですね。踊っていたように見せかけて、我らが踊らされていたという訳ですか。」

まり姫をベッドに戻し、ジョディから剣を受け取るゴメス。

「いや、ちょっと待って下さい。ゴメスさん。おい、ワタナベ! おまえ! 話をややこしくしやがって!」

とゴメスに誤解です。と手を振りアクションを取り、ワタナベに詰め寄ると物凄い殺気を感じる。

「問答無用です。」

と小さく囁くゴメスが刃を手に驚異的なスピードで一足飛びし突きを放つ。

キーン!

だがしかし、その刃は弾かれる。

「勇者タクヤを退けた風の盾。やはりツキシマ様でしたか。」

俺を守ってくれたのはかーくんとたてさん師匠だった。「かー!」「とりゃー!」と勇ましく両手を空に突き上げて叫ぶ二人。

あれ? みーちゃんは? と思うとまり姫の頬をぷにぷにとつついている。なんと豪胆な水の精霊さんだろう。そっちだけ空気が緩い。

「余所見ですか? 舐められたものですね。」

とゴメスは先程とかわって魔力を込めた斬撃を放つ。その斬撃は先程の突きより速く、容赦なく俺の隙をついてくる。

「おりゃー!」

けんさん師匠が意気揚々と手に持つ剣を薙ぎ払い斬撃を打ち消す。

「なんと、予備動作無しで私の技を? いや、その魔力の塊があなたを守っているのですね。これは骨が折れる。」

手に持つ剣をクルクルと回転させ、手遊びをしている熟練の騎士の如き立ち振る舞いのゴメス。恐らく次の一手を考えているのだろうが、俺はゴメスさんと戦うって選択肢は今の所無い。

この原因を作ったのはワタナベだ。ワタナベの姿を探す。だが

ワタナベ VS ジョディ は既に結果がつく間際で、息切れしたジョディがワタナベの前に何も出来ず膝をついている。

「お嬢さん、俺を狙ったのが間違いだったな。戦闘不能リタイアしててくれ。」

と鞘付きの剣を肩に置き、そのまま剣を振り上げる。

「ワタナベ、ちょっと待て!」

俺は呼吸で魔素を多めに取り込み、間髪ワタナベとジョディの間に入る。だが、何を思ったかワタナベは振り下ろす手を止めない。

しかし、手に武器がない俺は懐に前回隠し持っていた先割れスプーンを思い出し、必死でワタナベの一撃をジャストガードする。

自信はなかったが、先割れスプーンで綺麗に受け流しに成功した俺はほっと胸を撫で下ろす。

「ワタナベ! 危ないじゃねぇか! それに女性相手だぞ!」

「ツキシマ、おまえな、それはこっちの台詞で···ってスプーンが武器って舐めてるのかよ! つーか、何しにここにきたんだ? クイーン討伐じゃねぇの? 俺はお前の悩む姿を見るためにだな···。」

ワタナベ、おまえ。言うにことかいて俺が悩む姿を見に来ただって?

「ここに来たのは元はと言えばおまえが···!」

と口論していると、闘気? を感じ、俺とワタナベはすぐ様、再度殺意の方向へ目を向ける。

「仲間割れですか? どうぞ、戦闘不能までお続け下さい。ジョディ、立てるなら姫の元へ。」

「は、はい。」

ゴメスの斬撃の雨は容赦なく、俺とワタナベに降り注ぐ。なんだこれ、剣技ってこんな事も出来るのか? 本当に雨のように降り注ぐ斬撃だった為、流石にスプーンでは全て対応出来ずエアーシールドでジャストガードを使い対抗する。

「悪いね。」

と瞬間移動でかっこよくゴメスの背後に回るワタナベが見えた。

「駄目だ!」

とエアーシールドをもう一度発動させ、ゴメスを守る。エアーシールドに弾かれ、宙に浮くワタナベは瞬間移動でまた姿を消し、俺の隣に立つ。

「おまえ、想定外とはいえ、折角初めての共闘ってかっこいいとこなのに邪魔すんなよ! それに俺のめっちゃかっこいいとこだったろうが!」

「ワタナベ、おまえな。元はといえばおまえが賞金首とかよく分かんない事を言ったからだぞ! でも、俺はそれを受けるともなんとも言っていない!」

口論の間、ゴメスは突きの連打を試みるが、ワタナベを弾いたエアーシールドに全て防がれる。ジョディも魔力を込めた投げナイフを多数放つが全て弾かれてしまう。ゴメスはそれならばと突きを一点集中し、突破を計る。

「は? 賞金首って言ったら普通悪いやつだろ? おまえ、悪いやつなら討伐しろよ。そこから成り上がって行くのがテンプレ冥利だろ!」

「嫌だ! 悪いやつかは俺が決めるし! ワタナベの指図で動くと決められた一本道RPGみたいでつまんない! 今の状態がまさにそうだ! まぁ食事は美味かったが。」

一点集中の突きは数発連続で弾かれると後が続かず断念した。ゴメスはエアーシールドの目の前に立ち、居合い切りの構えから全力を込めた一撃を放つ。全力だったが故に剣は弾き飛ばされ、剣を持った腕ごと体か宙に浮いてしまう。

「は? 食べ物で懐柔されたのか? 一本道だと? 結果的に隠しボスっぽくてワクワクしなかったか? 実は姫は赤ちゃんでした! とか想定外で驚いたろ?」

「まぁ確かに驚いたが、元日本人とか言われて、更には赤ちゃんなんかに攻撃出来るか! 俺はそんなクズ違うわ! 出すならちゃんとした化物を出せ!」

「ふむ。」

俺とワタナベの口論が続き、何故か納得するワタナベ。それを見るゴメスとジョディは顔を見合わせる。二人はエアーシールドを突破できない事、それとツキシマの攻撃しない発言の後に手を止めツキシマ達の話に耳を傾けていた。正直、ジャストガードはそれだけチートであったのだ。

「ワタナベ様は別として、ツキシマ様は姫を狙ってはいないのですか?」

「あー、はい。ここに来たのは、ワタナベの筋書きなので、他意はありません。」

「あー、俺はツキシマがやるならやりますが、俺が率先してボスを倒すとかそんな勿体無い事はしません。」

仕組んでおいてとんでもない事をさらっというワタナベを見て更に口論が過激化する。

「ど、どうしましょう。ひ、姫?」

「えっと、あの。そうですね。どうしましょう?」

最終的に赤ちゃん姫を困らせ、みーちゃんはキャッキャと笑いながらまり姫の頬をぷにぷにするのだった。
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