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第12話・はぐれそうな天使
【悲しい色やね】
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時は、日本時間の2月15日午前11時半頃であった。
ところ変わって、松山市梅本町《まつやましうめのもとちょう》にある国立四国がんセンターにて…
ここ(がんセンター)には、宮出さんのシングルの長男さんが脳腫瘍《のうしゅよう》の治療を受けるために入院していた。
宮出さんは、次男さんのお嫁さんと一緒に長男さんのお見舞いに来ていた。
…と同時に、宮出さんはがん検診を受けていた。
宮出さんは、1月末頃から体調不良を訴えるようになった。
2月1日頃に、宮出さんは『足がだるい』『頭がものすごく重い』『吐き気がする』…と家族に訴えていた。
私・イワマツが生まれるずっと以前からこんにちに至るまで1日も休まずに働き通した…
宮出さんの奥さまは、40年ほど前に病気で亡くなられた。
宮出さんは、奥さまひとすじで通した人なので新しい恋をしてサイコンしたいと言う気持ちは全くなかった。
宮出さんは、だいぶ無理がまんを通していたから身体《からだ》のあちらこちらがボロボロになっていた…
それを思うと、ホンマに心苦しい…
午前11時45分頃であった。
検診を終えた宮出さんがカンファレンスルームから出てきた。
宮出さんの次男さんのお嫁さんは、カンファレンスルームの前にあるイスに座っていた。
次男さんのお嫁さんは、心配げな声で宮出さんに言うた。
「義父《おとう》さま、大丈夫ですか?」
宮出さんは、やさしい声で次男さんのお嫁さんに言うた。
「心配いらないよ…ちょっと疲れていただけや。」
宮出さんは、次男さんのお嫁さんに『心配はいらないよ…』と言うたけど、心のなかではなんらかの覚悟を整えていたようだ。
宮出さんと次男さんのお嫁さんが出発しようとした時であった。
正面玄関付近で騒ぎが発生した。
この時、ゆりことヨリイさんがここへやって来た。
ゆりこは、ヨリイさんに対して怒った声で言うた。
「イヤ!!帰る!!」
「ゆりこちゃん…」
「ゆりこはイヤといよんのに、なんでここ(がんセンター)に連れて来たのよ!?」
「ゆりこちゃん、落ちついてよ…」
「よくもゆりこにウソついたわね!!」
「だからごめんなさいって言ってるでしょ…『エミフルヘ行こう…』と言うたら外へ出ると思ったから…」
「キーッ!!もう怒ったわよ!!」
「ゆりこちゃん、落ちついてよ…」
「イヤと言うたらイヤ!!おっぱいを片方なくすのはイヤ!!」
「それじゃあ、どうしたいのよ~」
「ゆりこは、治療せずに残された時間を過ごしたいといよんよ!!」
「だったら、あと2~3年くらいは生きなさい!!」
「イヤと言うたらイヤ!!」
「ゆりこちゃん!!先生はよーくんにひとこともわびずに死ぬのはよくないから治療を受けてといよんよ!!」
「イヤと言うたらイヤ!!ゆりこ!!帰る!!」
思い切りブチ切れたゆりこは、ヨリイさんをはらいのけたあとどこかへ逃げて行った。
それから1分後であった。
宮出さんと次男さんのお嫁さんがヨリイさんのもとにやって来た。
宮出さんは、ヨリイさんに声をかけた。
「あの~」
「はい。」
「あなたは、オーナーさまがちいちゃい時に暮らしていた施設のスタッフさんですか?」
「はい…施設長のヨリイでございます…あっ、よーくんと一緒にお仕事をしていた宮出さまでございますね。」
「あっ、はい。」
「いつもよーくんを助けてくださってありがとうございます。」
「いえいえ…ところで、施設長さんと一緒に来ていた女の子は?」
「よーくんと同じ施設で暮らしていた同い年の女の子です。」
次男さんのお嫁さんは、心配げな声で『どこか身体《からだ》の具合が悪いのですか?』と言うた。
ヨリイさんは、ものすごくつらい声で『ええ…』と答えた。
このあと、3人は館内のエントランスロビーに移って話をした。
