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第16話・無人駅
【ひとり寝の子守唄】
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時は、6月23日の午前11時50分頃であった。
またところ変わって、大阪西成《あいりんちく》にある公園にて…
この日も私は、炊きだしを受け取るために住人《おっちゃん》たちの列に並んでいた。
炊きだしを受け取ったあと、公園内にあるベンチに座ってランチを摂っていた。
その時であった。
小ちゃい時に母子保護施設《おなじしせつ》で暮らしていた里帆《りほ》ちゃんが私のもとにやって来た。
里帆ちゃんは、きらびやかなワンピ姿でランスルーのハンドバッグを持っていた。
「よーくぅん。」
「里帆ちゃん。」
「よーくんどうしたの?」
「どうしたのって…」
「さっき、住人《おっちゃん》たちと一緒に炊きだしの列にならんでいたよね。」
「せやけど…」
「よーくん、おうちないなったの?」
私は、コンワクした表情で『ワケあって…ないねん。』と答えた。
里帆ちゃんは『ワケあって、おうちなくしたのね。』と言うた。
私は、ランチを摂る手を一度止めたあと里帆ちゃんに言うた。
「里帆ちゃん。」
「なあによーくん。」
「里帆ちゃんに聞きたいことがあるけどかまん?」
「いいわよ。」
「オレ、6月5日の昼前に…多度津の桃陵公園《とうりょうこうえん》でえげつない現場を見た…」
「多度津の桃陵公園《とうりょうこうえん》で…えげつない現場を見たって?」
「せや。」
私は、里帆ちゃんにワケを話した。
「健太とゆりこがヨリイさんとワケのわからん媒酌人夫婦《クソッタレ》と一緒にいた…あと…ワケのわからん媒酌人夫婦《クソッタレ》がヤクザ30人を連れていた…アレは…オレに対するいびつないじめだ!!」
私が言うた言葉に対して、里帆ちゃんはのんきな声で答えた。
「そうよ…そのとおりよ…」
やっぱりそうだった…
健太は、私が気に入らないから媒酌人夫婦《クソッタレ》に助けを求めた…
ヤクザの男たち30人は、媒酌人夫婦《クソッタレ》のジジイの知人の組長の構成員《チンピラ》ども…
…という事や。
30人の構成員《チンピラ》たちは、私をボコボコにいて回したあと健太に土下座させるつもりでいた…
健太とゆりこはひきょうだ!!
私は、全身をブルブルと震わせながら怒りまくった。
里帆ちゃんは、私にこう言うた。
「よーくん知ってたぁ?」
「知ってたって?」
「健太くんがゆりこちゃんと結婚したいと思っているワケよ。」
「健太がゆりこと結婚したいワケ?…それは、ちいちゃい時から結ばれると決まっていたからだろ…」
「みんなはそのように言うけど、本当はゼンゼン違うのよ。」
「ゼンゼン違うって?」
「健太くんとゆりこちゃんは、ちいちゃい時から親御《おや》がコロコロコロコロと変わっていたのよ…」
「それは知ってるよ…健太とゆりこのオカンは、離婚とサイコンを繰り返していた…ふたりとも、義理のオトンから暴力をふるわれていた…」
里帆ちゃんはしんどい気のない声で『それもあるけどぉ~』と言うたあと、私にえげつないことをしゃべった。
「健太くんとゆりこちゃんの義理のオトンも…オカンが気に入らなかったら離婚して新しいオカンとサイコンしよったんよ。」
「えっ?オトンもオカンが気に入らなかったら離婚して新しいオカンとサイコンしよった…って…ソレはホンマのこと?」
「うん。」
「それじゃあ、健太とゆりこのホンマの親御《おや》はどこにおるん?」
「そうね…どちらも殺されたと思うわよ…とくに健太くんの実の親御《おや》はもめ事ばかりを起こしていたので、周囲《まわり》からソートーうらまれていたと思う…だけど、最も悪いのはゆりこちゃんの実の親御《おや》よ…実のオカンは、高知にある極悪非道のヤクザ組織の組長の情婦《レコ》だった…実のオトンは、組織から絶縁された元構成員《よわむし》の男だった…実のオトンが情婦《くみちょうのレコ》のオカンをユーカイして監禁した…実のオカンは、実のオトンにむりやり犯されたのよ…ゆりこちゃんの実のオカンが母子保護施設《しせつ》に保護されたのは…ゆりこちゃんが生まれてくる数ヶ月前だった…という事よ。」
