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第5話・おわりのはじまり

【壊れて行く家庭】

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志桜里《しおり》は、9月6日の夕方4時頃にボストンバッグひとつを持って豪邸《いえ》から出ていった。

豪邸《いえ》を出た志桜里《しおり》は、駅のすぐ近くにあるキスケの湯(スーパー銭湯)の宿泊施設へ移った。

9月10日の朝まで滞在する予定である。

次の日の朝であった。

志桜里《しおり》は、朝起きた時にひどいオウトとめまいを起こした。

それに伴って、食欲不振・立ちくらみ…の症状が生じた。

志桜里《しおり》は、駅の東口付近にある病院へ行って検査を受けることにした。

午後2時過ぎであった。

志桜里《しおり》は、医師から『要精密検査《ようせいみつけんさ》』と言われた。

レントゲン検査で、胃袋に大きな黒点が見つかった…

加えて、脳にも大きな影が見つかった…

詳しい症状がよく分からないので、松山の(国立)四国がんセンターへ行ってください…と医師から言われた。

志桜里《しおり》は、医師から言われた通りにがんセンターへ行くことにした。

9月10日の朝9時頃であった。

志桜里《しおり》は、ボストンバッグを持ってキスケの湯から出発したあと歩いて今治駅の東口にあるバス乗り場へ向かった。

その後、特急バスに乗っていよてつ松山市駅まで行った。

いよてつ松山市駅に到着した後、新居浜駅行きの特急バスに乗り換えて四国がんセンターへ向かった。

それから25分後に、松山市梅本町《まつやましうめのもとまち》にある四国がんセンターにバスが到着した。

志桜里《しおり》は、ものすごくつらい表情でバスを降りた。

志桜里《しおり》は、9月10日から1ヶ月程度の予定でがんセンターに検査入院することになった。

9月11日より、志桜里《しおり》の精密検査が始まる予定であった。

しかし、事前に行った別の検査で新たにガンにリカンしている部分が見つかったと医師から言われた。

このため、胃と脳の精密検査は後回しとなった。

時は、9月20日頃であった。

日本のうんと南の海上で台風24号が発生した。

別名、チャーミータイフーン…

チャーミーは、ベトナム産のバラ科の花…である。

名前はかわいいが、のちにカテゴリー5に相当する凶暴な台風になる…

9月25日の朝9時頃であった。

台風24号の120時間先の進路予測が気象庁から発表された。

朝9時現在、台風24号はまだ日本の南の海上にあった。

この時、中心付近の気圧配置が900ヘクトパスカルを下回り、中心付近の最大風速が60メートルになった。

進路予測には幅があるが、28日頃に沖縄奄美の沖に到達したあと29日に進路を北東よりに変えて西日本へ向かう…

そして、30日の昼前から昼過ぎにかけて九州南部~四国の太平洋沖を通る…

30日の夕方頃に紀伊半島から東海・甲信地方・首都圏地域へ向けて進行する…

潮岬《しおのみさき》以東で記録的な暴風が観測される…の大規模な被害が生じる恐れが出た。

予想進路では、30日の夕方頃に猛烈な勢力で紀伊半島から東日本に接近する…

主に和歌山県南部から東海・関東甲信地方を対象に暴風…沿岸地域に波浪・高潮の特別警報を発令する可能性がある…と気象庁が発表した。

四国地方は、台風本体の雨雲による影響で大雨・大荒れになるが、台風の進路によっては猛烈な雨が長時間に渡ってつづくおそれがある…と気象庁が発表した。

西日本豪雨クラスかそれよりも大規模な豪雨被害が生じる恐れが出た…

どうしよう…

どうすればいいのだ…

人々の不安が一気に高まった。

話は、その翌日のことであった。

がんセンターに入院中の志桜里《しおり》は、外泊の許可をもらったあと再び今治にやって来た。

時は、朝10時くらいであった。

またところ変わって、宮下町《みやしたちょう》の豪邸《いえ》の大広間にて…

大広間には、トメとかおると所長さんと志桜里《しおり》の4人がいた。

志桜里《しおり》は、所長さんに急に豪邸出《いえで》したあと音信不通になったことをわびたあと、自分の身体に異変が生じたことを伝えた。

この中で、志桜里《しおり》はステージ4相当のスキルス性胃がんにリカンしたことを所長さんに話した。

所長さんは、つらい表情で志桜里《しおり》に言うた。

「ステージ4相当の…スキルス性胃がん…」
「(チンツウな声で)はい…」
「脳しゅようの方は?」
「脳のほうは…さらにくわしい検査を受けてくださいと言われた…けど…それもステージ4相当だと思います。」
「困ったわね…」
「きのう…新たに…大腸がんにリカンしていたことも告げられました。」
「困ったわね…」
「もうしわけございませんでした。」
「志桜里《しおり》さんのお話はよく分かりました…この10年の間、志桜里《しおり》さんは不平不満をひとことも言わずにうちの紹介所のためにがんばって来たので…身体のあちらこちらがボロボロになってしまったのよ…おまけに…20日前の大地震で…志桜里《しおり》さんの実家のご家族のみなさまが亡くなられた…帰る故郷《ふるさと》をなくした…なんて言えばいいのか分からない…」

志桜里《しおり》は、ものすごくつらい声で所長さんに言うた。

「すみませんけど、もういいでしょうか?」

志桜里《しおり》は、所長さんとトメとかおるに別れのあいさつをしたあとボストンバッグを持って豪邸《いえ》から出た。

(ツクツクホーシ、ツクツクホーシ、ツクツクホーシ…)

正午過ぎであった。

この時、気温が一気に40度を超したようだ。

ツクツクホーシの鳴き声が再び響くなど…異常気象におちいった。

台風24号から発した暖かく湿った空気の流入程度がものすごく多かったので、このような異常気象をもたらしたと思う。

志桜里《しおり》は、川沿いにある大型病院付近の近くにある橋を渡って大通りに出た。

大通りの交差点の信号が青になったので、志桜里《しおり》は横断歩道を渡って、今治駅と図書館へ向かう歩道を歩いた。

それから40分後であった。

ところ変わって、図書館の裏側にある公園にて…

志桜里《しおり》は、公園のベンチに座って足を休めていた。

その時であった。

志桜里《しおり》は、とてつもない物を目撃した。

「おーとーこ…」

この時、ボロボロに汚れた姿のあつこが公園の身障者用トイレから出てきた。

それを見た志桜里《しおり》は、思わず叫び声をあげそうになった。

【つづく】
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