ところ変わって、館内のエントランスロビーにて…
3人は、ソファに座って話し合いをしていた。
ヨリイさんは、宮出さんと次男さんのお嫁さんに対して、ゆりこが乳がんにリカンしていたことを話した。
宮出さんの次男さんのお嫁さんは、おどろいた声で言うた。
「ゆりこさんが乳がんにリカンしていたって…」
「ええ…」
「それはいつ頃からですか?」
「よく分からないけれど…6ヶ月前に検査した時だったと思います。」
「その時に…センコクされたのですね。」
「はい。」
「どこにしこりがあったのですか?」
「えーと…たしか…右のおっぱいの下の部分に、ゴルフボールくらいのしこりがありました。」
「そうでしたか…施設長さん。」
「はい。」
「施設長さんは、ゆりこさんに対して『よーくんにひとこともわびずに死ぬのはよくない…』と言いましたね…それはどう言うことでしょうか?」
宮出さんの次男さんのお嫁さんの問いに対して、ヨリイさんはものすごくつらい表情で答えた。
「23年前に、よーくんにきつい暴力をふるったのです…」
「暴力。」
「その時は、ゆりこちゃんと同じ施設で暮らしていたちがう男の子の結婚式がありました。」
「結婚式…」
「ですから、ゆりこちゃんはよーくんに対して…男の子と結婚することをよろこんでほしかったのです…」
宮出さんは、つらそうな声で言うた。
「もうええ…話はよぉわかった…」
「宮出さん。」
「ゆりこさんは、心身ともにひどくつかれているんだよ…そのくらいにしておきなさい…」
「すみませんでした。」
「施設長さんは、オーナーさまがお嫁さんをもらったことをまだご存知じゃなかったのですか?」
「知ってます…ジナ先生から送られた写メで見ました。」
「それだったらもうええねん…施設長さん…ここはひとつ、ゆりこさんの気持ちをくみ取ってあげたらどないや?」
宮出さんは、やさしい声でヨリイさんに言うた。
ヨリイさんは、にえきらない表情を浮かべながらつぶやいた。
宮出さんのお気持ちはよく分かるけど…
やっぱり、よーくんにひとこともわびずに人生を終えるのはよくないわ…
イコジになっているゆりこちゃんをなっとくさせる方法があったら教えてほしい…
うちは…
ものすごく困っているのよ…
ところ変わって、松山市梅本町《まつやましうめのもとちょう》にある国立四国がんセンターにて…
ここ(がんセンター)には、宮出さんのシングルの長男さんが脳腫瘍《のうしゅよう》の治療を受けるために入院していた。
宮出さんは、次男さんのお嫁さんと一緒に長男さんのお見舞いに来ていた。
…と同時に、宮出さんはがん検診を受けていた。
宮出さんは、1月末頃から体調不良を訴えるようになった。
2月1日頃に、宮出さんは『足がだるい』『頭がものすごく重い』『吐き気がする』…と家族に訴えていた。
私・イワマツが生まれるずっと以前からこんにちに至るまで1日も休まずに働き通した…
宮出さんの奥さまは、40年ほど前に病気で亡くなられた。
宮出さんは、奥さまひとすじで通した人なので新しい恋をしてサイコンしたいと言う気持ちは全くなかった。
宮出さんは、だいぶ無理がまんを通していたから身体《からだ》のあちらこちらがボロボロになっていた…
それを思うと、ホンマに心苦しい…
午前11時45分頃であった。
検診を終えた宮出さんがカンファレンスルームから出てきた。
宮出さんの次男さんのお嫁さんは、カンファレンスルームの前にあるイスに座っていた。
次男さんのお嫁さんは、心配げな声で宮出さんに言うた。
「義父《おとう》さま、大丈夫ですか?」
宮出さんは、やさしい声で次男さんのお嫁さんに言うた。
「心配いらないよ…ちょっと疲れていただけや。」
宮出さんは、次男さんのお嫁さんに『心配はいらないよ…』と言うたけど、心のなかではなんらかの覚悟を整えていたようだ。
宮出さんと次男さんのお嫁さんが出発しようとした時であった。
正面玄関付近で騒ぎが発生した。
この時、ゆりことヨリイさんがここへやって来た。
ゆりこは、ヨリイさんに対して怒った声で言うた。
「イヤ!!帰る!!」
