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第20話・秋冬(しゅうとう)
【愛しつづけるボレロ】
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話しは、【噂の女】のフシの夢落ちした場面のつづきから始まる。
時は、7月18日の夜7時過ぎであった。
ところ変わって、阪神甲子園球場にて…
この日は、阪神巨人戦《でんとうのいっせん》が開催されていたので観客席《スタンド》は超満員であった。
私は、一塁側の内野席《スタンド》でビール売りのバイトをしていた。
試合は、夜10時半頃に終了した。
私は、球場内にある売り子さん会社の事務所で日当1万7000円を受けったあと球場をあとにした。
時は、深夜11時50分頃であった。
またところ変わって、大阪ミナミの道頓堀川《どうとんぼりがわ》にかかる相合橋《あいおいばし》付近にある広場にて…
広場のベンチに座っている私は、カネテツ(デリカフーヅ)のちくわとごぼ天を肴《さかな》にワンカップ大関をのんでいた。
通りのスピーカーから、五木ひろしさんの歌で『愛しつづけるボレロ』が流れていた。
私が酒をのみながら歌を聴いて過ごしていた時であった。
ヤキソバヘアで黒のサングラスをかけていて、ももけたハラマキ姿で地下足袋《たび》をはいている番頭《ばんと》はんが私のもとにやって来た。
番頭《ばんと》はんは、私に対してなれなれしい声で言うた。
「コリントさん、お久しぶりでおますなァ~」
「番頭《ばんと》はん。」
「そこで酒のみながら歌を聴いていたのですね。」
「せやけど…」
私は、酒をひとくちのんだあと番頭《ばんと》はんに言うた。
「番頭《ばんと》はん、どなな用件で来たのでおますか?」
番頭《ばんと》はんは、気色悪い声で私に言うた。
「ああ、たいしたことじゃあらへんねん…ちょっと『ピ』(ポケットベル)が鳴ったのでコリントさんのところで来たのでおます。」
ピが鳴ったから私のもとへ来た?
わけが分からへん…
番頭《ばんと》はんは、私に対して気色悪い声で言うた。
「あの~」
「なんやねん…」
「おんまく言いにくいことでおますけど…あの~…きのう(17日)の夜遅くからきょう(18日)の未明にかけて…田川伊田駅の近くのガード下の電話ボックスに人が出入りしたと言う知らせがおまして…その…なんやったかいのぉ~…ああ、思い出した…コリントさんは、その時間どちらにいましたか?」
「その時、私は西成の簡易宿《やどや》で寝てましたよ…」
「ああ、そうでおましたか…こりゃシッケイ…」
「(イラッとした声で)って、あんたは植木等か加藤茶《かとちゃん》かよ~」
「(なれなれしい声で)ああ、そないに怒らんといてーな…この最近、ピがひんぱんに鳴りよるさかいに…気になったもんで…コリントさんが大阪《ここ》にいたことが分かったので安心しやした…ほなワテはこれで…」
その後、番頭《ばんと》はんは口笛をふきながら私のもとから立ち去った。
番頭《ばんと》はんは、人をグロウしよんか…
おんまく頭に来る…
私は、食べかけのごぼ天をかじりながら番頭《ばんと》はんの背中《せな》をにらみつけた。
時は、7月18日の夜7時過ぎであった。
ところ変わって、阪神甲子園球場にて…
この日は、阪神巨人戦《でんとうのいっせん》が開催されていたので観客席《スタンド》は超満員であった。
私は、一塁側の内野席《スタンド》でビール売りのバイトをしていた。
試合は、夜10時半頃に終了した。
私は、球場内にある売り子さん会社の事務所で日当1万7000円を受けったあと球場をあとにした。
時は、深夜11時50分頃であった。
またところ変わって、大阪ミナミの道頓堀川《どうとんぼりがわ》にかかる相合橋《あいおいばし》付近にある広場にて…
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通りのスピーカーから、五木ひろしさんの歌で『愛しつづけるボレロ』が流れていた。
私が酒をのみながら歌を聴いて過ごしていた時であった。
ヤキソバヘアで黒のサングラスをかけていて、ももけたハラマキ姿で地下足袋《たび》をはいている番頭《ばんと》はんが私のもとにやって来た。
番頭《ばんと》はんは、私に対してなれなれしい声で言うた。
「コリントさん、お久しぶりでおますなァ~」
「番頭《ばんと》はん。」
「そこで酒のみながら歌を聴いていたのですね。」
「せやけど…」
私は、酒をひとくちのんだあと番頭《ばんと》はんに言うた。
「番頭《ばんと》はん、どなな用件で来たのでおますか?」
番頭《ばんと》はんは、気色悪い声で私に言うた。
「ああ、たいしたことじゃあらへんねん…ちょっと『ピ』(ポケットベル)が鳴ったのでコリントさんのところで来たのでおます。」
ピが鳴ったから私のもとへ来た?
わけが分からへん…
番頭《ばんと》はんは、私に対して気色悪い声で言うた。
「あの~」
「なんやねん…」
「おんまく言いにくいことでおますけど…あの~…きのう(17日)の夜遅くからきょう(18日)の未明にかけて…田川伊田駅の近くのガード下の電話ボックスに人が出入りしたと言う知らせがおまして…その…なんやったかいのぉ~…ああ、思い出した…コリントさんは、その時間どちらにいましたか?」
「その時、私は西成の簡易宿《やどや》で寝てましたよ…」
「ああ、そうでおましたか…こりゃシッケイ…」
「(イラッとした声で)って、あんたは植木等か加藤茶《かとちゃん》かよ~」
「(なれなれしい声で)ああ、そないに怒らんといてーな…この最近、ピがひんぱんに鳴りよるさかいに…気になったもんで…コリントさんが大阪《ここ》にいたことが分かったので安心しやした…ほなワテはこれで…」
その後、番頭《ばんと》はんは口笛をふきながら私のもとから立ち去った。
番頭《ばんと》はんは、人をグロウしよんか…
おんまく頭に来る…
私は、食べかけのごぼ天をかじりながら番頭《ばんと》はんの背中《せな》をにらみつけた。
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