乳房星(たらちねぼし)〜再出発版

佐伯達男

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第7話・恋一夜

【恋し浜】

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2011年…

今年こそはおだやかな1年であってほしいと願っていたが、その想いは無残に砕かれた。

2月22日頃、ニュージーランド・カンタベリーで大地震が発生した。

マグニチュード7・5~7・9で、最大震度96ガル(震度6強)に相当する烈震《れっしん》がクライストチャーチの中心部を襲った。

クライストチャーチ近辺にある住まい・オフィスビル・店舗・工場・リゾートは無事であった。

A班のメンバーたちは、現地のスタッフさんたちと連絡を取りながら情報収集に当たった。

それから2日後の2月24日朝10時過ぎであった。

A班のメンバーたちが乗っている専用機がクライストチャーチの空港に到着した。

専用機から降りたあと、すぐにクライストチャーチの中心部ヘ向かった。

この時、取引先の会社4軒に大被害が出たと言う知らせを聞いた。

そのうちの1軒がダイヤモンド鉱山のリース料を3年間滞納していた…

そのまた上にケイヤクヤッカン(契約上の決まり事)を守らずに勝手なことばかりをしていたことも聞いたので、A班のメンバーたちはソートー怒り狂った。

許さない…

ゼッタイにこらえへん…

A班のメンバーたちは、例の取引先会社(ダイヤモンド研磨工場)へ取り立てに行った。

こななひどいことしたくなかった…

せやけど、経営者が決まり事を破った以上は許しておくわけにはいかん!!

未納分と未納分の5倍の違約金を耳そろえて払え!!

ところ変わって、問題の会社にて…

経営者は、泣きそうな声でドゲザしながら私たちに許し乞いをした。

しかし、A班のメンバーたちはソートー怒り狂っていたので許すわけにはいかん!!

大番頭《おおばんと》はんは、ものすごい血相でおらび回った。

「アカン!!あきまへんねん!!ケイヤクヤッカンを破ったあんさんが100パーセント悪いのでおます!!」
「こらえてください…この通りです…」
「ほんなら、滞納してはる3年分のリース料と5倍の違約金をはろてください!!」
「わかってます…せやけど…たったひとりの伜《あととり》がぺちゃんこになって死んだ…」

経営者は、女々しい声で泣きながら許し乞いをした。

大番頭《おおばんと》はんは、よりしれつな怒りを込めて言うた。

「何言うてまんねんあんたは…あんたがゴクツブシのセガレを甘やかしまくったからそなな目におうたんやろ…うちらはあんたのゴクツブシのセガレのせいで経済的な損失を受けたのですよ!!」
「君波さまのお怒りはよくわかります…ですが…うちは他にも買掛金などがたくさんあるので…」

