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第19話・哀しみ本線日本海

【哀しみよ隣で眠れ】

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また時は流れて…

1995年4月3日の朝10時頃であった。

またところ変わって、大阪中央区土佐堀通《とさぼりどお》りにある大型銀行の支店にて…

23歳の私は、支店長に対して『ここで働かせてください!!』と言うてジカダンパンした。

しかし、支店長は『アカン!!帰れ!!』と言うて切り捨《す》てた。

私はまた、あわれみを乞《こ》うてカネをもとめた。

「お願いでございます!!少しでもいいからカネください!!この通りでおます…信州で暮らしている伯父《おじ》のところへ行く電車賃《きしゃちん》だけでもいいからカネください!!この通りでおます~」
「しょーがねぇヤローだな~」

支店長は、スーツの内ポケットから取り出した長財布《さいふ》の中から40万円を取り出した。

支店長は、私に40万円を差し出しながら言うた。

「これ持って、どこでも行きやがれ!!」
「おおきに…おおきに…」

支店長から40万円を受け取った私は、足早に店舗から出た。

4月3日から1ヶ月に渡って大阪市内で職《しごと》さがしをしていたけど、またしても大失敗した。

安定した収入と定休日だけがあればどこの事業所《かいしゃ》でもかまん…

そんなあいまいな気持ちでシューカツしたから、どこもかしこもおことわりがつづいた。

ことわられるごとに、面接官にあわれみを乞《こ》うてカネをもとめた。

その様子を端で見ていた人々は、口々にこう言うたと思う。

『イワマツは、ものごいすること知らんドアホや…』
『イワマツは、どこのコーコーの卒業かしらねぇ~』
『コーコーのセンコウがドアホだから生徒がドアホになったのよ~』
『サイアクねぇ~』

他にも考えられる点があったと思う。

就職試験で面接官は就活生《がくせいさん》に『協調性』があるかどうか…と言うのを見ている…

私は『協調性』がなかったからことわられた…

異色の学歴の持ち主であるが、小学校入学~大学卒業までの間レポート提出だけ(大学はリモートゼミとセットであった)で、学生たちと接した機会は全くなかった。

それもあるけど、他にも考えられる原因は山のようにあった。

これ以上話したらキリがないからやめとく…

話しは変わって…

私は、3月中旬か末頃に戸畑のごはんやのバイトをやめた…

その翌日から放浪生活を始めた…

大番頭《おおばんと》はんたちとゆかさんを見つけるためにあちらこちらを歩き回ったが、有力な手がかりを得ることができなかった。

4月はじめに、やっぱり気質《まとも》な暮らしをしようと決意してシューカツを再開した…

しかし…

またしても大失敗した…

これは一体なんやねん…

こななはずじゃなかった…

そして、5月に入って早々に私の心が大きく壊れた。

5月6日頃、今治市松本町にある教会でヨリイさんが言うた言葉に対してブチ切れたので暴れた。

健太が気に入らないからボロクソになじりまくった…

ゆりこが私の背中にりんごをぶつけた…

だから、ゆりこに対してよりし烈な声でどなりつけた…

健太とゆりこの親御《おや》きょうだいたちもし烈な声でどなりつけた…

それで、母子保護施設との関係が気まずくなった…

5月12日に、建材店を放棄《ほか》して逃げた…

それから数日後に、小倉南区企救丘《こくらみなみきくがおか》の洋食屋を放棄《ほか》した…

放棄《ほか》しては逃げ、放棄《ほか》しては逃げ…ばかりを繰り返していたので、『協調性』と言う三文字《かんじ》の意味が理解できない…

なんでこななドアホになったのか…

そななことを考えるだけでもしんどい…

私は、なんで日本《このくに》に来たのだろうか?

日本《このくに》にいたらぺちゃんこにつぶれると言うことを分かっているのに日本《このくに》に来たので大失敗した…

もうイヤや…

もうイヤや…

日本《このくに》から逃げたい…

明日かあさってにも、入国管理局《にゅうかん》へ行こう…

…でないと…

私は、こわれてしまう…
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