乳房星(たらちねぼし)〜再出発版

佐伯達男

文字の大きさ
上 下
86 / 200
第9話・ルビーの指環

【ルビーの指環】

しおりを挟む
ところ変わって、展望レストランにて…

時は夜9時過ぎであった。

レストランは、パブタイムに入っていた。

テーブルの上には、カナダドライ(ジンジャーエール)とナビスコサンドが盛られている大きな皿が並んでいた。

ドナ姐《ねえ》はんとヨリイさんは、話し合いをしていた。

「施設長。」
「ドナさん。」
「話の内容によっては、よーくんが再起不能におちいる…と言うたわね。」
「うん。」
「それはどう言うこと?」

ヨリイさんは、ものすごくつらい声でドナ姐《ねえ》はんに言うた。

「ゆりこちゃんは…ちいちゃい時に…レイプの被害を受けたのよ…たしか…今から39年前の夏頃だったわ。」
「たしか…1978年…よーくんと同い年の子どもたちが小学校に入学した年ね。」
「そうよ。」
「その時、ゆりこちゃんはどこにいたの?」
「ゆりこちゃんの実の母親(友代ではない)の再婚相手だった男の家よ…その家は北条辻(松山市)にあったわ。」
「ホンマのママの再婚相手だった男の職業は?」
「サンコウのエリート銀行員よ…ゆりこちゃんは、実のママに連れて来られたわ。」
「その時、同居していた家族はいたの?」
「いたわよ…男のせがれ夫婦がいたわよ。」
「せがれは、いくつよ?」
「大学生だったわ…せがれの嫁も大学生だったわ。」
「大学生同士で結婚したのね。」
「そうよ。」
「ゆりこちゃんを犯した相手は、身近なところにいたのね。」
「いたわよ…だけど、直接レイプの被害を受けたのはせがれの嫁の方よ…事件は…6月の終わりの梅雨末期の大雨が降っていた夕方頃に発生したわ…」

ヨリイさんは、事件現場の様子を淡々と語った。

「せがれの嫁は、同じ大学のサークル仲間の男5~6人に集団で犯されて殺されたわ…せがれの嫁が家の居間で着替えをしようとしていた時に…」
「男たちが集団で押しかけたのね。」
「うん。」
「ゆりこちゃんは、なんで被害を受けたの?」
「ゆりこちゃんは、レイプ事件の現場を目の当たりにしたのよ…グチョグチョに汚れた姿で殺されたせがれの嫁の姿を見たのよ。」
「ゆりこちゃんは、間接的な被害を受けたのね。」
「そうよ。」

ヨリイさんは、カナダドライをひとくちのんでからドナ姐《ねえ》はんに言うた。

「事件の翌日、松山市内のラブボで立てこもり事件が発生したのよ…立てこもった男は、嫁を殺されたセガレだった…セガレは、ホテルの中にいたカップルのうち、男性を殺した…殺された男性は…嫁を集団でレイプして殺した大学生の父親だった…一緒にいた女は…大学生の父親の職場のOLだった…」
「加害者の父親は、OLとフリン中に事件に巻き込まれたのね。」
「そうよ…セガレは、突入したSAT隊員によって射殺されたわ。」
「そんな…」
「その後…(松山)東警察署の霊安室に…問題の大学生の男が父親に会いに来たのよ…その時…大学生の男は…オイオイオイオイ泣きながら…『おとーさんごめんなさい…』って…そして…自首したのよ。」
「他の大学生の男は?」
「逃走した…そのうち4人は交通事故で亡くなった…あとの2人は、やくざともめた末にコンクリ詰めにされたわ。」
「事件が発生した時、セガレの父親は単身赴任中だったよね。」
「そうよ…悪いのは、ゆりこちゃんを連れ出した実のママよ!!…ダンナの単身赴任中に超身勝手なことをしていたわよ…そのせいで、ゆりこちゃんがどれだけ傷ついたか…そう思うと…」
「聞いただけでもはぐいたらしくなるわね(怒りに震える)」
「それで、うちはゆりこちゃんを施設に連れ戻したわ…けど、ゆりこちゃんの実の母親の再婚相手だった男がまたゆりこちゃんを連れ戻しに来たのよ…『新しいママともう一回やり直す…』と言うて居直った声で言うて連れ出した…だから…連れ戻しても連れ戻してもまた同じことの繰り返しだったからキリがなかったわよ…」

「それから、ゆりこちゃんは間接的なレイプの被害を受け続けた…と言うことよね。」
「そうよ。」

ヨリイさんは、大きくため息をついた。

ドナ姐《ねえ》はんは、ヨリイさんに言うた。

「施設長、さっき話の内容によってはよーくんが再起不能におちいる…と言うたよね。」
「うん。」
「その封筒は…」
「その…まさかよ…」

ヨリイさんは、愛媛県の児童相談所の字が入っている大きなふうとうをドナ姐《ねえ》はんに見せながら言うた。

ヨリイさんは、ドナ姐《ねえ》はんに対して『ふうとうに入っている調書に、ゆりこちゃんのいやたい(汚れた)姿が写っている写真がテンプされているのよ…』とつらい表情で言うた。

もしかしたら…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

詩(夜/お前の声が~)

タニグチ・イジー
現代文学
以前に書いた作品です。最後の日付が作成年月日になります。最初の「○」は無題を意味しています。note(https://note.com/izzyapoet/)にも作品をアップしています。 仕方なく「男性向け」を選びましたが、男性でも女性でもそうでない方でもどんな人でもお読み頂ける作品です。

注意欠陥多動性障害(ADHD)の日常

春秋花壇
現代文学
注意欠陥多動性障害(ADHD)の日常

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...