乳房星(たらちねぼし)〜再出発版

佐伯達男

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第16話・無人駅

【今日でお別れ】

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時は、夜8時頃であった。

またところ変わって、小倉魚町《こくらうおまち》の旦過市場《たんがいちば》の中にある居酒屋《のみや》にて…

1日ちがいでゆかさんと会う機会を逸《のが》した私は、居酒屋《みせ》の片すみでやけ酒をあおっていた。

店のユーセンのスピーカーから、菅原洋一さんの歌で『今日でお別れ』が流れていた。

ひとりでやけ酒をあおっている私のとなりに、ものすごくええかげんなおっちゃんが座っていた。

ものすごくええかげんなおっちゃんは、私に例の洋食屋の仕事を紹介した人であった。

おっちゃんが私に対して『なんで金城《きんじょう》のねえさん方の洋食屋《みせ》を1日でやめたんゾ?』とあつかましい声で言うたので、私はものすごく怒った声で言うた。

「オレはきたとこまちごーたからあの店をやめたんや!!…オレがあの店をほかそうがなんだろうが…オレの勝手や!!…ドアホ!!」

ものすごくええかげんなおっちゃんは、困った声で私に言うた。

「せやから言うて、あなな形でほかしたのはまずかったのではないのか?」
「なんや!!今なんて言うた!?」
「ぼうずの気持ちも分かるけど、金城のねえさんも…」
「『金城のねえさんも…』…そのあとはなんや!?」
「だから、金城のねえさんはいいすぎ…」
「金城のバァがどない言おうと、オレはヨーニンせえへん!!」
「せやから、ぼうずはなんで金城のねえさんを否定するねん?」
「金城のバァが否定したからオレも否定した!!」
「それはちがうと思うけど…」
「ますますはぐいたらしいのぉ~おっちゃんは金城のバァとどなな関係があるんぞ!?」
「どなな関係があるって…」
「金城のバァは、オレに『コーコーかジエータイかのたれじにの3つしかないと言われたらどれを選びますか?』と上から目線で言うたんや!!」
「金城のねえさんは、悪気があって言うたのじゃないんだよ…金城のねえさんの息子さんが中卒後につらい思いをしたから…」
「そななクソたわけた話など信用せえへん!!金城のバァの伜《なまけもの》がどなな思いをしたと聞いてもオレは強く否定する!!」

ものすごくええかげんなおっちゃんは、あきれた声で私に言うた。

「ぼうずはどこのどこまでヒネとんぞ?そないにワシの話が信用できんのぞ!?」

私は、ものすごく酔った勢いで『あんたは、オレにどないせえと言いたいねん!?』と言うたあとのみかけのジンロマッコリをゴクゴクとのみほした。

ものすごくええかげんなおっちゃんは、大きくため息をついたあとあきれた声で私に言うた。

「ワシは、ぼうずにもう一度チャンスを与えたいと思って…」
「いらねーよ!!」
「ワシは、チャンスを与えたるといよんじゃ…」
「頼んでもないのにいらんことすんなよ!!」
「ワシはチャンスを与えたる…」
「はぐいたらしいんだよクソアホンダラ!!チャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンス…オンドレは『パネルクイズアタック25』(朝日放送制作のクイズ番組)の児玉清(故人)か!?」
「なんやねんそれ?」
「オンドレがいよるチャンスなどいらんワ!!ボケ!!」
「コラクソボウズ!!」
「なんやコラ!!」
「コラをコラと言うたらいかんのか!?クソジジイ!!」

私は、ものすごくええかげんなおっちゃんに対してより強い不満をぶちまげた。

「こなな日本《くに》はドサイテーの国に来て大失敗した…」
「大失敗した?」
「せや!!」
「コラクソボウズ!!」
「なんや!!」
「オドレさっき、日本《このくに》はドサイテーだと言うたのぉ~それはどう言うことぞ!?」
「ドサイテーをドサイテーと言うたらいかんのか!?」
「あのな!!日本《このくに》の人たちは敗戦から50年の間に小さなことからコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツと積み上げて来たのだぞ…わしは終戦の時に満州にいたんだぞ…その後、シベリアでものすごくつらい抑留生活を送ったんや!!」
「それがどないした言うねん!?」

そんな中で、ユーセンのスピーカーから小坂明子さんの歌で『あなた』に変わったので、私はものすごくええかげんなおっちゃんに言うた。

「おっちゃんの夢はなんやねん…おっちゃんが望んでいた人生とはなんやねん!?」
「ワシの夢だと…」
「同い年の子たちと同じ小学校~中学校~高校~大学と通う…大卒後、一流企業にシューショクする…自然な形で恋人と出会って、恋愛結婚して、イチヒメニタロウサンサンシ…老後は、たくさんのマゴに囲まれて『ジイジジイジジイジジイジジイジジイジジイジジイジジイジジイジジイジジイジジイジジイジ…』としたわれる…日本《このくに》の人間の幸せって、その程度しかないのかよ!?…オレはこななしょぼいしあわせなんぞいらんワボケ!!」

ものすごくええかげんなおっちゃんは、怒った声で言うた。

「なんやとコラ!!今なんて言うた!?」
「しょぼいをしょぼいと言うたらいかんのか!?」
「オドレクソガキャ!!」

ものすごくええかげんなおっちゃんは、私のえりくびをつかんだあとグーで私を殴ろうとした。

そこへ、店のおかみがやって来ておっちゃんをとめた。

「あんたやめて!!」
「止めるな!!」
「もうそのくらいにしとき!!」

おかみにとめられたおっちゃんは、おかみに2万円を渡したあと怒って店から出ていった。

それから1分後であった。

おかみが私のもとにやって来たあと困った声で言うた。

「あんた…もうすぐ看板(閉店を意味する)よ!!」

私は、ものすごく悲しい声で言うた。

「酒…酒くれ…」

おかみは、怒った声で私に言うた。

「もうええかげんにやめときよ!!…それよりも…一度自分の顔を鏡に写してよく見てみなさい!!…あんたの親御《おや》は子どもをしつける能力がないみたいね…せやけん、こななひねた子になったのよ…なさけないわね(ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ…)」

自分の顔を鏡に写してみろだと…

ふざけんな!!

日本《こななしょぼいくに》に来てソンした…

……………

この時、ユーセンから流れてきた歌は山崎ハコさんの歌で『織江のうた』に変わった。

同時に私は、5ヶ月前にささいなことが原因でトラブってしまったことを思い出した。
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