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第15話・LOVE〜抱きしめたい

【悲しみの訪問者】

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第1回会社経営者東西対抗歌合戦は、西軍の優勝で終わった。

優勝賞金は、各組25万円ずつ分配する形で与えられた。

金杯は、私・イワマツが獲得した。

金杯の賞金1億円は、イワマツグループの全スタッフさんたちのイデコの口座にひとくち1万円ずつ分配することにした。

副賞の最新モデルの特大バスは、母子保護施設に寄贈《きそう》することにした。

ちなみに、銀杯はトリを務めた女性社長さまが受賞した。

なお、金杯と銀杯を獲得した人は規定により2019~2022年の歌合戦の出場資格はない…

…と言うことである。

時は、夜7時頃であった。

ところ変わって、さざなみコートのすぐ近くにあるスタバにて…

A班のメンバーたちは、ここで夕食を摂ることにした。

テーブルの上には、チーズマフィンと1000円のサラダ弁当が並んでいた。

フレンチメイド服の女性店員さんたち4人は、挽きたてのドリップコーヒーをいれる準備をしていた。

ゆかさんは、1万円ずつ入っているポチ袋をたくさん出したあとみなさまに伝えた。

「は~いみなさま~第1回の歌合戦は見事に西軍が優勝しました~…賞金25万円を1万円ずつに小分けしました~…あまりについては、イワマツグループの年金基金の口座に割り当てます~…は~い、みなさまにポチ袋を支給しま~す~」

ゆかさんは、メンバーたちひとりひとりにポチ袋を支給した。

そこへ、長期間休職中だった事務長はんが家族と一緒にメンバーたちのもとに帰ってきた。

「みなさま、長い間すまなんだのぅ~…今、帰ってきました。」
「事務長はん。」
「事務長はん、おかえりなさい…は~い、事務長はんにもポチ袋で~す。」
「おおきに。」

事務長はんは、ゆかさんにあいさつをしたあと空いている席にゆっくりと座った。

その後、事務長はんの席にチーズマフィンと1000円のサラダ弁当が配られた。

事務長はんは、私にやさしく声をかけた。

「イワマツどのの歌は、観客席で聴いていたよ…熱唱だったね。」
「おおきに。」
「たしか、イワマツどのが小ちゃい時に暮らしていた母子保護施設の人たちが観ていたよね…なんや知らんけど、大泣きしよった女の子がおったな~」

ゆかさんは、厳しい声で言うた。

「あれでいいのよ!!ゆりこさんは甘ったれていたから厳しくたしなめなきゃだめなのよ!!」

事務長はんは『せやな~』と答えた。

このあと、みなさまにドリップコーヒーが入っている白のマグカップが配られた。

ゆかさんは、ドリップコーヒーをひとくちのんでから厳しい声で言うた。

「親が元気なうち…帰る家があるうちに帰らないと、困るのはゆりこさん自身なのよ!!」

事務長はんは『まったくそのどおりじゃ!!』と答えた。

ゆかさんは、厳しい声で言うた。

「ヨシタカさんには大事な家族がいるのよ…ヨシタカさんの人生はこれからなのよ…ゆりこさんはそれが分からないのよ…」
「ホンマになさけないのぉ~」
「もういいでしょ…ごはんにしましょ…」

このあと、みんなで晩ごはんを摂った。

夜8時55分頃であった。

ところ変わって、ミモザの裏手にあるバス停にて…

バス停に、JR四国バスのロゴ入りの特大バスと日野クルージングレンジャー(特大貨物自動車)2台が停車していた。

A班のメンバーたちは、夜8時半頃にバスに乗り込んだあと次の準備を整えていた。

特大バスのトランクルームと日野クルージングレンジャーのウイング(荷台)の周りに丁稚どんたち1000人がいた。

1000人の丁稚どんたちは、大荷物を積み込む作業に取り組んでいた。

バスに設置されているテレビの画面に、NHK総合テレビの四国地方のニュースが映っていた。

A班のメンバーたちは、リクライニングチェアにこしかけて身体を休めていた。

私は、エクスペリア(スマホ)のウォークマンで歌を聴いていた。

ところ変わって、サイコー(産直市場)の前の広場にて…

母子保護施設で暮らしているお子さまたちとお母さま方たちとヨリイさんとスタッフさんたちがいた。

この時、ゆりこがまだ来ていなかった。

お母さま方たちは、ものすごく心配げな声で言うた。

「ゆりこちゃん、どうしたのかな?」
「んーと、まだフードコートのトイレにいるみたいよ。」
「まだトイレにいるの?」
「よーくんが歌った歌のインパクトが強すぎたから、当面立ち直れないみたいよ。」
「そうみたいね。」

フードコートの個室トイレにて…

「くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…」

私が歌った歌を聴いたゆりこは、よりし烈なインパクトを受けたことによるショックで立ち直れなくなった。

ゆりこが30分以上も個室トイレに居続けたので、帰りの時刻が大きく遅れた。

その頃、A班のメンバーたちが乗り込んだ特大バスと特大貨物自動車2台がイオンモール今治新都市のバス停から出発した。
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