「そうだったのか。」
それから数秒後であった。
里帆ちゃんは、右腕につけているカルティエのウォッチをちらっと見てからこう言うた。
「いっけな~い、忘れてたぁ~」
「忘れてた?」
「里帆、パーマ屋さんに予約を入れていたことを忘れていた~」
里帆ちゃんは『パーマ屋さんの予約の時間が来るからまたね…』と言うたあと足早に公園から出た。
それから数分後であった。
(ポンポン…)
私の後ろにいた黒スーツ姿の男が私の肩を叩いた。
黒スーツ姿の男は、ふりかえった私に四つ折りのデイリースポーツを渡したあと公園から出ていった。
なんやねんまったく…
私は、男から受け取った四つ折りのデイリースポーツをひらいたあとフセンシが貼っているページをひらいた。
ひらいたページは、やはりお色気欄だった。
またかいなもう…
私は、紙面の下の欄にピンク色の蛍光ペンで囲っている三行広告《こうこく》を見た。
ゆりこと健太が引き裂かれる様子を見たいのであれば、明日(24日)12時までにいよてつ郡中港駅に来い…
なんやねんこれは一体…
ゆりこと健太が引き裂かれる様子をみしたる…って三行広告《こうこく》を出したやつは頭がおかしいんとちゃうか?
分からん…
(ピーッ、ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)
時は、深夜11時半頃であった。
私は、JR大阪駅から松山行きの夜行快速ムーンライトに乗って再び旅に出た。
座席に座っている私は、ウォークマンで歌を聴きながら窓に写る夜の風景をながめていた。
イヤホンから加藤登紀子さんの歌の全曲集に収録されている歌がたくさん流れていた。
『酒は大関』『難破船』『百万本のバラ』『わが人生に悔いはなし』『ひとり寝の子守唄』…
その中で、『ひとり寝の子守唄』を繰り返して聴いていた。
私は、この日もまた一睡もできなかった…
気になる…
なんぞ気になる…
………
またところ変わって、大阪西成《あいりんちく》にある公園にて…
この日も私は、炊きだしを受け取るために住人《おっちゃん》たちの列に並んでいた。
炊きだしを受け取ったあと、公園内にあるベンチに座ってランチを摂っていた。
その時であった。
小ちゃい時に母子保護施設《おなじしせつ》で暮らしていた里帆《りほ》ちゃんが私のもとにやって来た。
里帆ちゃんは、きらびやかなワンピ姿でランスルーのハンドバッグを持っていた。
「よーくぅん。」
「里帆ちゃん。」
「よーくんどうしたの?」
「どうしたのって…」
「さっき、住人《おっちゃん》たちと一緒に炊きだしの列にならんでいたよね。」
「せやけど…」
「よーくん、おうちないなったの?」
私は、コンワクした表情で『ワケあって…ないねん。』と答えた。
里帆ちゃんは『ワケあって、おうちなくしたのね。』と言うた。
私は、ランチを摂る手を一度止めたあと里帆ちゃんに言うた。
「里帆ちゃん。」
「なあによーくん。」
「里帆ちゃんに聞きたいことがあるけどかまん?」
「いいわよ。」
「オレ、6月5日の昼前に…多度津の桃陵公園《とうりょうこうえん》でえげつない現場を見た…」
「多度津の桃陵公園《とうりょうこうえん》で…えげつない現場を見たって?」
「せや。」
私は、里帆ちゃんにワケを話した。
「健太とゆりこがヨリイさんとワケのわからん媒酌人夫婦《クソッタレ》と一緒にいた…あと…ワケのわからん媒酌人夫婦《クソッタレ》がヤクザ30人を連れていた…アレは…オレに対するいびつないじめだ!!」
私が言うた言葉に対して、里帆ちゃんはのんきな声で答えた。
「そうよ…そのとおりよ…」
やっぱりそうだった…
健太は、私が気に入らないから媒酌人夫婦《クソッタレ》に助けを求めた…
ヤクザの男たち30人は、媒酌人夫婦《クソッタレ》のジジイの知人の組長の構成員《チンピラ》ども…
…という事や。
30人の構成員《チンピラ》たちは、私をボコボコにいて回したあと健太に土下座させるつもりでいた…
健太とゆりこはひきょうだ!!