「ゆりこちゃん…」
「ゆりこはイヤといよんのに、なんでここ(がんセンター)に連れて来たのよ!?」
「ゆりこちゃん、落ちついてよ…」
「よくもゆりこにウソついたわね!!」
「だからごめんなさいって言ってるでしょ…『エミフルヘ行こう…』と言うたら外へ出ると思ったから…」
「キーッ!!もう怒ったわよ!!」
「ゆりこちゃん、落ちついてよ…」
「イヤと言うたらイヤ!!おっぱいを片方なくすのはイヤ!!」
「それじゃあ、どうしたいのよ~」
「ゆりこは、治療せずに残された時間を過ごしたいといよんよ!!」
「だったら、あと2~3年くらいは生きなさい!!」
「イヤと言うたらイヤ!!」
「ゆりこちゃん!!先生はよーくんにひとこともわびずに死ぬのはよくないから治療を受けてといよんよ!!」
「イヤと言うたらイヤ!!ゆりこ!!帰る!!」
思い切りブチ切れたゆりこは、ヨリイさんをはらいのけたあとどこかへ逃げて行った。
それから1分後であった。
宮出さんと次男さんのお嫁さんがヨリイさんのもとにやって来た。
宮出さんは、ヨリイさんに声をかけた。
「あの~」
「はい。」
「あなたは、オーナーさまがちいちゃい時に暮らしていた施設のスタッフさんですか?」
「はい…施設長のヨリイでございます…あっ、よーくんと一緒にお仕事をしていた宮出さまでございますね。」
「あっ、はい。」
「いつもよーくんを助けてくださってありがとうございます。」
「いえいえ…ところで、施設長さんと一緒に来ていた女の子は?」
「よーくんと同じ施設で暮らしていた同い年の女の子です。」
次男さんのお嫁さんは、心配げな声で『どこか身体《からだ》の具合が悪いのですか?』と言うた。
ヨリイさんは、ものすごくつらい声で『ええ…』と答えた。
このあと、3人は館内のエントランスロビーに移って話をした。
ところ変わって、館内のエントランスロビーにて…
3人は、ソファに座って話し合いをしていた。
ヨリイさんは、宮出さんと次男さんのお嫁さんに対して、ゆりこが乳がんにリカンしていたことを話した。
宮出さんの次男さんのお嫁さんは、おどろいた声で言うた。
「ゆりこさんが乳がんにリカンしていたって…」
「ええ…」
「それはいつ頃からですか?」
「よく分からないけれど…6ヶ月前に検査した時だったと思います。」
「その時に…センコクされたのですね。」
「はい。」
「どこにしこりがあったのですか?」
「えーと…たしか…右のおっぱいの下の部分に、ゴルフボールくらいのしこりがありました。」
「そうでしたか…施設長さん。」
「はい。」
「施設長さんは、ゆりこさんに対して『よーくんにひとこともわびずに死ぬのはよくない…』と言いましたね…それはどう言うことでしょうか?」
宮出さんの次男さんのお嫁さんの問いに対して、ヨリイさんはものすごくつらい表情で答えた。
「23年前に、よーくんにきつい暴力をふるったのです…」
「暴力。」
「その時は、ゆりこちゃんと同じ施設で暮らしていたちがう男の子の結婚式がありました。」
「結婚式…」
「ですから、ゆりこちゃんはよーくんに対して…男の子と結婚することをよろこんでほしかったのです…」
宮出さんは、つらそうな声で言うた。
「もうええ…話はよぉわかった…」
「宮出さん。」
「ゆりこさんは、心身ともにひどくつかれているんだよ…そのくらいにしておきなさい…」
「すみませんでした。」
「施設長さんは、オーナーさまがお嫁さんをもらったことをまだご存知じゃなかったのですか?」
「知ってます…ジナ先生から送られた写メで見ました。」
「それだったらもうええねん…施設長さん…ここはひとつ、ゆりこさんの気持ちをくみ取ってあげたらどないや?」
宮出さんは、やさしい声でヨリイさんに言うた。
ヨリイさんは、にえきらない表情を浮かべながらつぶやいた。
宮出さんのお気持ちはよく分かるけど…
やっぱり、よーくんにひとこともわびずに人生を終えるのはよくないわ…
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