それを聞いた大番頭《おおばんと》はんは、よりし烈な声でおらび回った。

「メソメソ泣いても、アカンもんはあきまへん!!」
「ほな、どないしたらええねん…」

大番頭《おおばんと》はんの横にいる事務長《じむちょう》はんは、どきつい声で言うた。

「ほんなら、セガレの生保金で払え!!」
「生保金で払えって…できん…」

大番頭《おおばんと》はんは、よりし烈な声で怒鳴り散らした。

「アカンもんはあきまへん!!あと12時間以内に3年分のリース料と5倍の違約金をはろてツカーサイ!!」

経営者は開き直った声で『分かったよ…用意すりゃいいんだろ!!』と言うて、奥へ逃げて行った。

それ聞いたミンジュンさんは、怒り声で言うた。

「態度悪いジジイねぇ!!契約違反したジジイが100パーセント悪いのになんやねん一体!!」

なんとも言えん…

けど、経営者が契約違反以上は法廷措置をとる以外他にはない…

A班のメンバーたちは、オフィスビルに戻ったあと法的措置に踏み切るための検討作業に入った。

この時、私は心身ともにボロボロに傷ついていた。

ときおり、激しい目まいが起こる…

睡眠時間が極力少ない…

女の子と恋がしたいのに、恋ができない…

声あげて泣きたいのに、泣けない…

もうアカン…

もうアカンかもしれない…

3月1日頃に、問題の経営者が車ごと海にドボーンで亡くなった。

問題の会社は他にも大口のローンを作っていて、負債総額が10兆ドルを大きく超えていたようだ…

この時、イワマツグループだけではなく他の複数の債権者たちからも怒りが噴出した。

債権が回収できんなったら、なにもかも終わりだ…

3月1日から9日にかけて、問題の会社の債務を調べてみた。

その中で、問題の会社と取り引きをしていたラテンアメリカ地域にある複数の会社が3年前にトーサンしていたことが分かった。

それを知った私たちは、法的措置を取るためにカリフォルニアへ向かうことにした。

3月10日の朝8時頃、A班のメンバーたちは専用機に乗って再び旅に出た。

専用機は、シドニー国際空港を出発したあとオーストラリア東岸を通って太平洋に出たあとハワイ経由でカリフォルニアへ向かった。

A班のメンバーたちが乗っている専用機は、アメリカ太平洋時間3月10日の朝9時頃にロスアンゼルス国際空港に到着した。

A班のメンバーたちは、専用機から降りたあと大急ぎで連邦裁判所ヘ向かった。

その時にまた非常事態が発生した。

時は、アメリカ太平洋時間深夜11時頃であった。

A班のメンバーたちは、ビバリーヒルズにあるケントさんの家でお仕事をしていた。

そこへ、私のエクスペリア(スマホ)にエリアメールのチャイム音が鳴った。

何事かと思ってスマホをひらいた時であった。

日本時間3月11日の午後2時45分頃に日本で巨大地震が発生した…

震源地は、東北地方太平洋沖…

最大震度112ガル!!

それを聞いた私の心に、より激しい動揺が走った。

私は、大急ぎでバイオ(ノートパソコン)を開いてブックマークから気象庁のホムペに入った。

そして、大津波警報・津波警報・津波注意報の欄にクリックして開いた。

北海道から千葉県外房沿岸に大津波警報…

東京湾から西日本の太平洋沿岸と沖縄にも津波警報が発令された。

日本時間の午後3時過ぎに、北海道から西日本・沖縄の太平洋一帯に大津波警報が発令された。

その上に、アメリカ西海岸にも津波が到達する恐れがある…

たいへんだ!!

一刻も早くタイショしなければ…

このあと、A班のメンバーたちは情報収集と事後処理などに取り組んだ。

その頃であった。

ところ変わって、福島県浜通り地方にある孤児院にて…

孤児院には、悠馬《ゆうま》と美桜《みお》が暮らしていた。

先ほどの巨大地震により、建物が半壊した。

建物内に閉じ込められた悠馬《ゆうま》と美桜《みお》は、必死になって助けを求めた。

「助けて~」
「助けて~」

しかし…

午後3時20分…

(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…ドーン!!)

この時、沖合からどす黒い巨大津波《おおつなみ》が倒壊した孤児院を飲み込んだ。

悠馬《ゆうま》と美桜《みお》は、黒い巨大津波《おおつなみ》に流されて行方不明になった。

そして、それから24時間後…

(ドカーン!!)

孤児院があった地区が真っ赤な閃光《ひかり》に包まれたと同時にどす黒い煙と炎に包まれた。

その付近にあった原発でメルトダウンが発生した。

それが原因で、地区に立ち入ることができなくなった…

悠馬《ゆうま》と美桜《みお》以外の子どもたちは域外ヘ避難して無事であったが、他に受け入れる施設《さき》が見つからないなど重大な問題が生じた。

東日本大震災の津波に関する警報注意報は、3月16日頃に解除された…

しかし、イワマツグループのA班のメンバーたちのつらい日々はまだ終わっていなかった。
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