私は、全身をブルブルと震わせながら怒りまくった。
里帆ちゃんは、私にこう言うた。
「よーくん知ってたぁ?」
「知ってたって?」
「健太くんがゆりこちゃんと結婚したいと思っているワケよ。」
「健太がゆりこと結婚したいワケ?…それは、ちいちゃい時から結ばれると決まっていたからだろ…」
「みんなはそのように言うけど、本当はゼンゼン違うのよ。」
「ゼンゼン違うって?」
「健太くんとゆりこちゃんは、ちいちゃい時から親御《おや》がコロコロコロコロと変わっていたのよ…」
「それは知ってるよ…健太とゆりこのオカンは、離婚とサイコンを繰り返していた…ふたりとも、義理のオトンから暴力をふるわれていた…」
里帆ちゃんはしんどい気のない声で『それもあるけどぉ~』と言うたあと、私にえげつないことをしゃべった。
「健太くんとゆりこちゃんの義理のオトンも…オカンが気に入らなかったら離婚して新しいオカンとサイコンしよったんよ。」
「えっ?オトンもオカンが気に入らなかったら離婚して新しいオカンとサイコンしよった…って…ソレはホンマのこと?」
「うん。」
「それじゃあ、健太とゆりこのホンマの親御《おや》はどこにおるん?」
「そうね…どちらも殺されたと思うわよ…とくに健太くんの実の親御《おや》はもめ事ばかりを起こしていたので、周囲《まわり》からソートーうらまれていたと思う…だけど、最も悪いのはゆりこちゃんの実の親御《おや》よ…実のオカンは、高知にある極悪非道のヤクザ組織の組長の情婦《レコ》だった…実のオトンは、組織から絶縁された元構成員《よわむし》の男だった…実のオトンが情婦《くみちょうのレコ》のオカンをユーカイして監禁した…実のオカンは、実のオトンにむりやり犯されたのよ…ゆりこちゃんの実のオカンが母子保護施設《しせつ》に保護されたのは…ゆりこちゃんが生まれてくる数ヶ月前だった…という事よ。」
「そうだったのか。」
それから数秒後であった。
里帆ちゃんは、右腕につけているカルティエのウォッチをちらっと見てからこう言うた。
「いっけな~い、忘れてたぁ~」
「忘れてた?」
「里帆、パーマ屋さんに予約を入れていたことを忘れていた~」
里帆ちゃんは『パーマ屋さんの予約の時間が来るからまたね…』と言うたあと足早に公園から出た。
それから数分後であった。
(ポンポン…)
私の後ろにいた黒スーツ姿の男が私の肩を叩いた。
黒スーツ姿の男は、ふりかえった私に四つ折りのデイリースポーツを渡したあと公園から出ていった。
なんやねんまったく…
私は、男から受け取った四つ折りのデイリースポーツをひらいたあとフセンシが貼っているページをひらいた。
ひらいたページは、やはりお色気欄だった。
またかいなもう…
私は、紙面の下の欄にピンク色の蛍光ペンで囲っている三行広告《こうこく》を見た。
ゆりこと健太が引き裂かれる様子を見たいのであれば、明日(24日)12時までにいよてつ郡中港駅に来い…
なんやねんこれは一体…
ゆりこと健太が引き裂かれる様子をみしたる…って三行広告《こうこく》を出したやつは頭がおかしいんとちゃうか?
分からん…
(ピーッ、ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)
時は、深夜11時半頃であった。
私は、JR大阪駅から松山行きの夜行快速ムーンライトに乗って再び旅に出た。
座席に座っている私は、ウォークマンで歌を聴きながら窓に写る夜の風景をながめていた。
イヤホンから加藤登紀子さんの歌の全曲集に収録されている歌がたくさん流れていた。
『酒は大関』『難破船』『百万本のバラ』『わが人生に悔いはなし』『ひとり寝の子守唄』…
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