乳房星(たらちねぼし)〜再出発版

佐伯達男

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第20話・秋冬(しゅうとう)

【蒼いタメイキ】

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話しは、【サチコ】の………で止まった部分から始まる。

那珂川《なかがわ》沿いの公園にある屋台の居酒屋で酒をのんだ私は、春吉橋を渡ったあとどこへ行ったのかを全くおぼえていなかった。

そんな時に、露地裏やファベーラ(スラム街)など…ものすごく治安が悪い場所にたどりついてしまうのであった。

そしてそこでえげつない現場を目撃する…

…と言うことをくりかえしていた。

大阪・小倉にいた時にそう言った事案がよくあった…

西鉄天神駅の裏手にある警固《けご》公園で番頭《ばんと》はんが津乃峰《つのみね》に合わせて1億の小切手を渡していた現場を目撃した…

和歌山・ぶらくり丁の商店街の露地裏で実松《さねまつ》どんがヤクザの男たちからボコボコにいて回された現場を目撃した…

福岡市内の国道3号線沿いにあるラブボに宿泊していた部屋のとなりの部屋で津乃峰《つのみね》が溝端屋のダンナたちから集団リンチを喰らった末に殺された現場を聞いた時は、私も命《どたま》かち割られる恐怖におびえまくった…

さんざん怖い目に遭《あ》いつづけたと言うのに、また私は同じ失敗をやらかしてもうた…

あの時、グデングデンに酔っていたので全くおぼえていなかったが、春吉橋を渡ったあと西鉄天神駅から西へ500メートル先にある酒場街まで行ったことに気がついた…

この時、私は男同士が怒号をあげていた現場を目撃したんだ…

今ごろになって気がついた…

私は、どこのどこまでとろくさいのか…

うーんと昔、フジテレビ系で月曜日の20時頃から放送されていたバラエティ番組『志村けんのだいじょうぶだぁ~』で酔いたんぼ(酔っぱらい)の志村けんさんが居酒屋にいた時から帰宅するまでの間にとんでもないことをやらかしたコントがあったのを思い出した。

よもや、私は志村さんの酔っぱらいコントと同じ失敗をやらかしたとは…

そう思った私は、おんまくへこんだ。

………

ところ変わって、西鉄天神駅から西へ500メートル先にある酒場街の露地裏にて…

また治安が悪い場所に迷い込んだ私は、そこでえげつない現場を目撃した。

私は、現場の手前100メートルのところで足を止めたあと身をひそめた。

100メートル先の現場で、ナイフを持った男とちりちり髪のサングラス男が怒号をあげていた。

ちりちり髪の男は、言うまでもなく番頭《ばんと》はんである。

ナイフを持った男は…

ヨリイさんのダンナだった。

なんで…

なんでヨリイさんのダンナが福岡《ここ》にいるのだ…

私は、現場の様子を聞き耳立てて聞いた。

ヨリイさんのダンナは、全身をワナワナと震わせながら番頭《ばんと》はんを怒鳴りつけた。

「オドレクソガキャ!!ワシは思い切り怒っとんや!!だーっとらんとなんぞ言え!!」

番頭《ばんと》はんは、ものすごくしんどい声でヨリイさんのダンナに言うた。

「じいさんよ、ワシはしんどいねん…うちに帰って寝たいねん…」

ヨリイさんのダンナは、ものすごく怒った声で番頭《ばんと》はんに言うた。

「オドレよくも母子保護施設《しせつ》で暮らしている子どもたちに暴力をふるったな!!やっつけてやる!!」
「なに言うてんねん…暴力をふるったのは健太《クソガキ》の方や…ワシは被害者や…」
「だまれクソチンピラ!!」
「なんやクソッタレジジイ!!ワシのどこがチンピラや!!」
「オドレは世間《ひと》さまにメーワクをかけたことが分からんのか!?」
「じいさんよ、ワシは胃腸がものすごくつらいねん…うちへ帰してーな~」
「オドレ逃げるな!!」
「じいさんは、何に対して目くじらを立てよんぞ~」
「田川伊田駅の近くの電話ボックスを独占したオンドレが100パー悪いことが分からんのか!?」
「怒っとんのはワシじゃ!!健太《クソガキ》のせいで、田川伊田の電話ボックスを福岡県警《サツレンチュウ》に没収された!!じいさんの身内に福岡県警《サツレンチュウ》がいることを聞いたからおんまく怒っとんや!!その上に、オンドレが知人の国会議員を利用したことも聞いたけん怒っとんや!!」
「よくもワシの交友関係にケチをつけたな!!あきんどの分際でヤクザの事務所に出入りするオンドレは社会のガンだ!!」
「オドレも社会のガンや!!政治家を利用するなんてひきょうだぞ!!」
「だまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだーーーーーーーーーまーーーーーーれーーーーーーーーーー!!だまれといよんのが聞こえんのか!!クソボケ…ミミズミミズミミズミミズミミズミミズミミズミミズミミズミミズミミズミミズミミズミミズ…ミミズ!!」
「なんやクソッタレジジイ!!さっきワシになんて言うた…ワシは石ゴカイかアオムシかマムシ(釣りエサ)か…ワシのことをオキアミとも言うたな!!」
「ああ言うた!!オドレはミミズ以下のクズだ!!」

番頭《ばんと》はんとヨリイさんのダンナは、わけのわからんことをぐちゃぐちゃに言い合っていたので、こっちは笑いそうになった。

番頭《ばんと》はんは、いばった声で言うた。

「ああそのとおりだよ!!ワシは学生の時に自由と権利ばかりシュチョーしたからダメになったんや!!シューバンサボった…チコクネボーハヤベンした…人の弁当を食べさせてもらった…夜ふかしもたーんとした…コーコーの合宿の時、合宿先の青少年施設からダッソーした…せやからドアホになったんや!!」

いばって言うなよドアホ…

私は、怒った表情でつぶやいた。

ヨリイさんのダンナは、怒った声で番頭《ばんと》はんに言うた。

「ほんなら改めろ!!」
「オレはドアホだから改めることなんぞできんワ~」

せやから、いばって言うなよドアホ…

番頭《ばんと》はんは、頭がイカれとんとちゃうか…

ヨリイさんのダンナは、ものすごく怒った声で番頭《ばんと》はんに言うた。

「やいクソガキ!!今から鉄拳制裁《せいさい》を加えるから覚悟しろ!!」
「なんやオドレ!!ワシに炊きつける気か!?」
「ワシには…用心棒《ケツモチ》がいるぞ!!新居浜の知人のプロボクサーの男の知人の知人の知人にヤクザや!!」
「なんやオドレ!!新居浜のオドレの知人のプロボクサーに用心棒《ケツモチ》をたのんだ!?」
「ああ、オドレなんぞ怖くないわ!!」
「ええドキョーしとるなクソッタレジジイ!!田嶋《うちのくみ》と対立している事務所《そしき》と聞いた以上、こっちも考えがあるぞ!!」
「オンドレやっつけてやる!!ワーッ!!」

ヨリイさんのダンナは、ワーッと叫びながら番頭《ばんと》はんに殴りかかって行った。

「やるんか!!」
「ああ、やったら~!!」

ヨリイさんのダンナと番頭《ばんと》はんは、このあとドカバキの大ゲンカをくりひろげた。

私は、大ゲンカが始まる数分前に現場から立ち去った。

酔いがさめたのは、それから数時間後であった。

また私は…

恐ろしい現場を目撃した…

なんで私は…

同じ失敗をくりかえしたのか…

ホンマにアカン男や…(思い切りへこむ)
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